ラベル My favorite flies の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル My favorite flies の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020年7月11日土曜日

Foam Bass Popper


 バス用にフォーム・バス・ポッパーを巻き(作り?)ました。


 使用したフォームは、ワプシ社のパーフェクト・ポッパーです。これはボディの腹側に切り込みが入っており、そこにフックを差し込むことによりフックを固定するようになっています。


 マスタッドCK74のようなキンクシャンクのフックだと、そのまま差し込んで固定すれば良いのですが、ストレートシャンクのフックの場合は、フックがボディの中で回転しないように、モノフィラメントを使って上の写真のようにあらかじめ回転止めを作っておいてからボディにセットします。これは、バスのフライフィッシングの世界で有名な、チャートリュースポッパーの大田さんが紹介されているタイイング・テクニックです。


 フックをセットしたらエポキシ接着剤でボディを接着し、マスキングテープで固定してエポキシが硬化するのを待ちます。


 エポキシが硬化したら、マーカーを使ってアイなどをペイントします。
 ここまでは工作のような作業ですが、ここからようやくフライ・タイイングらしい工程になります。


モノフィラのウィードガード、コックハックルのテールとハックル、ラバーレッグを取り付ければ完成です。

 テールとハックルは、バーブが長いホワイティングのアメリカン・ハックルやインド・ケープ、チャイニーズ・ケープを使うと良いのでしょうが、鱒用のドライ・フライに使用している昔のホフマンやメッツのコックハックルケープから適切なものを選んで使っています。逆に鱒用のドライ・フライでは使用しない部分が使えるので、廃物利用になって良いと思います。

2019年6月15日土曜日

Vermont Caddis


 今回は、カディス・パターンの中でも殆どの方がご存知ないと思われるバーモント・カディスを紹介します。

 このフライは、ご覧のとおりハーズ・イアーのボディにブラウンとグリズリーのハックルを巻いただけの、極めてシンプルなフライです。カディス・パターンはたいていの場合、トビケラの特徴であるテント状のウィングを模したダウン・ウィングが取り付けられていますが、このフライにはそれがありません。しかし、このフライは縦に長めに密にハックリングされたハックルと、ハーズ・イアーのシャギーなボディが、一目見た時にいかにもカディスらしい印象を与えています。
 私は、このフライをネット上でたまたま見つけたのですが、写真を見た瞬間に軽い衝撃を受けるとともに、このフライは釣れると確信しました。


 ダウン・ウィングが取り付けられたカディス・パターンは、我々が良く目にするトビケラが岩や木の葉にとまって羽を閉じた状態を表現していますが、このフライは飛行中や水面上でフラッタリングしている羽を広げた状態を表していると思います。実際に飛行中のトビケラは、このフライとそっくりなシルエットをしています。

 ネットで検索しても、このフライに関する情報は少ないのですが、フラッタリングさせて使う釣り方が紹介されていました。まだ試していませんが、下半分のハックルをカットして、スペント・パターンとして使用しても効果的ではないかと思います。

 タイイングのポイントは、ハックルを巻く範囲をシャンクの半分以上に長くとり、長めのファイバーを密にびっしり巻くことです。私はハックルを3枚巻いています。

 地味な色調ですが、水面に高く浮くのと、ブラウンとグリズリーのハックルの組み合わせは、意外と良く見えます。ハーズ・イアーのボディは、ドライフライ用のダビング材に比べて水を吸いやすいので、浮力の持続性は若干劣りますが、実際に使ってみるとそれほど気になりません。
 顆粒状のフロータントを使用し、しばらく使ってすこしフライがくたびれてきた方が、よりカディスっぽく見えます。

 カディスが沢山飛んでいる時はもちろんですが、耐久性のあるフライなので、鱒の活性が高く、良く釣れていてフライを交換するのが面倒な時に使用するのにも適しています。


2019年6月9日日曜日

Marshmallow Ant


 前回のパラシュート・アントに引き続き、アント・パターンの第2段として、島崎憲司郎さんのマシュマロ・アントを紹介します。

 パラシュート・アントは良く釣れる丈夫で使いやすいパターンですが、浮力が弱く、その持続性に欠けるのが弱点です。夏場の渇水した渓流では、さほど問題にはなりませんが、もう少し浮力が欲しい場合は、このパターンを使用することが多いです。

 シマザキ・フライは機能的かつ捕食対象である水生昆虫や陸生昆虫の特徴を上手くデフォルメした優れたデザインが特徴ですが、タイイングの容易さや量産性も考慮されています。このフライを始めとする一連のマシュマロ・パターンも、最初にフライのボディになるマシュマロ部分をまとめて作っておくと、フライを短時間で大量に巻くことができます。
 マシュマロ・アントのタイイングは、YouTubeのティムコのチャンネルで、実際にご本人がタイイングされているものが視聴可能です。

 マシュマロ・パターンは、大きなフライでも鱒に吸い込まれやすく、フッキングしやすいと言われていますが、アント・パターンのような小さいサイズでは、前回のパラシュート・アントと大差はないと思います。


2019年6月1日土曜日

Parachute Ant


 今回は、初夏以降に効果的なパラシュート・アントを紹介します。

 テレストリアル・フライとしてポピュラーなパターンなので、わざわざ紹介するまでもないのですが、カゲロウ、トビケラのハッチがひと段落した6月以降の夏場に非常に効果的なフライです。特に真夏に水温が高すぎてヤマメ、イワナの活性が落ちている時にこのフライを流すと、反応が明らかに違うように思います。

 ボディは重ねて巻いたスレッドをラッカー等でコーティングしたものや、ピーコックハールを巻いたもの、ビーズを使ったものなどありますが、私はタイイングの容易さと耐久性から、単純に黒のポリプロピレンのダビング材(フライライト)を使用しています。
 パラシュートポストは、オレンジやピンクを使った方が良く見えますが、あまり派手な色は使いたくないので、マシュマロファイバーのシナモンを使用しています。FLホワイトよりもシナモンの方が視認性は良いと思います。

 同じ時期の同じ渓流でも、その時の川の状態、鱒の活性によって、反応の良いフライは変化しますが、私の場合夏場ですと、未だ日が高いうちはアントパターン、日が沈んで光量が落ちてくると、エルクヘアカディスなどの高く浮いてより視認性の良いフライを使用することが多いです。

 蟻は栄養価が高いと聞いたことがありますが、ヤマメ、イワナが蟻を好んで捕食しているのか、夏場の明るいうちは水生昆虫の流下がないためか、夏場のアントパターンは、非常に効果的で、他のフライに神経質な出方をするヤマメ、イワナも、アントパターンにはゆっくりとした出方でガッツリフライを咥えていることが多いように感じます(実際は吸い込んでいるのですが・・・)。


2019年5月25日土曜日

ユスリカのハッチマッチャー


 シマザキ・パターン繋がりということで、季節はずれではありますが、今回はユスリカのハッチマッチャーを紹介します。

 このフライを私が初めて目にしたのは、「水生昆虫アルバム」の初版でしたが、初出は「フライの雑誌10号(1989年)」だと思います。かれこれ30年前に生まれた相当古いパターンですが、名前の通りユスリカのハッチに極めて効果的かつ機能的にも非常に優れたフライです。

 このフライの画期的な点は、鱒に見せたいミッジ・ピューパ部とCDCのインジケータ部を分離し、しかもそれを1本のフックの中で、今まさにユスリカがピューパの殻から抜け出す瞬間、あるいは抜け出せずに脱皮殻を引きずっている状態として表現しているところです。このような構造とすることにより、鱒に見せたいピューパの部分は水面下に理想的な角度でぶら下がり、人間が見たいインジケータの部分は水面上に出るわけです。

 この手のミッジ・ピューパのパターンとしてよくあるのは、通常のミッジ・ピューパのパターンのヘッドにCDCを取り付けたものですが、実際に使ってみると浮力が持続しなかったり、視認性が悪かったり、フライの姿勢が安定しなかったりします。
 このフライは、これらの欠点を見事に解決しており、流れがある程度速いポイントでも充分に使用可能です。

 また、私が感じるこのフライの最大の利点は、鱒に見せたいピューパの部分は、フックベンド部のみに巻かれていますので、1サイズ大きなフックを使用することができ、それは即ち1サイズ太いティペットを使用できるということです。これは、極小のユスリカを捕食している大型の鱒をミッジ・フライで狙う際に、釣り人にとって大きなアドバンテージになります。


 昔の湯原温泉の自然鱒釣り場では、12月以降ユスリカが大量にハッチし、それに伴いライズも沢山見られたので、このフライを使って良い釣りができました。
 また、2002年の11月に釣行したアメリカのサンワン・リバーの最終日、Upper Flatsの少し上流のプールで、ライズしているニジマスを片っ端からフッキングさせるという会心の釣りができた思い出のフライでもあります。

2019年5月18日土曜日

ピカイチ シンプル ニンフ


 前回のフェザント・テール・ニンフに引き続き、今回もニンフ・フライを紹介します。今回は、島崎憲司郎さんのピカイチ・シンプル・ニンフ(以下PSN)です。

 島崎さんのニンフ・パターンとしては、このフライとアグリー・ニンフの2つが有名ですが、私の経験ではPSNの方が良く釣れるフライだと思います。
 このフライは、フェザント・テール、ハーズ・イアー、ピーコック・ハールという理屈抜きで良く釣れる3種類のマテリアルから構成されており、特定の水生昆虫のニンフに似ているわけではありませんが、一目見た時の虫っぽさと生き物感が良く釣れる理由の1つだと思います。

 ニンフ・パターンでは、より本物の水生昆虫に似せるために、テールを付けたりレッグを付けたり、ウィングケースを付けたりしたくなりますが、このフライのミソはマテリアルの質感とシンプルなシルエットで、不特定の水生昆虫の幼虫や蛹を表現している汎用性にあると思います。
 PSNはマダラカゲロウのニンフにも見えますし、カディス・ピューパやラーバにも見えるので、いろいろなサイズを揃えておけば、季節や場所を問わず使用できます。


 ノンウェイトで表層を流す使い方もできますが、私はレッド・ワイヤーをたっぷり巻き込んだものを使用しています。前回のフェザント・テール・ニンフは、主にサイト・フィッシングに使用しますが、PSNはある程度水深のあるポイントで、リーダーにヤーン・マーカーを付けてアップ・ストリームかアップ・クロスでブラインド・フィッシングで使っています。冬場ですと、PSNをシンカーの代わりに使用し、PSNのフックベンドにティペットを結んでミッジ・ラーバをトレーラーに結ぶ場合もあります。

 タイイングは、ソラックスを巻くときにマルチ・グルーを使うのがポイントで、マルチ・グルーを塗ったスレッドに、ステムからむしり取ったピーコック・ハールを少量タッチダビングし、その後にハーズ・イアーをタッチダビングし巻いていきます。この方法を用いると、ハーズ・イヤーを後からピック・アウトしなくても、ガードヘアやファーが飛び出し、自然な感じに仕上がります。

2019年5月11日土曜日

Pheasant tail nymph


 今回はニンフ・フライの中から、ハーズ・イアー・ニンフと並んで世界で最も有名なフライである、フェザント・テール・ニンフ(以下略してPTN)を紹介します。

 PTNはフランク・ソーヤー(Frank Sawyer)が発明した所謂ソーヤー・ニンフの中でも最も有名なフライです。ソーヤー・ニンフの特徴は、使用するマテリアルが少なく簡単に巻けること、シンプルですが水生昆虫の特徴を良くとらえたシルエット、そして優れた機能性の3つだと思います。

 フランク・ソーヤーのオリジナルのPTNでは、フライの名前の由来になっているフェザント・テール(雉の尾羽)とスレッドの代わりを兼ねたコパ―ワイヤの2つのマテリアルしか使用しません。フェザント・テールはサイズの問題から、大きなサイズは巻けませんが、そのファジーな色調に加えて、フライを巻いた時にフリューが立ち上がって水生昆虫の何ともリアルな質感を表現してくれます。またソラックスにぐるぐる巻きにされたコパ―ワイヤ―は、ウェイトの代わりになるとともに、フライにきらめきを与えるアクセントにもなっています。

 PTNがフェザント・テールとコパーワイヤーを使ってスリムに作られているのは、水生昆虫の形状を模擬するためだけでなく、機能的な理由があります。
 オリジナルのPTNはウェイトを巻き込まないので、フライの質量は小さいのですが、比重(体積当たりの重量)の大きなフライです。併せてスリムなシルエットなので、水の抵抗が小さく、着水後スムーズに沈下してくれます。そのため、見えている鱒を狙う時に、鱒の目の前にフライを上流から流し込みやすいという利点があります。

 私は渓流でヤマメ、アマゴ、イワナを釣る時は、ドライフライしか使わないので、ニンフは管理釣り場でしか使用しないのですが、PTNはニジマスが自然繁殖していることで有名な湯原温泉のニジマス釣り場で、見えている鱒をサイト・ニンフ・フィッシングで狙うのに良く使っていました。
 オリジナルのPTNのタイイングや、ソーヤ―・ニンフの使った釣りについては、平河出版社から出版されている「フランク・ソーヤーの生涯」という単行本に詳しく載っています。フランク・ソーヤ―関連の本は何冊か読みましたが、釣り人目線では、私が読んだ本の中では、この本が一番役に立つと思います。シャルル・リッツがソーヤーの釣りについて書いた文章も掲載されており、非常に参考になります。

 PTNはコカゲロウなどのスリムなカゲロウのニンフのイミテーションとして効果的ですが、アカマダラカゲロウやオナシカワゲラのニンフとしても使用できます。また、#20以下サイズは、ミッジピューパやラーバのイミテーションにもなると思います。
 私が良く使用するのは、#18と#20です。


 PTNには、フランク・ソーヤ―のオリジナル・パターン以外に、ソラックスにピーコック・ハールを用いたアル・トロースのパターンや、ウィング・ケースに使用したフェザント・テールを折り返してレッグにしたもの、ウィング・ケースにフラッシャブーを用いたものなど、様々なバリエーションがあり、どれも効果的なフライです。

 私も以前はオリジナルのフランク・ソーヤーのパターンに加え、これらのバリエーションも使用していましたが、雑誌で備前貢さんのPTNパターンを見て以来、もっぱら備前さんのパターンを使用しています。
 備前さんのPTNは、ソーヤーのオリジナルに近いのですが、アブドメンはフェザント・テールを巻き付けるのではなく、フックシャンクの背中にフェザント・テールを折り返して、コパ―ワイヤ―でリビングして巻き留めています。この方法だと、ボディーを細く仕上げることができますので、アブドメンは細く、ソラックスはポッコリという、メリハリの利いたシルエットが作れます。



2019年4月20日土曜日

Elk Hair Caddis


 今回は日本のフライフィッシングにおいて定番中の定番であるエルク・ヘア・カディスを紹介します。
 このフライは皆さん良くご存じですので、今更紹介するまでもないのですが、私がフライを巻くときに注意していることや、使い方について述べたいと思います。

 まずタイイングについてですが、このフライは単純な形状であるが故に、エルクヘアの種類や量、ハックルの長さなど、巻く人の個性が出るフライだと思います。
 私の場合、フライがなるべく高く浮くように、また浮力が持続するように、エルクヘアの量は少なめに、ハックルはやや密に巻いています。
 エルクヘアについては、最初はブリーチした太目のカウエルクを極々少ない本数取り付けていました。しかし、千切れやすく、数匹釣るとスカスカになってしまうため、いろいろ試した結果、今はカウエルクよりも細く、ナチュラルでも色が白に近いブルエルクを多めに取り付けています。ナチュラルのブルエルクはブリーチしたものに比べるとかなり強く、使っていて少々千切れたとしても本数が多いのでボリュームを保ってくれます。特に私は顆粒状のフロータントでフライをゴシゴシと揉みますので、エルクヘアの耐久性は重要なポイントです。

 ボディ・ハックルは短すぎても長すぎてもフライの浮き方や浮力の持続性に影響しますが、キャッツキル・パターンに比べると許容範囲は広いです。


 エルクヘア・カディスはダウン・ウィングに取り付けたエルクヘアがキャスティング時に空気を整流する効果があるので、ロング・リーダー・ティペットでもキャスティングしやすいフライですが、ショート・リーダーで使用する際は逆に注意する必要があります。向かい風以外の時は、投射性が良すぎてリーダー、ティペットが伸びきった状態で着水し、フライが着水したとたんにドラッグがかかりやすくなります。そのため、以前のブログで書いた空中でフライを完全にターンオーバーさせ、ティペットにスラックを入れてフライを着水させるプレゼンテーションを、より意識して行う必要があります。

 エルクヘア・カディスは、カディス・アダルトの優れたイミテーションフライですが、ボディをピーコックハールで巻けば、テレストリアル・フライになりますし、ボディ、ハックルの色とフックサイズを変えれば、ミドリカワゲラやオナシカワゲラなどのストーンフライのイミテーションとしても使用できます。まだ20番以下のフックサイズに巻けば、ユスリカのイミテーションにもなります。
 この汎用性は、裏を返せば鱒にとって「水面を流れる何某かの捕食できるもの」全般をイミテーションしていると言えますし、実際に釣り上がりのサーチング・パターンとして、季節や釣り場を問わず、良く釣れるフライです。極端な話ですが、エルクヘア・カディスを色違いで10番から20番までフライボックスに揃えておけば、日本の釣り場ですとシーズンを通じてたいていの場合は、困ることはないと思います。

 キャッツキル・パターンは沈んでしまうと、鱒がフライを咥えることはまずありませんが、エルクヘア・カディスは、どういう訳かフライを沈めても釣れます。私はめったに行いませんが、例えば雨の日でドライフライがすぐに沈んでしまうような時に、エルクヘアカディスをウェットフライとして使うという裏技もあります。


2019年4月13日土曜日

Humpy


今回はウェスタン・フライの中からハンピーを紹介します。

 ハンピーは、テール、ウィング、ボディのシェル・バックに獣毛を用いたフライですので、他のウェスタン・フライ同様に浮力に優れるという特徴があります。

 ハックルを縦に巻いたパターンの中でも、コロッとしたバルキーなシルエットを持つので、私はテレストリアルを意識したフライとして使用しています。写真のフライは、ボディにピーコック・ハール、ハックルにブラウンというコーチマンと同じマテリアルの組み合わせですが、よりテレストリアルっぽさが表現できていると思います。
 小さなサイズにバランス良く巻くのが難しいこともありますが、私は#12のフックに、良く浮かせるためにハックルを3枚巻いたものを使用しています。

 ハンピーはボディマテリアルやカラーの違いで、様々なパターンがありますが、私は写真のもの以外では、ボディをイエローのフロス、テール、ウィング、シェル・バックをナチュラルのディア・ヘア、ハックルを茶色に染めたグリズリーで巻いたイエロー・ハンピーや、ボディを赤のフロス、テールをムース・ボディ、ウィングをホワイト・カーフ・テール、ハックルをコーチマン・ブラウンで巻いたロイヤル・ハンピーを良く使用します。

 写真のフライやロイヤルハンピーのように、テール、シェル・バック、ウィングを異なるマテリアルで巻いたパターンもありますが、イエロー・ハンピーのように、これらの部位を全てディア・ヘアもしくはエルク・ヘアで巻くのが基本で、折り返して巻きとめたシェル・バックをたすき掛けで2つに分けて、そのままウィングにします。
 ウィングを適切な長さに仕上げるには、最初にヘアを適切な長さで巻き留めることが重要になりますが、タイイングが楽しいフライでもあります。

 ハンピーは、時には1匹鱒を釣っただけで、シェル・バックが千切れてバラバラになってしまいますが、そうなってもフライへの鱒の反応は変わらないようです。





2019年4月6日土曜日

Adams


 前回デラウェア・アダムスを紹介しましたが、今回は本家のアダムスを紹介します。

 アダムスは、ミシガンのレナード・ハラデイ(Leonard Halladay)によって考案されたフライですが、その後多くのキャッツキル・タイヤ―によって巻かれたため、キャッツキル・スタイル・フライの1つとなっています。アダムスという名前が、このフライを使って爆釣したハラデイの友人の名前に由来するというのも有名な話です。
 ドライ・フライと言えば、ロイヤル・コーチマンと並んでアダムスを真っ先に思い浮かべる人も多いくらい、世界的にポピュラーなフライです。

 アダムスは、マーチ・ブラウンやライト・ケイヒルとは違い、カゲロウのイミテーションではないようです。カディスのイミテーションと書いてあるものもありますし、羽蟻を模したものと聞いたこともあります。
 陸生昆虫も含めて、鱒の餌となる不特定多数の昆虫を模したフライとして、非常に優れたフライだと思いますが、ハッチ・マッチャー的に使用するのであれば、カディスはもちろん、ナミヒラタカゲロウ、マエグロヒメフタオカゲロウなどのイミテーションとして用いても面白いと思います。

 私はフライを始めた頃は、アダムス・パラシュートを釣り上がりのサーチング・パターンとして良く使用していましたが、オリジナルのアダムスは、他のキャッツキル・パターンに比べると使用頻度は高くありません。

 キャッツキル・フライのアダムスから話はそれますが、昔5月初旬の大山周辺の渓でライズに遭遇し、マーチ・ブラウンでは全く反応がなく、フライボックスに残っていたアダムス・パラシュートを投げたところ、ライズしていたヤマメが立て続けにヒットしたことがあります。その時はおそらく、アダムス・パラシュートがフローティング・ニンフとしてライズにマッチしたのだと思います。

 アダムスはミッジ・サイズも、ミッジのイミテーションとして有効なので、ミッジから10番くらいの大型フライまで、幅広いサイズで汎用的に使用できるフライだと思います。

 アダムスにはグリズリーのヘン・ハックル・ティップをウィングに使用しますが、最近のホワイティング等のジェネティックハックルでは、ウィングに使用するのに適した先端の丸いものが、入手困難になっているのが残念です。


2019年3月22日金曜日

Delaware Adams


 今回は、前回のヘンリービル・スペシャルの発展形ともいえるデラウェア・アダムスを紹介します。マーチ・ブラウン、ライト・ケイヒル、グレイ・フォックスなどのキャッツキル・パターンは、誰もがご存知だと思いますが、このフライを知っている方は、かなりのキャッツキル・パターン・フリークの方ではないでしょうか。

 デラウェア・アダムスは、キャッツキル地方の有名なフライ・タイヤ―であるウォルト・デット(Walt Dette)によって、ヘンリービル・スペシャルの改良版として、1970年代に開発されたそうです。ちなみにウォルト・デットの奥様のウィニー・デット(Winnie Dette)も有名なフライ・タイヤ―として知られています。


 このフライは、ヘンリービル・スペシャルのマラードクイルとウッド・ダックからなるダウン・ウィングが、アダムスと同じグリズリーのヘン・ハックル・ティップのアップライト・ウィングに変更されており、ヘンリービル・スペシャルの弱点であるウィングの耐久性が改善されています。また、水面に高く浮くため、視認性が良く、浮力も向上しています。
 実際のカディスには、このフライのようなテールはありませんが、これはフライの水面上での姿勢を安定させるためのと考えられます。

 人間の目には、ダウン・ウィングのヘンリービル・スペシャルの方がカディスっぽく見えますが、デラウェア・アダムスは、アップライトに取り付けられたウィングと、ボディ・ハックルとテールによって水面上に高く浮いている状態が、カディスがフラッタリングしている状態を良くイミテーションしていると思います。

 カディスのイミテーションとして優れたフライですが、浮力、視認性、耐久性が良いので、サーチング・フライとしても優れたフライだと思います。私はフックサイズ#14と#12を使用していますが、更に大きなサイズや小さなサイズがタイイングしやすいのも、このフライの優れた特徴の1つです。


2019年3月16日土曜日

Henryville Special


 今回は有名なトラディショナル・カディス・パターンのヘンリービル・スペシャルを紹介します。

 このフライは、これまで紹介してきたキャッツキル発祥のフライではなく、ペンシルバニアのハイラム・ボロブスト(Hiram Brobst)によって、1930年代に考案されたフライだそうです。
 マイク・ローソン(Mike Lawson)のヘミングウェイ・カディスや、もっと新しところでは、レネ・ハロップ(Rene Harrop)のヘンリーズフォーク・カディスも、このフライの発展形と言えると思います。

 ボディにパーマハックルを巻いて、ダウンウィングを取り付けるというのデザインは、現在最もポピュラーなカディス・パターンであるエルクヘア・カディスの原型とも言えるかもしれません。

 ヘンリービル・スペシャルは、ボディとフロントに巻かれたハックルにより、水面上に高く浮くので、意外と視認性が良いのも特徴の1つです。
 マラード・クイルのウィングは、鱒を1匹釣っただけでバラバラになってしまいますが、ウィングがバラけてしまっても釣果には影響はないようです。

 オリジナルのヘンリービル・スペシャルのボディは、シルク・フロスですが、私はダビング材を使用しています。

 私はカディス・パターンとしては、このフライよりも機能性に優れたエルクヘア・カディスや次回紹介予定のデラウェア・アダムスを頻繁に使用しますが、このフライのいかにもカディスっぽい外観やトラディショナルな美しいスタイルが好きで、ときどき気分を変えるために使用します。
 また、フライを巻いていても楽しいフライです。



2019年3月2日土曜日

Ausable Wulff


 前回のホワイト・ウルフに引き続き、今回もウルフ・パターンの中からオーサブル・ウルフを紹介します。
 といっても、このフライ・パターンは、リー・ウルフ(Lee Wulff)ではなく、フラン・ベッターズ(Fran Betters)のオリジナルだそうです。

 このフライのネーミングの元になっているオーサブル川は、ニューヨーク州キャッツキル山地を流れる川で、日本の渓流によく似た渓相をしています。フラン・ベッターズは、急流のオーサブル川を釣るために、良く浮いて視認性の良いこのフライを開発したそうです。

 オリジナルのオーサブル・ウルフは、ソラックスと頭部が薄くオレンジがかった色調のカゲロウやカワゲラを模したフライで、そのためスレッドはオレンジ、ボディはラスティ・オレンジのファーで巻かれています。ランドール・カーフマン(Randall Calfman)のスティミュレーターでも同じ配色が使われています。

 日本では、このような色調のカゲロウやカワゲラはいないので、私はマーチ・ブラウンと同じ色調でこのフライを巻いています。良く浮いて良く見えて丈夫なので、北海道でフライをあまり交換せずに釣りを続けたいときなどに、12番サイズのこのフライを良く使用します。
 このフライをハッチ・マッチャーとして使用するのであれば、私はまとまったハッチに遭遇したことがないのですが、オオマダラカゲロウに良いのではないかと思います。

 こんなボリュームのあるフライで日本の繊細なヤマメが釣れるのかと思う方もおられるでしょうが、ご心配なく。ヤマメは大きな餌を食べる時は、思っている以上に大きく口を開けるようで、流石にフッキング率は悪くなりますが、12番のウルフ・フライで新子ヤマメでも釣れてしまいます。


2019年2月23日土曜日

White Wulff


 今回はホワイト・ウルフを紹介します。

 ホワイト・ウルフは、リー・ウルフ(Lee Wulff)が考案した所謂ウルフ・パターンの1つで、ロイヤル・ウルフ、グレイ・ウルフと並んで、世界的に最も有名なフライの1つです。リー・ウルフもキャッツキル・レジェンド(キャッツキル地方で活躍した伝説的なフライ・タイヤ―、フライ・フィッシャーマン)の一人ですので、ウルフ・パターンもキャッツキル・パターンの1種と言えると思います。

 ウルフ・パターンの特徴は、それまで鳥の羽(フェザー)を使用していたキャッツキル・パターンのウィングとテールに、獣毛を使用していることで、その結果浮力と耐久性がより優れています。
 ホワイト・ウルフには、ウィングとテールにカーフ・テイルが使用されています。


 このフライは、日本ではかつてイブニング・ライズ用のフライとして定番でしたので、70年代、80年代からこの釣りをされている方には、懐かしく思われる方も多いと思います。私は#10あるいは#12のフックの巻いたホワイト・ウルフを、いまでもイブニング・ライズ用のフライとして使用しています。特に北海道のニジマスの川では、イブニング・ライズの釣りではこのフライしか使用しません。

 イブニング・ライズの釣りでは、ライズが始まってから暗くなってフライが見えなくなるまでの短時間、だいだい20分から30分くらいが勝負ですので、その間にいかに効率よく鱒をキャッチするかが重要です。そのため、フライには浮力が持続すること、鱒をキャッチした後に浮力が回復しやすいことが求められます。また暗い中でフライを結びかえるのは大変ですし、その時間も惜しいので、たとえフライを後ろの木に引っ掛けたとしてもフライを回収できる、大きなフライと太いティペットが有利です。そして何よりも重要なのは、薄暗い中でもフライが見えることです。
 ホワイト・ウルフは、これらのイブニング・ライズの釣りでフライに求められる要素を高次元で満たしたフライです。

 ホワイト・ウルフは、ヒゲナガのハッチに有効と良く言われますが、私の経験では、これは虹鱒に限ったことかもしれませんが、イブニング・ライズでは鱒がどんな虫を食べている場合でも、たいていの場合ホワイト・ウルフで十分釣りになると思います。鱒が食べている虫に合わせて見えないフライを投げるよりも、よく見えるフライを使ってフィーディングレーンに正確にキャストし、ナチュラル・ドリフトした方が、効果的なようです。


2019年2月9日土曜日

Light Cahill


 今回も、キャッツキル・パターンの中からライト・ケイヒルを紹介します。

 ライト・ケイヒルもマーチ・ブラウンやグレイ・フォックス同様に、キャッツキル地方ではヒラタカゲロウやタニガワカゲロウの仲間を模したフライのようです。
 このフライを日本の渓流でハッチ・マッチャーとして使用する場合は、#12をエルモンヒラタカゲロウの雌のイミテーションとして、#16、#18をコカゲロウとして使用するのが良いと思います。

 私はマーチ・ブラウンとグレイ・フォックスは、汎用的なフライとして使用しますが、ライト・ケイヒルは限定的な使い方をしています。代表的な使い方としては、#12をイブニングライズの釣りで良く使用します。全体的にライトジンジャーの明るい色調なので、光量の落ちたイブニングでも良く見えます。
 もう一つは、4月末から5月初め頃、ミドリカワゲラが沢山ハッチしている時に、#14を使用します。


 このフライも、私はボディをグース・バイオットに変更したものを使用しています。グース・バイオットをボディに巻く際は、タイイングを始める前にあらかじめ水に浸しておくと、柔らかくなって巻きやすくなります。また、グース・バイオットを巻く箇所に少量のヘッド・セメントを塗ってから巻いています。グース・バイオットを巻いた上からヘッド・セメントでコーティングしなくても、十分な強度が得られます。

 ライト・ケイヒルは、私が中学生の頃、まだフライ・フィッシングを始める前に雑誌で目にし、その美しさにあこがれを抱いていたフライで、フライ・フィッシングを始めて一番最初に巻いた思い出のフライです。


2019年1月26日土曜日

Grey Fox


 今回は、私の好きなキャッツキル・スタイル・パターンの中から、グレイ・フォックスを紹介します。

 このフライパターンが生まれたキャッツキル地方では、ダンのボディが黄色がかったクリームで羽がスペックルのヒラタカゲロウの1種をグレイ・フォックスと呼んでいるようです。日本ですと、キイロヒラタカゲロウやシロタニガワカゲロウが近い種だと思います。
 このフライも前回のマーチ・ブラウンと同様に、渓流の釣り上がりの釣りで汎用的に使用できるフライですが、ハッチ・マッチャーとして使用するのであれば、こ淡い色のカゲロウやシマトビケラ等を意識して使用するのが良いと思います。

 私はサイズ#14番を、4月から6月にかけてよく使いますが、これはこの時期に、上記をはじめとする淡い色の水生昆虫を渓で良く見かけるためです。
 それ以外にも、天候や川底の石の色によって、マーチ・ブラウンでは視認性が悪い場合には、このフライを使用します。

 グレイ・フォックスのウィングには、グレイ・マラードを使用しますが、これはマーチ・ブラウンのウィングに使用するウッド・ダックに比べて安価であることも、私がこのフライを多用する理由の1つでもあります。


 私は、このフライも、ボディのマテリアルをグース・バイオットに変えたものをよく使用します。

 グレイ・フォックスは、私が初めて尺イワナを釣ったフライでもあり、その意味でもお気に入りのフライになっています。


2019年1月19日土曜日

March Brown


 これまでお気に入りのフライということで、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライついて、5回にわたって書いてきましたが、今回から具体的なフライパターンについて紹介したいと思います。
 第1回目は、キヤッツキル・スタイル・ドライ・フライの中から、マーチ・ブラウンを紹介します。

 マーチ・ブラウンという名前のフライは、キャッツキル・スタイルのマーチ・ブラウンが生まれる遥か以前から、イギリスでウェット・フライとして存在しましたが、現在ドライ・フライとして良く知られているパターンは、ハリー・ダービー(Harry Darbee)やアート・フリック(Art Flick)によって完成されたものです。

 フライの名前は、使用しているマテリアルに由来するもの、機能や特徴、色調に由来するもの、作者の名前に由来するものなど、様々ですが、そのフライがイミテートしている水生昆虫の俗称に由来するものも多くあります。マーチ・ブラウンもその1つです。
 欧米のフライ・フィッシャーマンは、例えばブルー・ウィング・オリーブや、ペール・モーニング・ダンといったふうに、似たような色調、サイズの複数の水生昆虫を総称して、俗称で呼ぶことが多いです。マーチ・ブラウンは、その名前の通りだと「3月に羽化する茶色っぽいカゲロウ」ということになりますが、3月に羽化しないカゲロウでも似たような色調のものは、マーチ・ブラウンと呼ぶようです。
 このフライが生みだされたキャッツキル地方では、主に早春に羽化するヒラタカゲロウの1種をマーチ・ブラウンと呼んでおり、日本だと色調は若干異なりますが、クロタニガワカゲロウが近いようです。

 私はフックサイズ#14のマーチ・ブラウンを3月下旬から4月中旬にかけて良く使用します。その理由は、視認性の良い色調、サイズであることに加え、私のホームグラウンドの渓では、この時期、カゲロウに限らずカディスも含めて、茶色っぽい色調の水生昆虫が多くハッチするためです。特に里川の釣りで川の周りの桜が咲く頃は、オオクママダラカゲロウのハッチ・マッチャーとして、このフライを使います。
 オオクママダラカゲロウは、アメリカではヘンドリクソンが非常に近く、これを模したフライはメスはヘンドリクソン、オスはレッド・クイルということになるのですが、私は視認性重視でマーチ・ブラウンを多用します。

 オオクママダラカゲロウとマーチ・ブラウンの各部の色は、厳密には同じではないのですが、フライというのは、ぱっと見た時に何となくそれっぽいというのが重要で、フライの各部の色を本物の水生昆虫の各部の色にできるだけ似せてとやっていると、むしろどんどん本物から離れていきます。
 キャッツキル・フライというのは、そのあたりがなんとも絶妙で、既存のパターンでほとんどの水生昆虫の色調をカバーできますし、アレンジするにしても、あまり多くを変更しない方が無難なようです。


 オリジナルのマーチ・ブラウンのボディは、レッド・フォックス等のファーで、一般的にはその代替として化学繊維のダビング材を使用しますが、私はグース・バイオットにアレンジしたものを良く使います。こちらの方が水切れが良く、濡れても水を吸収しないので、浮力が持続しますし、フライを乾かすのも楽です。グース・バイオットのボディは意外と強く、耐久性も問題ありません。

 マーチ・ブラウンのブラウンとグリズリーをミックスしたハックルは、日が差した水面では不思議と視認性が良く、これも私がこのフライが好きな理由の一つです。

2019年1月5日土曜日

Catskill Style Dry Flies(その5)


 今回は、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライを使った釣りについて述べたいと思います。と言っても、これから述べることの多くは、基本的に渓流でのショート・リーダーを使ったドライ・フライの釣りに共通することです。

 キャッツキル・フライではショート・リーダーを使用しますので、長いドリフトには向きません。ショート・リーダーでは、キャスティングの前に、鱒が定位しているであろう場所、フィーディングレーンをしっかり見極め、短いドリフトで鱒にフライを食わせることが重要です。適当にキャストして、だらだらと長い距離をドリフトするのではなく、ここに落として、ここでフライを食わせるというイメージをもってプレゼンテーションすることが重要です。

 次にプレゼンテーションですが、短いドリフトでもキャストしたフライライン、リーダー、ティペットがフライまで伸びきっていては、フライが水面に落ちた直後からドラッグがかかりますので、適度にスラックを作る必要があります。
 ピンポイントアキュラシーを落とさずに、ティペット、リーダーにスラックを作る一番簡単な方法は、プレゼンテーションでロッドティップを高い位置で止め、フライを空中で完全にターン・オーバーさせてから、フライを水面に落下させる方法です。スラックの大きさは、フライをターン・オーバーさせる高さで調整できます。ターン・オーバーさせる高さが低ければスラックは小さくなり、高ければスラックは大きくなります。高い位置でターン・オーバーさせるキャスティングは、バウンス・キャストと呼ばれる方法です。
 アップストリームで釣る場合は、この方法でほぼ対応できますが、アップクロスやクロス、ダウンクロスで流心をまたぐ場合などは、サイドキャストでターン・オーバーする前にラインを水面に落下させるU字キャストや、スリークウォーターでフライをターン・オーバーさせずにフライを落とす方法も使います。

 空気抵抗の大きなキャッツキル・フライをキャストするためにも、フライを狙ったピンポイントにキャストするためにも、ラインスピードはできるだけ遅い方が有効です。しかし、ラインスピードを遅くすればするほど、風の影響を受けやすくなります。
 そこで、空気抵抗の少ないタイトループが有効になります。
 強い向かい風の時は、ラインスピードを上げるよりも、ループを狭くしてサイドキャストする方が有効です。

 プレゼンテーション毎に、鱒が定位している場所、フィーディング・レーンを読んで、ピンポイントに正確にキャストし、短いドリフトで鱒をドライ・フライに食いつかせる釣り方は、大変集中力が必要ですが、狙った通りにフライに鱒が出た時は、非常に満足感が得られます。

 今回、私が紹介した釣り方は、そのほとんどが昔のフライ・フィッシングの教科書に当たり前に書かれていたものです。90年代に入ってからでしょうか、ロング・リーダー・ティペットの釣りがブームになり、リーダーの長さは異常なまでにどんどん長くなっていきました。ロング・リーダー・ティペットを使った釣りは、ティペットのトラブルも多く、空気抵抗の小さなフライしか使用できないので、使えるフライの種類も限定されます。そして何より、狙ったピンポイントにフライを1回でプレゼンテーションするのが、非常に難しいと思います。
 ショート・リーダーを使った釣りは、トラブルも少なく、ピンポイントにフライをプレゼンテーションするのが容易で、ライン、リーダー、その先のフライまでコントロールしているダイレクト感を味わうことができます。
 空気抵抗の大きなフライも使用できるので、良く見えるフライが使えます。私も釣り場や状況によっては、7Xのティペットに#20以下のドライフライを使った釣りもしますが、渓流の釣り上がりの釣りでは、#14、#12のキャッツキル・フライで十分、ヤマメやイワナは釣れます。#12のフライに4Xのティペットだと、バックキャストでフライを木に引っ掛けても、かなりの確率でフライを回収できます。

 今時、私のように7フィート6インチのリーダーで釣りをしている人はめったにいないので、私と初めて一緒に釣りをした方は、私のリーダー、フライを見て驚かれます。フライボックスにぎっしり詰まったキャッツキル・スタイルのドライフライを見て、自分も久しぶりに巻いてみようかなとおっしゃる人も多いです。
 でも、昔は短いリーダーで釣りをされていたベテランの方でも、リーダーを短くするのは、かなり勇気が必要なようです。

 釣り方の好みやスタイルは人それぞれですので、私もこの釣り方を決して強制したりはしませんが、もしこれまでのブログを読んで、興味を持たれた方がおられれば、一度騙されたと思って、ショート・リーダーにキャッツキル・スタイルのドライフライを使った釣りを試されることをお勧めします。
 仮に今までに比べ、釣れる鱒の数が減ったとしても(私はそうなるとは思いませんが)、きっと、なんと快適で楽しい釣りだと実感されることと思います。

2018年12月29日土曜日

Catskill Style Dry Flies(その4)


 今回はキャッツキル・スタイル・ドライ・フライを使用するのに適したタックルについて、述べたいと思います。

 このタイプのフライは、空気抵抗が大きなため、現在日本で主流となっているロングリーダー・ティペットは、キャスティング中にフライが回転してティペットが縮れてしまい使えません。適切な太さのショートリーダーを使用する必要があります。
 まず、ティペットの太さですが、これは昔から言われている3の法則が適用できます。3の法則とは、フライのサイズを3で割った値が適切なティペットのサイズというもので、例えばフライのサイズが#14であれば5X、#12であれば4Xが適切な太さとなります。
 リーダーの長さは、竿の長さくらいが適切です。これも昔のフライフィッシングの教書によく書かれていた原則です。私は7フィート6インチまでの竿を使うことが多いので、7フィート6インチのリーダーを使用しています。
 リーダーが新品の場合は、フライはリーダーに直結で問題ありません。フライを交換してティペット部が短くなってきたら、ティペットを継ぎ足します。私の釣りの師匠の菊地さんは、ティペットは10cmもあれば十分と言っていましたが、さすがに私はその領域には達していないので、50cmほどのティペットを継ぎ足しています。

 竿はリーダー、ティペットほど重要ではありませんが、空気抵抗の大きなフライを正確にキャストするためには、スロースピード・タイトループのキャスティングが必須ですので、ハイモデュラスのグラファイトロッドよりも、バンブーやグラスの方がより適していると言えます。

 ハイスピード・タイトループ、スロースピード・ワイドループという表現は、耳にされたことがあると思いますが、スロースピード・タイトループは耳慣れない表現だと思います。私は師匠の菊地さんからこの表現を教わりましたが、最初は良く理解できませんでした。この意味については、次回のブログで述べたいと思います。

 次回は、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライを使った釣りについて述べたいと思います。

2018年12月22日土曜日

Catskill Style Dry Flies(その3)


 今回は、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライのタイイングについて、述べたいと思います。

 前回述べたように、このタイプのフライのメリットを最大限に活かすには、フライを高く浮かせる必要がありますので、フライのプロポーションが非常に重要です。上の写真のように、ハックルの先端とフックベンド、テールの先端の3か所で水面に接するようにフライを巻く必要があります。

 最近の日本の雑誌に掲載されているキャッツキル・スタイル・フライの写真を見ると、ハックルが短すぎるものが多いようです。ホワイティングを代表とするジェネティックハックルは、ハックルファイバーが短いものが多く、#14や#12サイズのキャッツキル・スタイル・フライに適したハックルがほとんど生えていないものが多いことが原因の1つと思われますが、最も大きな原因は、多くのフライ・フィッシャーマンが、このタイプのフライを使わなくなったためだと推測します。私は雑誌でこのように巻かれたフライを見るたびに、このフライを巻いた人はこのフライ使ったことがないのだろうなと思います。


 ハックルの長さとテールの長さが適切でないと、3か所で水面に接することができず、フライは高く浮かないばかりか、沈みやすくなってしまいます。

 昔のフライタイイングの教科書や雑誌には、キャッツキル・スタイル・フライの適切なプロポーション(各部の長さ)が必ず載っていたものですが、最近はあまり見かけることがありません。
 標準的は各部の長さは、テール、ウィングがシャンクと同じ、ハックルはゲイプの幅の1.5~2倍です。
 フライを巻く際に、ハックルケープからハックルを選んで抜きますが、標準的なハックルサイズに対し、選んだハックルが長めだったり、短めだったりする場合は、テールの長さを微調整します。逆にテールを取り付けた際にテールが長めだったり、短めだったりした場合は、とりつけるハックルファイバーの長さを微調整します。具体的には、ハックルが長めの場合は、テールを短め、ハックルが短めの場合は、テールを長めにします。

 ハックルはできるだけ短い範囲に、密に巻くことが重要です。私は得に浮力の持続性を重視するウルフパターンやハンピーでは、ハックルを3枚巻きますが、キャッツキル・スタイル・フライでもしっかり浮かすためには、2枚は巻く必要があります。
 1枚のハックルに対して、ウィングの前後で最低4回転ずつ、2枚のハックルで合計16回転は巻きます。
 ハックルが多すぎると、フッキングが悪くなるのではと考える人もいるかもしれませんが、心配無用です。フッキングしないのは、ドリフトの問題です。

 テールはフライをしっかり支えるため、たっぷりした本数をとりつける必要があります。ちょっと多すぎるかなというくらいが適量です。

 適切な量のマテリアルを使用し、適切なバランスで巻かれたキャッツキル・スタイルのフライは、水面に高く浮くため、大変視認性が良く、浮力が持続し、しかも高い耐久性を持ちます。

 エルクヘアカディスなどに比べると、フライを巻くのに格段に時間がかかるので、釣り場でフライを背後の木などに引っ掛けてロストした際のショックは大きいのですが、浮力が持続するため、フライを頻繁に交換する必要がなく、ストレスなく釣りができますし、美しく巻かれたフライで美しい鱒を釣るのは、より大きな喜びと満足感を与えてくれます。