2020年2月29日土曜日

Orvis CFOⅢ(その2)


 CFOⅢの2回目は1989年に限定生産されたゴールドのCFOⅢを紹介します。

 ゴールドのCFOⅢは、このリール以前にも1976年にアメリカ建国200周年を記念してシルバーのモデルと同時に500台ずつ限定生産されたものがあったようです。1989年モデルがシャンパンゴールドに近い、淡いゴールドカラーであるのに対し、1976年のモデルは、もっと濃いゴールドのようです。


 ゴールドカラーのリールは、オーブンフィニッシュのバンブーロッドによく似合うので、私は好きでいろいろと持っていますが、このCFOⅢはDT-4Fを巻いて羽舟さんの竿北岡さんの竿で使用しています。ちなみに羽舟さんも生前はCFOがお好きだったようで、羽舟さんの工房で試し振りをさせていただく際は、いつもCFO(グレイの標準モデル)でした。


 1989年のCFOは未だ鋳造の時代ですが、このゴールドバージョンや1976年のゴールドバージョンは、表面に切削痕が見られ、バーストックからの削り出しで製造されていたようです。鋳造のCFOも最終仕上げは切削加工でしたので、表面処理の違いにより切削痕が見えているだけかもしれません。


 CFOやフェザーウェイトといった、ハーディー製のクリックタイプのリールは、製造された年代によって、クリックの強さに差があり、今回紹介のゴールドモデルは、前回紹介した標準モデルよりもクリックの強さが弱くなっています。

 CFOは機能的にもデザイン的にも非常に優れたリールで私も好きなリールの一つですが、どちらかというと私はハーディーのライトウェイトシリーズの方が好きなので、私が持っているCFOは前回紹介したリールと今回のリールの2つだけです。


2020年2月22日土曜日

Orvis CFOⅢ(その1)


 今回はオービスのCFOⅢを紹介します。

 このリールは、1983年に購入したもので、私が初めて購入したフライ・リールです。
 当時フライフィッシングを始めるにあたり、フライロッドはキャスティングが上手くなってから良いものを購入すれば良いと思い、最初の1本に安価なノクソンを選びましたが、フライリールは1個あれば良いと思っていましたので、最初から良いものを購入しようと考え、一番欲しかったCFOⅢを購入しました。

 当時のCFOⅢは、価格が3万円以上と大変高価で、アブのアンバサダーと同じくらいの値段でした。なぜこんな単純な構造のフライリールが、複雑な機構を持つアンバサダーと同じくらいの値段なのか、疑問に思ったものです。


 CFOⅢは直径が3インチ(約76mm)で、当時日本の渓流のフライフィッシングで標準とされていた4番、5番ラインに適したサイズのため、ハーディーのフェザーウェイトやマーキス4、5と並んで、日本でもっとも人気がありました。

 CFOシリーズをデザインしたのはスタン・ボグダンです。ボグダンのCFOプロトタイプは、以前のブログに書いたように、市販されたCFOとは若干異なるのですが、軽量化のためにスプールの表面と裏面、ボディの裏面に多数開けられた穴、フレームを持たないアウトスプール、つばのついたスプールといった特徴は、製品版のCFOに反映されています。
 フェザーウェイトやマーキスに対し更に軽量であることも、優れた点です。


CFOは機能的に優れているだけではなく、デザインが秀逸なので、オービスのロッドはもちろん、どんな竿に対しても似合います。


 私のCFOⅢにはラインガードが装着されていません。雑誌やカタログで見たCFOⅢにはラインガードが付いているのに、なぜ自分のCFOにはついていないのか、不良品ではないかと当時は思っていましたが、製造時期によってラインガードのついていないものもあったようです。

 CFOシリーズは、最初鋳造で作られており、ハーディーがOEM生産していましたが、1992年にバーストックからの削り出しとなり、ブリティシュ・フライリール社製になります。
 その後、2004年に大きなモデルチェンジがあり、ブラウン・ブロンズカラーの随分雰囲気の違うリールになってしまいました。さらに、最近まで昔のデザインに回帰したアメリカ製(確かエーベルが生産していたと思います)のクリックタイプのCFOが非常に高い値段で販売されていましたが、これも生産中止となり、オービスのカタログからCFOの名前は消えてしまったようです。



2020年2月15日土曜日

Waterworks-Lamson Speedster 1.0


 今回はウォーターワークス・ラムソンのスピードスター1.0を紹介します。

 ウォーターワークス・ラムソンのスピードスターは、現在も発売されているリールですが、私のリールはその初代モデルです。このブログを書くために、ウォーターワークス・ラムソンのウェブ・サイトを久しぶりに覗いたところ、スピードスターは今年モデルチェンジして、現在はスピードスターSという名前になっていました。ウォーターワークス・ラムソンの他のモデルと同様に、現行のスピードスターは大胆に肉抜きされた隙間だらけの格好良いデザインになっていますが、ウォーターワークス・ピューリストを連想させる初代スピードスターのシンプルなデザインもなかなか良いと思います。モダンなバンブーロッドにも、意外と似合います。


 スピードスター1.0は、スピードスターの最小モデルです。3番ライン用のリールですが、私はWF-4Fを巻いて使っています。バッキングは全く巻けませんが、渓流で使用するので問題ありません。4番ラインだと、スピードスター1.5が適切なサイズなのですが、ラージアーバーのため径が大きく渓流用の短い竿には合わないので、1.0を選びました。


 ウォーターワークス独自のディスクドラグは、滑り出しが滑らかで、渓流魚を相手にするには充分すぎるドラグ強度を備えています。
 ピューリストシリーズほどではありませんが、軽量であることも、大きな利点です。

 難点は、最近の他のメーカーのリールと同様に、フットの厚みがあるので、昔の竿ですとリールが装着できない場合もあります。


 ウォーターワークス・ラムソンのリールは、現在発売されているリールのほとんどがそうであるように、CNC旋盤やマシニング・センターを使って、バーストック材から自動で削り出して作製されています。
 この方法は本来精度良く加工できるのですが、現在発売されている削り出しリールのほとんどが、鋳造で製造された昔のハーディーのリールと比べても、スプールとフレームのクリアランスが大きくなっています。これは、おそらくメーカーがコスト(歩留まり、加工効率等)を重視して、公差の大きな設計にしているからだと思います。しかし、ウォーターワークス・ラムソンのリールは、他のメーカーの削り出しリールに比べ、クリアランスが小さく、加工精度が高いのが特徴です。

 ちなみに、鋳造で製造されたリールは、削り出しリールよりも精度が低いと思われがちですが、ハーディ・ブラザーズ時代のハーディ・リールは、非常に高い精度で加工されています。これは、鋳造といっても、ある程度の形状まで鋳造で作製した後、職人が手動で旋盤を使って最終的な形状に仕上げていたためです。

2020年2月8日土曜日

Waterworks Purist ULA P1 Japan Special


 今回もウォーターワークス、ピューリストULAの中から最小モデル、P1を紹介します。

 P1の標準モデルは、前回紹介したP2と同じくシルバーグレイのスプールにブラックのフレームというカラーリングでしたが、今回紹介するP1は確か2004年に日本で300台限定販売されたもので、マホガニーレッドのスプールにグレイのフレームとなっています。重量はカタログスペックで74gと超軽量です。


 P1はWF-3Fくらいまで巻けるので当時日本で大変人気があり、本国のアメリカで生産中止になった後も、日本向けに何年か継続して生産されていました。日本向け限定生産のジャパンスペシャルは、このリール以降も何度か発売されました。


 このリールはフリースのヌードル用に購入したもので、ラインは当時フリースが好んで使用していたコートランドの444クリアクリークのWF-3を巻いて使用していました。

 ヌードルは8フィート2、3番の大変しなやかで軽量な竿なので、軽量なP1との組み合わせは非常にバランスが取れています。ヌードルはもっぱらミッジの釣りに使用していたのですが、P1はクリックドラグながら、逆転時のクリックの強さがちょうどよく、バックラッシュしにくいため、繊細なティペットを用いるミッジの釣りに最適でした。


 レッドというフライリールとしては奇抜なカラーも、フリースの竿と組み合わせると意外と違和感なく、アバンギャルドなフリース竿と良くマッチしていると思います。

 ウォーターワークス/ラムソンは、今も先進的なリールをリリースし続けていますが、ピューリストULAシリーズは、その原点となるリールで、ひと昔前のリールながら、今でも全く古さを感じないリールだと思います。


2020年2月1日土曜日

Waterworks Purist ULA P2


今回はウォーターワークスのULAピューリストP2を紹介します。

 ULA(Ultra Large Arbor)ピューリストシリーズは、ウォーターワークス創業当初のモデルで、独自のクリック機構と軽量化のための大胆なデザインを有する大変独創的なリールです。

 それまでのリールのクリック機構は、ハーディのチェック機構に代表される、金属のバネと爪、ギアを使用したものでしたが、ピューリストシリーズでは樹脂のパーツがラージアーバーのスプール内周に加工された凹凸に引っ掛かる大変シンプルな構造になっています。クリックの強さは、六角ナットで固定された樹脂パーツを動かすことにより、調整できるようになっています。


 フレームはリールフット、リールシャフトを取り付けるための最小限の体積しかなく、リールシャフト等のパーツにチタン合金を用いるなど、徹底した軽量化が図られており、4番、5番ライン用のP2で僅か78g(カタログ値)の重量しかありません。


 従来のフライリールの常識から大きく外れた、奇抜とも言ってよいデザインですが、意外なことに、最新のグラファイト・ロッドだけでなく、ビヤーネ・フリースなどのモダンなバンブーロッドにも似合います。私はP2にWF-4を巻いて、朝間ロッドの7フィート6インチ、4番で使用していました。
 フリース自身も、バンブーロッドといえどもリールは軽量であればあるほど良いと言っており、ULAピューリストシリーズを自身の竿と組み合わせて良く使用していました。

 ティップアクションや高番手で長めのバンブーロッドには、重心がグリップ近くに来るように重めのリールを組み合わせた方が、疲れなくて良いのですが、パラボリック・アクションや得に軽量に作られたバンブーロッドでは、できるだけ軽いリールを使った方が、バランスが良いように思います。


 ULAピューリストシリーズは、極めて軽量であり、ラージ・アーバーのためラインの巻き取り速度が速く、見た目によらず頑丈と、機能的には大変優れていますが、スプール幅が非常に広いので、巻き取ったラインが偏りやすいのが弱点です。
 また、このリールに限らず、ウォーターワークス・ラムソンのリールは、リールフットが厚いため、古い竿など竿によっては装着できない場合もあります。

 ULAピューリストシリーズは、廃番になって久しいですが、その後のフライ・リールのデザインに新しい流れ作った名作だと思います。