2020年7月26日日曜日

SHIMANO FREESTONE 3(その2)


 今回はフリーストーンの特徴の一つである独創的なドラグ機構について紹介します。

 ディスク・ドラグ付きのリールは、通常本体裏面にドラグの強さを調整するノブが装着されていますが、このフリーストーン・シリーズには上の写真のようにそれがありません。そのため、その外観からはディスク・ドラグが装着されているとは到底思えないのですが、このリールには独自の構造のディスク・ドラグが内蔵されています。


 上の写真はスプールを取り外して裏面を写したものですが、中央の「H」、「L」の切り替えのノブは、なんとドラグの強度を「High」と「Low」の2段階に切り替えるためのものです。一般的なディスク・ドラグのように、ドラグの強さを最弱から最強までワイドレンジで有段階もしくは無段階に調整することはできませんが、トラウト用のリール、特に渓流で使用するリールとしては2段階でも充分ですし、滑り出しが滑らか、バックラッシュしにくいというディスク・ドラグの恩恵を受けることができます。


 ディスク・プレート、ワンウェイ・クラッチ、ドラグ強度の切り替え機構といった全てのメカニズムは、スプールに内蔵されています。私の知る限り、このようなメカニズムのフライリールはフリーストーン以外にないと思いますが、スピニング・リールを始めとして様々なリールを製造している、いかにもシマノらしい独創的なアイデアで、フライリールを専業としているメーカーではとても思いつかない発想だと思います。

 シマノのリールらしく、スプールにはボール・ベアリングが2個内蔵されています。スプール正転時(巻き取り時)は無音、逆転時(引き出し時)はクリック音が出ます。

 フリーストーン・シリーズは、右巻き専用、左巻き専用で販売されていましたが、ワンウェイ・クラッチ(上の図で15番の部品)をひっくり返して装着することにより、巻き手方向を切り替えることができます。私のリールは右巻きモデルですが、ワンウェイ・クラッチをひっくり返して左巻きにしています。


 全てのメカニズムがスプールに内蔵されているため、リール本体は極めてシンプルです。片軸受けのフライ・リールでは、通常本体とスプールシャフトは別部品となっていますが、このリールは削り出しの一体型となっています。

 フリーストーン・シリーズは、一見ハーディーやオービスの伝統的なフライリールの流れを汲んだシンプルな片軸受けリールに見えますが、シマノならではの独創的なアイデアが詰め込まれた、極めて意欲的なリールだと思います。

2020年7月18日土曜日

SHIMANO FREESTONE 3(その1)


 今回は、ちょっとレアといいますかマイナーなリールを紹介します。シマノのフリーストーン3です。

 シマノのフリーストーン・シリーズは、確かフリーストーンブランドで最初に発売されたリールです。後述のように大変意欲的かつ独創的なリールでしたが、舶来志向のベテランフライ・フィッシャーマンには、国産ということで受け入れられず、また入門者にとっては高価だったため、日の目を見ずに消えていったリールです。
 この後発売された廉価版のフリーストーンFVシリーズや、数年前まで販売されていたフリーストーンLAは、お値打ちな価格だったこともあり、それなりに人気があったようです。


 フリーストーン・シリーズは、今回紹介する3~5番ライン用のフリーストーン3、4~7番ライン用のフリーストーン5、6~9番ライン用のフリーストーン7の3種類がラインナップされていました。

 最小サイズのフリーストーン3は、スプール径70mm、自重75g(カタログ値)の大変軽量なリールです。ところが、こんなに軽量なリールにもかかわらず、なんと驚くべきことにディスク・ドラグを装備しています(メカニズムについては、次回のブログで紹介します)。


 リール本体の裏面は、ハーディーやオービスCFOのファンにも受け入れられそうな、大変シンプルな外観ですが、スプールの表面には大変凝った加工がされています。外周2列の穴が貫通しておらず、外側から開けられた穴と内側から開けられた穴が互い違いになっています。


 リール本体とスプールは、他に例をみないくらい薄く仕上げられており、これが軽量化に大きく寄与しているものと思われます。
 いかにもシマノらしい高い加工精度で、スプールのガタも非常に小さくなっています。

 次回は、そのシンプルな外観からは想像のつかない、驚きのディスク・ドラグのメカニズムについて紹介します。

2020年7月11日土曜日

Foam Bass Popper


 バス用にフォーム・バス・ポッパーを巻き(作り?)ました。


 使用したフォームは、ワプシ社のパーフェクト・ポッパーです。これはボディの腹側に切り込みが入っており、そこにフックを差し込むことによりフックを固定するようになっています。


 マスタッドCK74のようなキンクシャンクのフックだと、そのまま差し込んで固定すれば良いのですが、ストレートシャンクのフックの場合は、フックがボディの中で回転しないように、モノフィラメントを使って上の写真のようにあらかじめ回転止めを作っておいてからボディにセットします。これは、バスのフライフィッシングの世界で有名な、チャートリュースポッパーの大田さんが紹介されているタイイング・テクニックです。


 フックをセットしたらエポキシ接着剤でボディを接着し、マスキングテープで固定してエポキシが硬化するのを待ちます。


 エポキシが硬化したら、マーカーを使ってアイなどをペイントします。
 ここまでは工作のような作業ですが、ここからようやくフライ・タイイングらしい工程になります。


モノフィラのウィードガード、コックハックルのテールとハックル、ラバーレッグを取り付ければ完成です。

 テールとハックルは、バーブが長いホワイティングのアメリカン・ハックルやインド・ケープ、チャイニーズ・ケープを使うと良いのでしょうが、鱒用のドライ・フライに使用している昔のホフマンやメッツのコックハックルケープから適切なものを選んで使っています。逆に鱒用のドライ・フライでは使用しない部分が使えるので、廃物利用になって良いと思います。

2020年7月4日土曜日

Kashiyama Rod 7' #4


 久しぶりにお気に入りのフライロッドを紹介します。秋田のバンブーロッド・ビルダー、柏山さんの7フィート、4番です。

 柏山さんの標準モデルは、アクションがティップアクション(ファスト)、セミパラボリックアクション(ミディアム)、バットアクション(スロー)の3種類から、フィニッシュがバーナーフィニッシュのブラウンモデルとオーブンフィニッシュのストローモデルの2種類から選ぶことができます。私の竿は、セミパラボリックアクションのブラウンモデルです。


 セミパラボリックの7フィート、4番の竿は、ペイン97がベースになっており、柏山さんによるとオリジナルのテーパーからバットを少し絞ってあるとのことです。

 セミパラボリックといっても、ギャリソン・テーパーとは全く異なり、どちらかと言えばプログレッシブアクションに分類されると思います。ティップが繊細な全体に細身の竿です。


 フェルールは柏山さんお手製のステップダウン・タイプです。柏山さんはフェルール、リールシートだけでなく、タングステンカーバイトリングのストリッピングも自作されており、ひょっとしたらスネークガイドも自作かもしれません。


 仕上げは非常に丁寧で、計測はしていませんが削りの精度もかなり高そうです。焼き入れも適切で、曲がりも出ません。

 肝心のアクションですが、名竿と言われるペイン97をベースにしているだけあり、非常に素直な使いやすいアクションで、トルク感はそれほどありませんが、渓流で多用する至近距離から中距離まで綺麗なタイトループが気持ちよく伸びていきます。竿全体のテーパーのバランスが良く、意識せずに振っても、テーリングを起こしたりラインスラックが入ることはありません。
 素振りした印象は非常に軽快でロッドスピードの速い竿のように感じますが、実際に釣り場で使ってみると、竿の印象よりも少しゆっくり振った方がラインがしっかりと乗って気持ちよくキャスティングできます。
 20cmくらいのヤマメやイワナでも十分楽しめる、しなやかな竿です。

 驚くべきはその価格設定で、これだけ完成度が高く、仕上げの素晴らしい竿をこんな値段で販売して良いのかと思ってしまうような低価格です。

 バンブーロッドに強烈な個性を求める方には物足りないかもしれませんが、使いやすくて良く出来た高品質な竿をお探しの方には、自信をもってお勧めできる大変良い竿だと思います。