2022年1月29日土曜日

沢田賢一郎「ウェットフライ探究」

 

 前回のブログに引き続き、沢田賢一郎氏のウェット・フライに関する書籍を紹介します。

 今回紹介する「ウェットフライ探究」は、前回紹介した「ウェットフライフィッシング」の続編であり、タイトル通りウェットフライ上級者向けの本です。

 構成は、「ウェットフライを使いこなすための基礎的考察」、「D&A(ダウン・アンド・アクロス)に関する実践的考察」、「魚の習性に関する発展的考察」、「フッキングの方法に関する戦略的考察」の4章からなり、最後にこの本に登場するフライの内、これまで未発表のもの、既刊の「ウェットフライ400パターンとドレッシングテクニック」に掲載されていない17のフライ・パターンについてマテリアルが紹介されています。
 各章のタイトルを見ると、まるで論文のタイトルの様ですが、書かれている内容も沢田氏の経験に基づいた考察が中心となっており、かなりウェット・フライの釣りを経験した方でないと理解できない、あるいは参考にならないと思われる内容になっています。
 私はいきなり、前回紹介した「ウェットフライフィッシング」とこの本をプロショップ・サワダから通販で購入し、実際に釣りをする前に読みましたので、ほとんど理解できませんでした。(ちなみにこちらの本は沢田賢一郎氏のサイン入りでした。)
 一般的な釣り人は「ウェットフライフィッシング」で十分で、おそらくウェット・フライの釣りをかなり経験した方にとっては、目から鱗の内容になっているのだと思います。

 それにしても目を見張るのは、やはり沢田氏の巻かれた美しいプロポーションのウェット・フライの写真で、巻頭2ページ目の15種類の標準的なウェットと注釈のついた15種類のウェットフライが1枚に納らせた写真は圧巻です。また、14ページから16ページにかけて掲載されている巨大なシートラウトの写真にも圧倒されます。

 この本も含め、株式会社サワダから発行された本は発行部数が少ないせいか、大手出版社から発行された本に比べるとどれも価格が高めなのですが、内容を考えると十分それだけの価値はあると思います。

2022年1月22日土曜日

沢田賢一郎「ウェットフライフィッシング」

 

 今回紹介する書籍は、沢田賢一郎氏の「ウェットフライフィッシング」です。

 沢田氏といえば、フライ・キャスティングと並んでウェット・フライで有名ですが、この本は何冊か出版された沢田氏のウェット・フライに関する書籍の中で、基礎編、入門編として書かれたものです。基礎編といっても、沢田氏のウェット・フライに関する長年の知識と経験が1冊にまとめられており、非常に中身の濃い本になっています。

 内容は、ウェット・フライとはそもそも何なのかに始まり、ウェット・フライの釣り方、タックル、最後に沢田氏自身がタイイングしたものと思われる美しい24のフライ・パターンがカラー写真で紹介されています。この本ではこれらのフライ・パターンのマテリアルや巻き方は紹介されていないのですが、それらについては別の書籍が発刊されていますので、そちらを参考にということでしょう。

 ウェット・フライのプレゼンテーション、ドリフト、アワセ、季節やコンディションなどに応じた釣り方など、ウェット・フライの釣りのテクニックが非常に詳細に説明されているのはもちろんですが、この本が面白いのは「ウェットフライをマスターする近道」と題した部があり、ドライ・フライ経験者がウェット・フライを始めるにあたりどうすれば良いかや、なぜウェット・フライで大物が釣れるのかといった内容が書かれているところです。
 この本で沢田氏は、ドライ経験者がウェット・フライを始める場合は、ライズを見つけたらウェット・フライを投げてみること、河川タイプの管理釣り場で練習することを推奨しています。
 私はずっとドライ・フライで釣りをしてきて、ウェット・フライだと増水時でも釣りになったり、大きな魚が釣りやすかったりするのではないかと考え、この本を買ったわけですが、ここに書かれていることを実践できず、渓流で少し試してみて釣れないのでドライ・フライに戻ってしまうという、この本で沢田氏が書いている通りの失敗に陥ることとなり、今に至っています。

 この本はDVD版も発売されていました。DVD版は視覚的にウェット・フライの釣り方が理解しやすいというメリットがあり、また実際にイワナを釣るシーンもあって面白いのですが、内容の濃さは書籍に軍配が上がります。
 DVD版ではいくつかのフライ・パターンのタイイングが収録されているので、その点は非常に参考になります。

 残念ながらこの本の発行所である株式会社サワダ自身が数年前に廃業してしまいましたので、この本を新品で購入することはできませんが、ウェット・フライの釣りをする方、これから始める方は必読の書だと思います。

 先に述べたように、私はウェット・フライを脱落した人間ですが、ウェット・フライの書籍は何冊か所有していますので、次回以降にそれらについて紹介したいと思います。

2022年1月15日土曜日

テッド・リースン「フライタイイング・テクニック百科全書」

 

 久しぶりにお気に入りの書籍の紹介です。今回はフライ・タイイング関係の書籍の中から、テッド・リースン著の「フライタイイング・テクニック百科全書」を紹介します。

 この本の原題は「The Fly Tier's Benchiside Reference」で、日本では東知憲さんの翻訳で2003年にC&F DESIGNから発行されました。アメリカでもたいへん話題になった本だそうですが、日本でも発売当時話題になったのを覚えています。

 フライ・タイイングのあらゆるテクニックを網羅した百科事典的な本で、タイトル通りタイイング机の側に置いて、分からない時にページを開いて使うための本です。
 ページ数は463ページ、紹介されているテクニックは実に436です。その全てがステップ毎にカラー写真と文章で解説されているので、非常に分かりやすくなっています。ある程度フライを巻いた経験のある人であれば、フライの完成形とマテリアルが分かれば、初めてのフライでも、この本を参考にほとんどのフライを巻くことができると思います。

 比較的新しい本なので、伝統的なフライを巻くためのテクニックからシンセテック・マテリアルを使った最近のテクニックまで網羅されています。
 島崎憲司郎さんのシマザキ・フライウィングのテクニックも紹介されていますが、この原著が発売されたのが1998年ですので、マシュマロ・ボティーのテクニックは紹介されていません。
 フライの部位毎に章が分かれているので、自分が知りたいテクニックが探しやすくなっています。

 私はほとんど決まったフライしか巻かないので、この本を開く機会はそう多くないのですが、これまで巻いたことのないパターンを巻く時に重宝しています。新しいフライ・パターンをよく巻く人や、オリジナルのフライを考案する時などに非常に参考になると思います。

 非常に高価な本ですが、フライ・タイイングの好きな方、特に新しいパターンをよく巻く方にはそれだけの価値はあると思います。この本は今でもフライ・ショップを探せば購入できるようです。

2022年1月8日土曜日

Steffen Brothers(その22)Graphite 8' #2/3


  ステファン・ブラザーズのグラファイト、8フィート、2、3番、3ピースが完成しました。


 グリップはご依頼者のリクエストによりギャリソン・タイプのストレート・シガーの先端巻き上げ、リール・シート金具はRECのニッケル。シルバーのギャリソン・タイプのポケット&リングです。


 グリップの前の飾り巻きは、ダーク・ブルーにシルバーのメタリック・スレッドのピン・ラインを3本。グリップ・エンドから30.3cm(1尺)の位置にメジャリング・ラップ入りです。


 トップ・ガイド以外のガイド・ラップは、コバルト・ブルーです。写真では分かり難いですが、グリップ前、フェルール、トップ・ガイドのラッピングのダーク・ブルーよりも明るいブルーです。

 このブルーのグラファイト・ブランクはステファン・ブラザーズの当時のグラファイト・ロッドの中ではロー・モデュラスと呼ばれていたモデルですが、IM6程度の弾性率ですので一般的には中弾性グラファイトに分類されると思います。現在主流となっている高弾性グラファイトを用いたフライ・ロッドはブランクの肉厚が薄いものがほとんどですが、この竿はフェルール部の写真から分かるように、肉厚のブランクになっています。そのため、素振りした感触では2、3番ロッドにしては硬く感じるのですが、ラインを通すとブランクの粘りを活かしたトルクのあるループを生み出すのではないかと思います。ラインを通して試し振りをしていませんのであくまでも推測ですが、比較的ゆっくりしたストロークで振れるのではないかと思います。

 ご依頼者は忍野や桂川でライズを狙う釣りに使用されるとのことですが、小さなフライと細いティペットでライズを狙う釣りにはぴったりの竿ではないかと思います。


 ステファン・ブラザーズのデッド・ストックのグラファイト・ブランクは、現在8フィート、2、3番、2ピース、7フィート6インチ、3、4番、2ピース、7フィート3インチ、3、4番、4ピースの在庫が各1本ありますので、ご興味のある方はyoshiharu.rod@gmail.comまでお問い合わせください。お好みの仕様でカスタムメイドいたします。

2022年1月3日月曜日

Steffen Brothers(その21)Graphite 8' #2/3

 

 ステファン・ブラザーズのグラファイト、8フィート、#2、3番のロッド・ビルディングの続きです。

 今回のご依頼のラッピング・スレッドのカラーは、ガイド・ラップがブランクと同色か少し濃いブルー、それ以外は更に濃いブルーとのことでしたので、ブルー系のスレッドを試し巻きしたサンプルしゃしんを送って、スレッドを選定していただきました。
 グリップ上の飾り巻きは、グデブロッドの246ダーク・ブルーにシルバーのメタリック・スレッドのピン・ラインを3本です。ロッドエンドから尺(30.3cm)の位置にメジャーリング・ラップ付きです。


 ガイド・ラップはグデブロッドの50コバルト・ブルーです。ステファン・ブラザーズのグラファイト・ブランクのカラーは、光の当たり方によって色が変化し、グリーンがかったブルーにも見えるのですが、光の当たり方によっては、コバルト・ブルーに近い色に見えます。
 この状態では、ガイドラップのコバルト・ブルーよりもフェルール部やグリップ上のダーク・ブルーの方が明るいブルーです。



 1回目のエポキシ・コーティングが終わるとスレッドが透けてブランクの色の影響が出ますので、上の2枚の写真の様により透けやすいダーク・ブルーの方が濃い色になります。

 あと2回ずつエポキシを重ねて完成です。