2020年4月25日土曜日

Abel BIG GAME Pt.5(その2)


 前回に引き続き、エーベル ビッグ・ゲームPt.5について書きます。今回はそのドラグ機構についてです。

 ビッグ・ゲームシリーズは、コルク・ディスクを使用した強力かつ滑り出しの滑らかなディスク・ドラグ機構を特徴としています。
 ドラグの強さはリール本体裏面のノブを回転することにより、フリースプールの状態からフル・ロックまで調整可能です。ドラグの強さはノブを約3回転で調整するようになっているので、細かく調整することができます。ノブにはボールを使ったクリックが内蔵されています。


 スプールを取り外す場合は、最初にドラグノブの中心にあるネジを取り外します。ネジはコインを使って取り外せるようになっており(柔らかい1円玉や5円玉を使用するのが良い)、これは万が一釣り場でトラブルが発生した時に工具がなくても対処できるように配慮されたものと思われます。ネジを外してドラグノブを緩めると、スプールセンターのシャフトが抜けて、スプールが外れます。

 ドラグ機構は、コルクが張り付けられたディスク・プレートと、逆転防止の爪からなるシンプルな構造です。巻き取り時は爪が可動することによりディスク・プレートと一緒にスプールが回転できますが、逆転時は爪によりディスク・プレートの歯車がロックされますので、ディスク・プレートが回転できなくなり、ディスク・プレートとスプールの間の摩擦力でドラグがかかる仕組みです。摩擦力を発生させるための加重は、スプール・シャフトが貫通するように装着されたコイルバネで発生させています。

 したがって、正転時は爪と歯車でクリック音が発生し、逆転時は無音です。ビッグ・ゲームシリーズがモデルチェンジしたスーパーシリーズでは、逆転時もクリック音を発生できるような機構が追加されていました。

 私のリールは、左手巻きもしくは右手巻きのどちらか専用で発売されていましたが、爪をひっくり返して逆向きに取り付ければ、巻き手を変更することができると思います。


 ビッグ・ゲームシリーズの強力かつ滑り出しの滑らかなディスク・ドラグや、耐蝕性に優れたアルマイト処理は、鱒を釣るにはオーバースペックだと思います。しかし、いかにも精密加工屋さんが設計、加工したと思える各パーツや、少ない部品で実現された優れたディスク・ドラグ機構、高い加工精度など、機械好きにとって非常に魅力的なリールになっています。

2020年4月18日土曜日

Abel BIG GAME Pt.5(その1)


 今回はエーベルのビッグ・ゲームPt.5(0.5)を紹介します。

 エーベルはアメリカの比較的新しいリールメーカーで、もともとは航空機の部品などを作っていた会社のようです。強力かつ信頼性の高いディスク・ドラグシステムと高い加工精度、耐蝕性に優れた表面処理が特徴で、90年代に日本でも一世を風靡したリールです。
 上記の特徴からも明らかなように、もともとはソルトウォーター用のリールメーカーとしてスタートしましたが、TRシリーズというクリック&ポールのトラウト・リールも発売しています。


 ビッグ・ゲームシリーズは、その名の通りコルクのディスクプレートを使ったディスク・ドラグを装備したソルト・ウォーター用のリールですが、トラウト用のサイズもラインラップしていました。一番小さいサイズが2、3番用の0で、今回紹介するPt.5は4、5番用の2番目に小さいサイズです。スプール径は3インチ(約76mm)です。


 元々ソルトウォーター用のリールだけあって、非常に頑丈な作りで、重量の実測値は152gと大変重いリールです。そのため、私はフリースのアンチグラビディの5番と組み合わせて使用していました。


 ビッグ・ゲームシリーズはその後、ディスクドラグなど基本構造はそのままにラージ・アーバーのスーパーシリーズにモデルチェンジします。

2020年4月11日土曜日

Tom Morgan Rodsmiths Fiberglass 7' #4(その1)


 トム・モーガン・ロッドスミスス(以下TMR)に注文したブランクがモンタナから届きました。

 TMRはグレン・ブラケットとともにウィンストンのオーナーであったトム・モーガンがウィンストンを退社後に立ち上げたロッドメーカーで、トム・モーガンの没後はマット・バーバーがオーナーとなりメーカーは存続しています。

 TMRのグラスロッドは、トム・モーガンがグラスロッドを開発していることをTMRのウェブ・サイトで公開したときから手に入れないと思っていた竿で、今回ようやく念願かなってブランクを入手しました。
 私がロッド・ビルディングを始めた理由の1つが、TMRとステファン・ブラザーズのグラスロッドを組み立ててみたいと思ったことです。

 ブランクが届いたので、バーバー氏にメールを送ったところ、なんと新型コロナウイスるの影響でショップを閉鎖しているとのこと。注文が遅れれば、しばらく入手できないところでした。


 トム・モーガンは、ウィンストン在籍時にグラスロッドのストーカー・シリーズを開発したことでも知られていますが、TMRのグラスロッドは、そのストーカー・シリーズを現代の技術でリファインしたものです。ブランクカラーもストーカー・シリーズを彷彿させる深いワインレッドです。


 私が今回入手したブランクは、7フィートの4番です。まだブランクの状態ですが、似たようなスペックのステファン・ブラザーズの7フィート3インチ、3、4番と比較すると、どちらもプログレッシブ・アクションですが、TMRの方がよりティップ側から曲がり始めます。
 どちらもグラスロッドの中では軽量なブランクですが、ステファンの素材がSグラスであるのに対し、TMRはEグラスを使用していますので、やや重量があります。大変シャープながらしやなかなステファンに対し、TMRは4番のグラスロッドとしてはやや硬めです。私はヤマメやイワナ相手でもこれくらいで良いと思いますが、柔らかい竿をお好みの方には、ジャパンスペシャルの6フィート9インチ、3番と7フィート3インチ、3番が用意されています。

 製作の様子や使用したインプレッションは、引き続きブログで紹介させていただきます。

お知らせ:トム・モーガン・ロッドスミススのグラスブランクを使ったカスタムメイド・ロッドにご興味のある方は、yoshiharu.rod@gmail.comまでお問合せください。



2020年4月4日土曜日

SMITH Marryat MR(その4)MR7


 マリエットMRの最終回は、最小モデルのMR7を紹介します。

 MR7の直径は68mmですので、ハーディーのマーキス4よりもほんの少し小さいサイズです。MR7.5との比較は下の写真の通りです。リールの幅はMR7.5と同じです。径が小さい割にワイドスプールですので、カタログ上ではWF-5Fまで巻けることになっています。私はDT-3Fを巻いて使用しています。


 最小モデルながら、マリエットMRシリーズ共通のディスクドラグを装備しています。ディスクドラグ付きでも重量は94g(カタログ値)にとどまっています。


 残念なことに、現在MR7はマリエットMRシリーズのラインナップの中から消えているので、メーカー在庫がもうなくなったようです。小売店の在庫を探すのも難しいと思います。

 スミスはかつてはルアー(バス)と同じくらいフライにも力を入れていて、オリジナルのフライロッドもラインナップしていましたし、オリジナルのバイスも販売していました。マテリアルや完成品フライの品揃えも充実していました。今では数種類のフライリール(これらも生産中止で在庫販売のみかもしれません)と数種類の小物類、マテリアルを扱ってるだけで、往年のスミスを知る者には寂しい限りです。

 マリエットMRのリールフットには、MADE IN JAPANと誇らしく刻印されており、如何にも日本製らしい精工で丁寧な作りのリールですが、釣具業界に限らず、日本でものづくりをするのが今や難しくなっているのを、このリールが象徴しているように思えます。