2019年1月19日土曜日

March Brown


 これまでお気に入りのフライということで、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライついて、5回にわたって書いてきましたが、今回から具体的なフライパターンについて紹介したいと思います。
 第1回目は、キヤッツキル・スタイル・ドライ・フライの中から、マーチ・ブラウンを紹介します。

 マーチ・ブラウンという名前のフライは、キャッツキル・スタイルのマーチ・ブラウンが生まれる遥か以前から、イギリスでウェット・フライとして存在しましたが、現在ドライ・フライとして良く知られているパターンは、ハリー・ダービー(Harry Darbee)やアート・フリック(Art Flick)によって完成されたものです。

 フライの名前は、使用しているマテリアルに由来するもの、機能や特徴、色調に由来するもの、作者の名前に由来するものなど、様々ですが、そのフライがイミテートしている水生昆虫の俗称に由来するものも多くあります。マーチ・ブラウンもその1つです。
 欧米のフライ・フィッシャーマンは、例えばブルー・ウィング・オリーブや、ペール・モーニング・ダンといったふうに、似たような色調、サイズの複数の水生昆虫を総称して、俗称で呼ぶことが多いです。マーチ・ブラウンは、その名前の通りだと「3月に羽化する茶色っぽいカゲロウ」ということになりますが、3月に羽化しないカゲロウでも似たような色調のものは、マーチ・ブラウンと呼ぶようです。
 このフライが生みだされたキャッツキル地方では、主に早春に羽化するヒラタカゲロウの1種をマーチ・ブラウンと呼んでおり、日本だと色調は若干異なりますが、クロタニガワカゲロウが近いようです。

 私はフックサイズ#14のマーチ・ブラウンを3月下旬から4月中旬にかけて良く使用します。その理由は、視認性の良い色調、サイズであることに加え、私のホームグラウンドの渓では、この時期、カゲロウに限らずカディスも含めて、茶色っぽい色調の水生昆虫が多くハッチするためです。特に里川の釣りで川の周りの桜が咲く頃は、オオクママダラカゲロウのハッチ・マッチャーとして、このフライを使います。
 オオクママダラカゲロウは、アメリカではヘンドリクソンが非常に近く、これを模したフライはメスはヘンドリクソン、オスはレッド・クイルということになるのですが、私は視認性重視でマーチ・ブラウンを多用します。

 オオクママダラカゲロウとマーチ・ブラウンの各部の色は、厳密には同じではないのですが、フライというのは、ぱっと見た時に何となくそれっぽいというのが重要で、フライの各部の色を本物の水生昆虫の各部の色にできるだけ似せてとやっていると、むしろどんどん本物から離れていきます。
 キャッツキル・フライというのは、そのあたりがなんとも絶妙で、既存のパターンでほとんどの水生昆虫の色調をカバーできますし、アレンジするにしても、あまり多くを変更しない方が無難なようです。


 オリジナルのマーチ・ブラウンのボディは、レッド・フォックス等のファーで、一般的にはその代替として化学繊維のダビング材を使用しますが、私はグース・バイオットにアレンジしたものを良く使います。こちらの方が水切れが良く、濡れても水を吸収しないので、浮力が持続しますし、フライを乾かすのも楽です。グース・バイオットのボディは意外と強く、耐久性も問題ありません。

 マーチ・ブラウンのブラウンとグリズリーをミックスしたハックルは、日が差した水面では不思議と視認性が良く、これも私がこのフライが好きな理由の一つです。

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