2020年8月29日土曜日

Hardy Sovereign 2000(その3)


 ソブリン2000の最終回では、その先代のモデルであるソブリンと比較してみたいと思います。私のソブリン2000は5番ライン用の#5ですので、ソブリン5/6/7と比較してみます。


 スプール径はともに3インチ(約76mm)で同じです。ラインキャパシティも同じだと思います。ハウス・オブ・ハーディ時代までのハーディのリールは、実際のラインキャパシティよりもバッキングの量が多くカタログに書かれているのが普通でした。そのため、ソブリン5/6/7はその名の通り、7番ラインまで適合することになっていますが、フローティングラインである程度のバッキングラインを巻くことを考えると、5番ラインが適切だと思います。同じサイズのソブリン2000が5番ライン用となっているのは、やはりソルトウォーターでの使用を考慮し、十分なバッキングラインを巻くことを前提にしているためだと考えられます。


 ソブリン2000のディスクノブは、ソブリンに比べ厚みがあります。ディスクノブの中身を見ることはできませんが、ソブリン2000ではドラグを強化するために、ディスクワッシャーの数が多かったり、強いスプリングが内蔵されているためと思われます。
 ソブリン2000のディスクノブには、側面にゴムのOリングが2個装着されており、滑りにくくなっています。ノブのクリックはソブリンよりも細かく、ドラグの強さをより細かく調整できるようになっています。

 ソブリンがフレームを持つアウトスプール構造に対し、ソブリン2000ではフレームレスとなっています。
 ソブリンではウッドの小ぶりなハンドルが装着されていますが、ソブリン2000ではリールを使ったやり取りを想定して、テーパーのついたより大型のものが装着されています。


 ディスクドラグ機構は基本的に同じですが、ソブリン2000ではドッグクラッチの径が大きくなっています。このあたりも、より大型の魚を相手にすることを想定したものと思われます。


 最後に細かい点ですが、ソブリンではスプール背面のプレートの刻印が「PAT APP(特許申請中)」となっているのに対し、ソブリン2000ではイギリスとアメリカの特許番号が記載されていますので、巻き手方向の切り替え機構がソブリン2000の発売前に権利化されていたようです。

2020年8月22日土曜日

Hardy Sovereign 2000(その2)


 ソブリン2000の2回目は、ディスクドラグ機構について書きたいと思います。

 ソブリン2000のディスクドラグは、基本的にソブリンと同じメカニズムです。ドラグの強さはリール背面のドラグノブで調整できるようになっています。ドラグノブには細かいクリックが内蔵されており、ドラグの強さを微調整できるようになっています。
 ドラグノブの上にあるノブは、逆転時のクリックのオン/オフを切り替えるためのもので、これもソブリンと同じメカニズムです。


 クラッチ機構はドッグクラッチタイプで、爪はスプール側に内蔵されており、スプール裏面のノブで右手巻きと左手巻きをワンタッチで切り替えられるようになっています。ハーディはイギリスとアメリカでこの機構の特許権を取得しており、爪が内蔵されたプレートに特許番号が刻印されています。


 本体側の機構は、基本的にソブリンと同じです。スプールシャフトにはボールベアリングが2個装着されています。ディスクパッドはドラグノブ内に内蔵されており、外から見ることはできません。ディスクパッドには、炭素繊維(AVCARB)が使用されています。
 ソブリンのディスクドラグのメカニズム詳細については、以前のブログで紹介しましたので、ご興味のある方はそちらをご覧ください。

 次回はソブリン2000とオリジナルのソブリンを比較してみたいと思います。

2020年8月15日土曜日

Hardy Sovereign 2000(その1)


 今回からハーディのリールの中でもマイナーなソブリン2000を数回にわたって紹介します。

 ソブリン2000はソブリンの後継機種として発売された、当時のハーディのラインナップでは最上位機種のリールでした。ソブリン2000という名前ですが、発売は1990年代の終わりでした。ちなみにソブリン2000が発売後、ソブリンはソブリン2000と区別するため、通称ソブリンゴールドと呼ばれていました。


 ソブリン2000は、ディスクドラグ機構など基本的な設計は、ソブリンを継承していますが、マットブラックのカラーが表しているように、ソルトウォーターでの使用を意識したリールになっています。当時、アメリカを中心に世界的にソルトウォーターでのフライフィッシングが流行しており、エーベルを始めとする新興フライリールメーカーが人気を集めていました。しかし、当時のハーディにはソルトウォーター用のリールがなかったため、ソブリンをソルトウォーター対応にモデルチェンジしたものがソブリン2000の成り立ちだと思われます。


 ソブリン2000は、強力でスムースなディスクドラグを有し、ハーディらしい外観を持った高性能なリールでしたが、あまり人気がなかったようで、短期間で生産終了となってしまいました。当時はイナガキが輸入代理店でしたが、モデル末期(おそらく生産終了後)は大幅な値引きで販売されていました。

 当時のハーディのリールは、最初の生産ロットはシリアルナンバーがリールに記されているものが多く、私のリールにもドラグノブに「357」というシリアルナンバーが記されています。私のリールは、モデル末期のセールで購入したものにも関わらず、シリアルナンバー付きでしたので、ソブリン2000は不人気のため、ファーストロットしか生産されなかったのかもしれません。

2020年8月8日土曜日

ARTIST AFC-60MH(その2)


 アーティストのトップウォーター用グラス・ベイトロッド、AFC-60HMが完成しました。


 グリップも一緒にとのご依頼でしたので、使用されるアンバサダー5000Cに合わせてブライトリバーのチャッカ―・クラシックを取り寄せました。ロッドがグラスの6フィート、ミディアム・ヘビーアクションとなかなかヘビーですので、片手でも両手でも投げられるように少し長めのレギュラーコルクを選定しました。


 トップガイドは、ラインが絡みにくいフジのMNトップです。


 トップガイド以外もフジのMNガイドです。


 バッドの飾り巻きは、スカーレットにゴールドのピン・ラインを3本です。小麦色のブランクにレッドのスレッドの組み合わせは、レナードのグラス・ロッドを連想させます。レッドのスレッドが鮮やかに発色して、華やかな仕上がりになりました。釣り場でも映えると思います。


 ナイト・フィッシングで60cmUPのバスを狙われるとのことでしたので、グリップエンドから50cmと60cmの位置にメジャーリング・ラップを巻きました。

 私が使用しているAFC-50Lに比べると流石に硬いですが、3/4oz以上のルアーを投げて、60cmUPを狙うのであれば、最低限これくらいのパワーが必要かと思います。


2020年8月1日土曜日

ARTIST AFC-60HM(その1)


 依頼を受けてトップウォーター用のベイトロッドを作っています。

 陸っぱりのナイトフィッシングで60cmアップを狙うとのことで、ブランクにはアーティストのグラスロッド、AFC-60MHを選びました。


 スレッドのカラーは朱色を希望とのことで、PROWRAPのナイロンAスレッド、391 Red Fishを使用。ティッピングはPROWRAPのナイロンAスレッド、704 Midas Goldです。


 1回目のエポキシコートが終わった段階です。ブランクが黄土色なので綺麗に朱色が出ました。

 あと2回エポキシを重ねて完成です。