2019年1月26日土曜日

Grey Fox


 今回は、私の好きなキャッツキル・スタイル・パターンの中から、グレイ・フォックスを紹介します。

 このフライパターンが生まれたキャッツキル地方では、ダンのボディが黄色がかったクリームで羽がスペックルのヒラタカゲロウの1種をグレイ・フォックスと呼んでいるようです。日本ですと、キイロヒラタカゲロウやシロタニガワカゲロウが近い種だと思います。
 このフライも前回のマーチ・ブラウンと同様に、渓流の釣り上がりの釣りで汎用的に使用できるフライですが、ハッチ・マッチャーとして使用するのであれば、こ淡い色のカゲロウやシマトビケラ等を意識して使用するのが良いと思います。

 私はサイズ#14番を、4月から6月にかけてよく使いますが、これはこの時期に、上記をはじめとする淡い色の水生昆虫を渓で良く見かけるためです。
 それ以外にも、天候や川底の石の色によって、マーチ・ブラウンでは視認性が悪い場合には、このフライを使用します。

 グレイ・フォックスのウィングには、グレイ・マラードを使用しますが、これはマーチ・ブラウンのウィングに使用するウッド・ダックに比べて安価であることも、私がこのフライを多用する理由の1つでもあります。


 私は、このフライも、ボディのマテリアルをグース・バイオットに変えたものをよく使用します。

 グレイ・フォックスは、私が初めて尺イワナを釣ったフライでもあり、その意味でもお気に入りのフライになっています。


2019年1月19日土曜日

March Brown


 これまでお気に入りのフライということで、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライついて、5回にわたって書いてきましたが、今回から具体的なフライパターンについて紹介したいと思います。
 第1回目は、キヤッツキル・スタイル・ドライ・フライの中から、マーチ・ブラウンを紹介します。

 マーチ・ブラウンという名前のフライは、キャッツキル・スタイルのマーチ・ブラウンが生まれる遥か以前から、イギリスでウェット・フライとして存在しましたが、現在ドライ・フライとして良く知られているパターンは、ハリー・ダービー(Harry Darbee)やアート・フリック(Art Flick)によって完成されたものです。

 フライの名前は、使用しているマテリアルに由来するもの、機能や特徴、色調に由来するもの、作者の名前に由来するものなど、様々ですが、そのフライがイミテートしている水生昆虫の俗称に由来するものも多くあります。マーチ・ブラウンもその1つです。
 欧米のフライ・フィッシャーマンは、例えばブルー・ウィング・オリーブや、ペール・モーニング・ダンといったふうに、似たような色調、サイズの複数の水生昆虫を総称して、俗称で呼ぶことが多いです。マーチ・ブラウンは、その名前の通りだと「3月に羽化する茶色っぽいカゲロウ」ということになりますが、3月に羽化しないカゲロウでも似たような色調のものは、マーチ・ブラウンと呼ぶようです。
 このフライが生みだされたキャッツキル地方では、主に早春に羽化するヒラタカゲロウの1種をマーチ・ブラウンと呼んでおり、日本だと色調は若干異なりますが、クロタニガワカゲロウが近いようです。

 私はフックサイズ#14のマーチ・ブラウンを3月下旬から4月中旬にかけて良く使用します。その理由は、視認性の良い色調、サイズであることに加え、私のホームグラウンドの渓では、この時期、カゲロウに限らずカディスも含めて、茶色っぽい色調の水生昆虫が多くハッチするためです。特に里川の釣りで川の周りの桜が咲く頃は、オオクママダラカゲロウのハッチ・マッチャーとして、このフライを使います。
 オオクママダラカゲロウは、アメリカではヘンドリクソンが非常に近く、これを模したフライはメスはヘンドリクソン、オスはレッド・クイルということになるのですが、私は視認性重視でマーチ・ブラウンを多用します。

 オオクママダラカゲロウとマーチ・ブラウンの各部の色は、厳密には同じではないのですが、フライというのは、ぱっと見た時に何となくそれっぽいというのが重要で、フライの各部の色を本物の水生昆虫の各部の色にできるだけ似せてとやっていると、むしろどんどん本物から離れていきます。
 キャッツキル・フライというのは、そのあたりがなんとも絶妙で、既存のパターンでほとんどの水生昆虫の色調をカバーできますし、アレンジするにしても、あまり多くを変更しない方が無難なようです。


 オリジナルのマーチ・ブラウンのボディは、レッド・フォックス等のファーで、一般的にはその代替として化学繊維のダビング材を使用しますが、私はグース・バイオットにアレンジしたものを良く使います。こちらの方が水切れが良く、濡れても水を吸収しないので、浮力が持続しますし、フライを乾かすのも楽です。グース・バイオットのボディは意外と強く、耐久性も問題ありません。

 マーチ・ブラウンのブラウンとグリズリーをミックスしたハックルは、日が差した水面では不思議と視認性が良く、これも私がこのフライが好きな理由の一つです。

2019年1月12日土曜日

Diamondback 7'6" #4-5


 昔のダイヤモンドバックのデッドストックのブランクが手に入りましたので、組み上げてみました。スペックは7フィート6インチ、#4、5番になります。

 ダイヤモンドバックは90年代の初め頃にスミスから販売されていた、マリエット・ダイヤモンドバックを2本所有していました。1本は今回組んだ竿と全く同じ7フィート6インチ、#4、5番、もう1本は7フィートの#3、4番です。


 昔のダイヤモンドバックのブランクは、レナードのゴールデン・シャドウシリーズに使用されていたことで有名ですが、マリエット・ダイヤモンドバックはゴールデン・シャドウを意識した仕上げとなっており、オリーブ・グリーンのブランクに合わせてラッピングの色がグリーン調にアレンジされています。
 マリエット・ダイヤモンドバックは、日本の某有名カスタム・ロッド・ビルダーが組み立てていたと何かで読んだ記憶がありますが、非常に美しい仕上がりになっています。

 私が組んだ竿は、私の好みでラス・ピークを意識した仕上げにしています。


 今回組んだブランクは、マリエット・ダイヤモンドバックと全く同じオリーブ・グリーンのカラーですので、ラッピングはダークグリーンにゴールドの飾り巻きとしました。


 このダイヤモンドバックのブランクは、80年代の初め頃に設計されたものですので、比較的低弾性率のグラファイトを用いた肉厚のブランクになっており、現在のグラファイトロッドではほとんど見かけないスローテーパーのパラボリック・アクションの竿です。
 したがって、ゆっくりしたキャスティングストローク(ロングストロークという意味ではありません)で、スロースピードのラインを投げるのに適しています。非常に素直なアクションですが、初心者向けではなく、ある程度キャスティングができる人向きの竿です。バンブーロッドに慣れた人向きとも言えます。


 ラインは4、5番指定で、素振りすると5番のように感じます。しかし、実際にキャスティングしてみると、近距離は問題ありませんが、ある程度ラインを出すとタイトループのコントロールが難しくなるので、4番の方が向いていると思います。私はウェイトフォワードラインが好きなのですが、この竿に関してはダブルテーパーが向いていると思います。


 パラボリックで全体に張りのあるアクションは、ラス・ピークのグラファイト・ロッドに近いと言えますが、3番手ライン指定のラス・ピークが、どのライン番手でも破綻なくキャスティングできるのに対し、ダイヤモンドバックのライン番手の許容範囲は狭いように思います。


 ちなみに、7フィート#3、4番の竿は、3番を乗せても、かなり柔らかい竿で、良い型のイワナを掛けるとなかなかスリリングな竿でした。

追伸:
 同じ7フィート6インチ、#4、5番の新品ブランクがあと2本ありますので、カスタムメイドさせていただきます。
 ご興味のある方は、yoshiharu.rod@gmail.comまでメールでお問い合わせください。グリップ形状、リールシート、ラッピングスレッドの変更等、メールでご相談ください。

2019年1月5日土曜日

Catskill Style Dry Flies(その5)


 今回は、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライを使った釣りについて述べたいと思います。と言っても、これから述べることの多くは、基本的に渓流でのショート・リーダーを使ったドライ・フライの釣りに共通することです。

 キャッツキル・フライではショート・リーダーを使用しますので、長いドリフトには向きません。ショート・リーダーでは、キャスティングの前に、鱒が定位しているであろう場所、フィーディングレーンをしっかり見極め、短いドリフトで鱒にフライを食わせることが重要です。適当にキャストして、だらだらと長い距離をドリフトするのではなく、ここに落として、ここでフライを食わせるというイメージをもってプレゼンテーションすることが重要です。

 次にプレゼンテーションですが、短いドリフトでもキャストしたフライライン、リーダー、ティペットがフライまで伸びきっていては、フライが水面に落ちた直後からドラッグがかかりますので、適度にスラックを作る必要があります。
 ピンポイントアキュラシーを落とさずに、ティペット、リーダーにスラックを作る一番簡単な方法は、プレゼンテーションでロッドティップを高い位置で止め、フライを空中で完全にターン・オーバーさせてから、フライを水面に落下させる方法です。スラックの大きさは、フライをターン・オーバーさせる高さで調整できます。ターン・オーバーさせる高さが低ければスラックは小さくなり、高ければスラックは大きくなります。高い位置でターン・オーバーさせるキャスティングは、バウンス・キャストと呼ばれる方法です。
 アップストリームで釣る場合は、この方法でほぼ対応できますが、アップクロスやクロス、ダウンクロスで流心をまたぐ場合などは、サイドキャストでターン・オーバーする前にラインを水面に落下させるU字キャストや、スリークウォーターでフライをターン・オーバーさせずにフライを落とす方法も使います。

 空気抵抗の大きなキャッツキル・フライをキャストするためにも、フライを狙ったピンポイントにキャストするためにも、ラインスピードはできるだけ遅い方が有効です。しかし、ラインスピードを遅くすればするほど、風の影響を受けやすくなります。
 そこで、空気抵抗の少ないタイトループが有効になります。
 強い向かい風の時は、ラインスピードを上げるよりも、ループを狭くしてサイドキャストする方が有効です。

 プレゼンテーション毎に、鱒が定位している場所、フィーディング・レーンを読んで、ピンポイントに正確にキャストし、短いドリフトで鱒をドライ・フライに食いつかせる釣り方は、大変集中力が必要ですが、狙った通りにフライに鱒が出た時は、非常に満足感が得られます。

 今回、私が紹介した釣り方は、そのほとんどが昔のフライ・フィッシングの教科書に当たり前に書かれていたものです。90年代に入ってからでしょうか、ロング・リーダー・ティペットの釣りがブームになり、リーダーの長さは異常なまでにどんどん長くなっていきました。ロング・リーダー・ティペットを使った釣りは、ティペットのトラブルも多く、空気抵抗の小さなフライしか使用できないので、使えるフライの種類も限定されます。そして何より、狙ったピンポイントにフライを1回でプレゼンテーションするのが、非常に難しいと思います。
 ショート・リーダーを使った釣りは、トラブルも少なく、ピンポイントにフライをプレゼンテーションするのが容易で、ライン、リーダー、その先のフライまでコントロールしているダイレクト感を味わうことができます。
 空気抵抗の大きなフライも使用できるので、良く見えるフライが使えます。私も釣り場や状況によっては、7Xのティペットに#20以下のドライフライを使った釣りもしますが、渓流の釣り上がりの釣りでは、#14、#12のキャッツキル・フライで十分、ヤマメやイワナは釣れます。#12のフライに4Xのティペットだと、バックキャストでフライを木に引っ掛けても、かなりの確率でフライを回収できます。

 今時、私のように7フィート6インチのリーダーで釣りをしている人はめったにいないので、私と初めて一緒に釣りをした方は、私のリーダー、フライを見て驚かれます。フライボックスにぎっしり詰まったキャッツキル・スタイルのドライフライを見て、自分も久しぶりに巻いてみようかなとおっしゃる人も多いです。
 でも、昔は短いリーダーで釣りをされていたベテランの方でも、リーダーを短くするのは、かなり勇気が必要なようです。

 釣り方の好みやスタイルは人それぞれですので、私もこの釣り方を決して強制したりはしませんが、もしこれまでのブログを読んで、興味を持たれた方がおられれば、一度騙されたと思って、ショート・リーダーにキャッツキル・スタイルのドライフライを使った釣りを試されることをお勧めします。
 仮に今までに比べ、釣れる鱒の数が減ったとしても(私はそうなるとは思いませんが)、きっと、なんと快適で楽しい釣りだと実感されることと思います。