2018年12月29日土曜日

Catskill Style Dry Flies(その4)


 今回はキャッツキル・スタイル・ドライ・フライを使用するのに適したタックルについて、述べたいと思います。

 このタイプのフライは、空気抵抗が大きなため、現在日本で主流となっているロングリーダー・ティペットは、キャスティング中にフライが回転してティペットが縮れてしまい使えません。適切な太さのショートリーダーを使用する必要があります。
 まず、ティペットの太さですが、これは昔から言われている3の法則が適用できます。3の法則とは、フライのサイズを3で割った値が適切なティペットのサイズというもので、例えばフライのサイズが#14であれば5X、#12であれば4Xが適切な太さとなります。
 リーダーの長さは、竿の長さくらいが適切です。これも昔のフライフィッシングの教書によく書かれていた原則です。私は7フィート6インチまでの竿を使うことが多いので、7フィート6インチのリーダーを使用しています。
 リーダーが新品の場合は、フライはリーダーに直結で問題ありません。フライを交換してティペット部が短くなってきたら、ティペットを継ぎ足します。私の釣りの師匠の菊地さんは、ティペットは10cmもあれば十分と言っていましたが、さすがに私はその領域には達していないので、50cmほどのティペットを継ぎ足しています。

 竿はリーダー、ティペットほど重要ではありませんが、空気抵抗の大きなフライを正確にキャストするためには、スロースピード・タイトループのキャスティングが必須ですので、ハイモデュラスのグラファイトロッドよりも、バンブーやグラスの方がより適していると言えます。

 ハイスピード・タイトループ、スロースピード・ワイドループという表現は、耳にされたことがあると思いますが、スロースピード・タイトループは耳慣れない表現だと思います。私は師匠の菊地さんからこの表現を教わりましたが、最初は良く理解できませんでした。この意味については、次回のブログで述べたいと思います。

 次回は、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライを使った釣りについて述べたいと思います。

2018年12月22日土曜日

Catskill Style Dry Flies(その3)


 今回は、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライのタイイングについて、述べたいと思います。

 前回述べたように、このタイプのフライのメリットを最大限に活かすには、フライを高く浮かせる必要がありますので、フライのプロポーションが非常に重要です。上の写真のように、ハックルの先端とフックベンド、テールの先端の3か所で水面に接するようにフライを巻く必要があります。

 最近の日本の雑誌に掲載されているキャッツキル・スタイル・フライの写真を見ると、ハックルが短すぎるものが多いようです。ホワイティングを代表とするジェネティックハックルは、ハックルファイバーが短いものが多く、#14や#12サイズのキャッツキル・スタイル・フライに適したハックルがほとんど生えていないものが多いことが原因の1つと思われますが、最も大きな原因は、多くのフライ・フィッシャーマンが、このタイプのフライを使わなくなったためだと推測します。私は雑誌でこのように巻かれたフライを見るたびに、このフライを巻いた人はこのフライ使ったことがないのだろうなと思います。


 ハックルの長さとテールの長さが適切でないと、3か所で水面に接することができず、フライは高く浮かないばかりか、沈みやすくなってしまいます。

 昔のフライタイイングの教科書や雑誌には、キャッツキル・スタイル・フライの適切なプロポーション(各部の長さ)が必ず載っていたものですが、最近はあまり見かけることがありません。
 標準的は各部の長さは、テール、ウィングがシャンクと同じ、ハックルはゲイプの幅の1.5~2倍です。
 フライを巻く際に、ハックルケープからハックルを選んで抜きますが、標準的なハックルサイズに対し、選んだハックルが長めだったり、短めだったりする場合は、テールの長さを微調整します。逆にテールを取り付けた際にテールが長めだったり、短めだったりした場合は、とりつけるハックルファイバーの長さを微調整します。具体的には、ハックルが長めの場合は、テールを短め、ハックルが短めの場合は、テールを長めにします。

 ハックルはできるだけ短い範囲に、密に巻くことが重要です。私は得に浮力の持続性を重視するウルフパターンやハンピーでは、ハックルを3枚巻きますが、キャッツキル・スタイル・フライでもしっかり浮かすためには、2枚は巻く必要があります。
 1枚のハックルに対して、ウィングの前後で最低4回転ずつ、2枚のハックルで合計16回転は巻きます。
 ハックルが多すぎると、フッキングが悪くなるのではと考える人もいるかもしれませんが、心配無用です。フッキングしないのは、ドリフトの問題です。

 テールはフライをしっかり支えるため、たっぷりした本数をとりつける必要があります。ちょっと多すぎるかなというくらいが適量です。

 適切な量のマテリアルを使用し、適切なバランスで巻かれたキャッツキル・スタイルのフライは、水面に高く浮くため、大変視認性が良く、浮力が持続し、しかも高い耐久性を持ちます。

 エルクヘアカディスなどに比べると、フライを巻くのに格段に時間がかかるので、釣り場でフライを背後の木などに引っ掛けてロストした際のショックは大きいのですが、浮力が持続するため、フライを頻繁に交換する必要がなく、ストレスなく釣りができますし、美しく巻かれたフライで美しい鱒を釣るのは、より大きな喜びと満足感を与えてくれます。

2018年12月15日土曜日

Catskill Style Dry Flies(その2)


 今回はキャッツキル・スタイル・ドライ・フライの特徴と利点について書きたいと思います。

 キャッツキル・スタイル・フライの特徴と利点をまとめると以下のようになります。

(1)水面に高く浮く
 正しいプロポーションで巻かれたキャッツキル・スタイル・フライは、ハックルの先端とフックベンド、テールの先端の3点で水面と接するので、水面上に高く浮きます。これは、このフライの最大の特徴の一つで、以下の利点を生み出します。

(2)視認性が良い
 キャッツキル・スタイル・フライは、水生昆虫に似せた地味な色ですし、パラシュートパターンのようなインジケーターとなる派手な色のポストも持たないので、視認性が悪いと思われる方が多いと思います。ところが、フライの色にもよりますが、高く浮いたキャッツキル・スタイル・フライは、実は非常に良く見えます。

(3)沈みにくく、浮力が持続する
 水面に高く浮くということは、水と接触している面積が少ないので、フライが水流に巻き込まれにくく、沈みにくいことを意味します。また、フライが水を吸収しにくいため、浮力が持続します。

(4)鱒の目をごまかしやすい
 水面に高く浮いたフライは、フライがトラウトウィンドウの外側にあっても内側にあっても、鱒の目がら見てシルエット、色、大きさが曖昧なので、鱒をだましやすいという利点があります。

(5)優れたハッチ・マッチャーになりうる
 私は、キャッツキル・ドライ・フライを(2)、(3)の利点を活かして、瀬の釣り上がりに使用することが多いのですが、これらのフライは状況によっては、(4)と合わせて、優れたハッチ・マッチャーにもなります。
 もともとキャッツキル・スタイル・フライのそれぞれのパターンは、オーサブル川などキャッツキル地方でハッチする水生昆虫も模したものがほとんどで、日本の渓流にも同じような外観の水生昆虫が生息しています。具体的な例は、個別のフライの紹介の際に、示したいと思います。

(6)狙った場所に正確に、自然にプレゼンテーションしやすい
 これはデメリットからくるメリットといいますか、逆説的な理由になりますが、キャッツキル・スタイルフライは空気抵抗が大きいので、現在日本で主流となっている細くて長いリーダー・ティペットが使えません。そこで、短くて太いリーダーティペットを使い、スローラインでキャスティングすることになるので、必然的にアキュラシーが上がります。スローラインでプレゼンテーションされた空気抵抗の大きなフライは、ターンオーバー後、まるで本物の水生昆虫のように、ふわりと水面に落下します。

(7)耐久性に優れる
 キャッツキル・スタイル・フライは、エルク・ヘア・カディスやCDCダンなどに比べ、タイイングに時間がかかるというデメリットがありますが、これらのフライはその繊細な見た目とは異なり、非常に丈夫で、鱒を何匹釣っても壊れることがありません。私は顆粒状のフロータントでゴシゴシフライを揉みますが、そのような使い方をしても、フライは壊れることはありません。フライを木に引っ掛けたり、合わせ切れをしたりして無くさない限りは、1本のフライをいつまでも使い続けることができます。
 また、1日使ってくたくたになったフライも、家に帰ってヤカンの蒸気に充ててやれば、ほぼ元の状態に復活します。

(8)ドライフライらしい繊細さと上品さを持つ
 これまで述べてきた実用的な理由以外に、私がこれらのフライを多用する理由の一つに、これらのフライが、大変美しく、伝統的でいかにもドライフライらしい繊細さと上品さを有することが挙げられます。キャッツキル・スタイル・フライが生まれて以降、世界中で沢山の優れたハッチマッチャーや機能的に優れたフライパターンが生み出されましたが、伝統的なキャッツキル・スタイルのフライは、機能一辺倒でないエレガンスを有していると思います。
 これは、私がフライロッドの中でも特にバンブーロッドを好むのと共通するところがあると思います。優れたバンブーロッドは、決して過去の遺物やノスタルジーではなく、機能的に優れるとともに、釣りをより充実したものにしてくれる存在です。

 上記したような利点を生み出すためには、バランスのとれたプロポーションにタイイングする必要があります。次回は、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライのタイイングコツについて書きたいと思います。

2018年12月8日土曜日

Catskill Style Dry Flies(その1)


 今回から数回に分けて、私の好きなフライパターン、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライについて書きたいと思います。

 キャッツキル・スタイル・ドライフライ(以下キャッツキル・スタイル)は、アメリカ東部のニューヨーク州キャッツキル地方で生まれた伝統的なフライパターンの総称です。その多くは、シャンクに垂直に巻かれたコックハックル、ハックルファイバーのテール、ウッドダックやマラードダックのフランクフェザーを束ねたバンチウィングを外観上の特徴としています。
 フライパターンとしては、ライトケイヒル、マーチブラウン、グレイフォックス、アダムス、クイルゴードン、バイビジブルなどが有名です。
 日本では、昔から雑誌やカタログでスタンダード・パターンと称されることが多かったため、今でもこのように呼ぶ人が多いですが、この表現は文字通り「標準的なフライパターン」となり、定義が非常にあいまいですので、このブログではキャッツキル・スタイルと呼ぶことにします。

 キャッツキル・スタイルのフライは、誰でも知っている有名なパターンばかりですが、昔からフライをやっている人でも、もう長い間巻いていない、使っていないという人がほとんどではないでしょうか。まして、最近フライを始めた人は、巻いたことも使ったこともないという人が多いと思います。

 多くの人が、キャッツキル・スタイルのフライは、回転してティペットが縮れる、見えにくい、ドラックがかかりやすい、沈みやすい、今時こんなフライでスレたヤマメやイワナは釣れない、というネガティブなイメージをもっていると思います。

 ところが、正しいプロポーションで巻かれたキャッツキル・スタイルのフライを、適切なタックルで使用すれば、ティペットは全く縮れませんし、良く見え、ドラックがかかりにくく、良く浮き、しかも極めて耐久性が高く、どんなシチュエーションでも通用するとは言いませんが、今でも十分に良く釣れるフライなのです。そして、これらのメリットが、私がこれらのフライが好きで多様する理由です。

 次回からキャッツキル・スタイル・ドライ・フライのメリット、タイイングの注意点、適切なタックルと使い方について、数回にわたり述べたいと思います。

2018年12月1日土曜日

ufm Trout Stinger BORON TSS-64 Ti


 番外編第3回は、ufmウエダのトラウト用スピニングロッド、トラウト・スティンガーTSS-64 Ti、6フィート4インチ、2ピースを紹介します。


 この竿は、本流でのミノーイング用に購入したもので、主にザウルスのブラウニー7cm(フローティングング)との組み合わせで使用しています。ブラウニー7cmは重量が2.5gと非常に軽いのですが、この竿は適度なしなやかさを持っていますので、充分にロングキャストが可能です。


 ウエダのトラウト用スピニングロッドの中で最も上位モデルのサーフェス・トゥイッチャーSTSシリーズは、過剰ともいえるくらい弾性率の高い素材を使用しているため、ロッドの反発するスピードが極めて速く、キャスティングのフィールが良くないのですが、このトラウト・スティンガーは適度な弾性率の素材を使用しているので、比較的しなやかでキャスティングしやすい竿になっています。



 ウエダの竿は細身で比較的柔らかいのが特徴ですが、この竿も同様で本流の太い流れで尺を超えるヤマメ、アマゴを掛けると、やり取りがなかなかスリリングです。
 この竿も含めウエダの竿の欠点は、ガイドの数が少ないことだと思いますが、これも大きな鱒を掛けた時に、竿のパワーを充分に生かしきれない要因になっていると思います。

 ウエダは残念ながら数年前に会社が無くなってしまいました。多くの釣具メーカーが製造拠点を人件費の安い海外に移転するなか、ウエダは最後まで国内で生産を行っており、ブランクの製造に高い技術を有し、竿の仕上げも丁寧で、ユニークな竿を数多く作っていただけに、非常に残念です。