2022年7月30日土曜日

Ijuin-Rod Yomogi 7'11" #5, Sakura 7' #3(その1)

 

 鹿児島のIjuin-RodからYomogiとSakuraのブランクが届きました。Yomogiは7'11" #5 4pc、Sakuraは2本とも7' #3 3pcです。

 Yomogiの7'11" #5はYomogiの7' #3と異なり、ファストテーパーのバットのしっかりしたプログレッシブ・アクションの竿で、開けた川でニジマスを釣るのに良さそうな竿です。
 Sakuraの7' #3はこれもYomogiの同じスペックの7' #3とは全く異なり、ファストテーパーのバットのしっかりしたプログレッシブ・アクションの竿です。7' #3ですので、日本の渓流でヤマメやイワナを釣るための竿ですが、伊集院さんがおっしゃっていた通り、誰でもキャスティングしやすい竿になっています。

 Yomogi 7'11" #5とSakura 7' #3のうちの1本は伊集院さんからのオーダーで、竿が完成したらIjuin-Rodから販売予定です。Sakura 7' #3のもう1本はYoshiharu Rodsの展示販売用にする予定です。
 McFarland Parabolicの作製がひと段落したら、これらの竿の製作に取り掛かる予定です。



2022年7月24日日曜日

McFarland Spruce Creek Parabolic 7'2" #4(その8)

 

 Yoshiharu Rodsのオリジナルスペックロッド、McFarland Spruce Parabolic 7フィート2インチ、4番、4ピースのオーダー品の最初の2本が完成しました。うち1本は試作品と同じ標準仕様(上の写真の下の竿)、うち1本(上の竿)はお客様の特注仕様です。


 標準仕様はラス・ピークタイプのリールシート一体型の先端巻き上げのシガーグリップに、REC社のギャリソン・タイプのニッケル・シルバー、ポケット&リングのリールシート金具です。長さは標準のコルク17個、約215mmですが、最大径はお客様のリクエストにより細めの22mmです。
 もう1本の特注仕様は、昔のウィンストンによく似たハーフ・ウェルズのグリップに、お客様持ち込みのStrubleのD-1リールシートです。アルミのワインディング・チェックとフック・キーパーもお客様の持ち込みです。
 どちらも竿もバットエンドから30.3cm(尺)の位置にメジャーリング・ラップを巻いています。


 標準仕様の竿のストリッピング・ガイドはMildrumのSRMC、特注仕様はこれもお客様持ち込みのメノウガイドです。
 標準仕様の竿のスレッドはGudebrodのナイロンAのSunburst、特注仕様は極細シルクスレッドを使った透明仕上げにシルバーのオール・ティッピングです。

 McFarland Spruce Creek Parabolic 7'2" #4のブランクを使ったカスタム・ロッドにご興味のある方は、yoshiharu.rod@gmail.comまでお問合せください。初回ロットは全て売り切れましたが、セカンドロットのブランクを製作中です。


2022年7月16日土曜日

島崎憲司郎「水生昆虫アルバム 新装版」

 

 前回のブログで島崎憲司郎さんの「水生昆虫アルバム」を紹介しましが、今回は同じ本の「新装版」を紹介します。

 前回紹介した「水生昆虫アルバム」は初版のハードカバーですが、「新装版」は初版発行の8年後の2005年に発行されたソフトカバーで、現在新品で入手可能なのはこの「新装版」になります。ソフトカバーになってお求めやすい値段になっています。ちなみにハードカバー版は、第2刷まで発行されたようです。

 新装版と初版の中身の違いは、初版発行後に学名が変更された水生昆虫について、注記、新称が加えられているだけなのですが、初版を所蔵している私が敢えて新装版も購入した理由は2つあります。1つは初版はハードカバーのため、物凄く重いことです。初版は購入後何度も読み返しましたが、釣りに行った後やフライを巻いていて気になった時に重い初版を本棚から引っ張り出してページをめくるのは少々面倒です。300ページ近くある本なので、新装版のソフトカバーでもそれなりの重さですが、初版に比べると気軽に読めます。私は新装版入手後は、初版は保存版として押し入れに保管して、新装版を本棚に並べています。

 もう1つの理由は、新装版に別刷りの付録として付いている「シマザキワールド11」です。「シマザキワールド」はフライの雑誌に不定期に連載されている読み物ですが、「シマザキワールド11」はこの本を購入しないと読むことができません。
 「シマザキワールド11」はA2サイズ(たぶん)の両面印刷で、「シマケンコイル」や「「シマケンノット」といった、島崎さんオリジナルのアイデアが紹介されています。表面が島崎さん本人による文章による解説、裏面が島崎さんの手書きのイラストによる解説となっています。A2サイズの両面印刷といっても、その中身は物凄く濃く、この付録だけでこの本を購入するだけの価値があると思います。
 私は渓流でニンフの釣りをしないので、シマケンコイルは管理釣り場でしか試したことがないのですが、非常に独創的で理に適った実用的なアイデアです。

 水生昆虫の知識がなくてもフライフィッシングは十分楽しめるのですが、知識があればより広く、深くこの釣りを楽しむことができます。この本に書かれている内容は実際に自分で体験して初めてその意味が理解できる類いのものですので、経験を積めば積むほどその価値が理解できると思います。また、水生昆虫の図鑑としてもこれまでになかったライブ感覚溢れる素晴らしい内容になっていますので、初心者の方からベテランの方まで値段以上の価値のある大変お買い得な本だと思います。

2022年7月9日土曜日

島崎憲司郎「水生昆虫アルバム」


 今回のお気に入りの本の紹介は、島崎憲司郎さんの「水生昆虫アルバム」です。

 島崎憲司郎さんと言えば、TMCフックのデザイナーとして、マシュマロ・パターンをはじめとする革新的なオリジナルフライの考案者として、ドライシェイクやフライウィング、ホットワックスといったフライ用品、タイイングマテリアルの考案者として、フライ・フィッシングを趣味としている方なら誰もがご存知のフライ・フィッシャーマンで、フライの雑誌やフライの雑誌社から発行された単行本などに多くの優れた文章を寄稿されていますが、意外なことにこの「水生昆虫アルバム」が今のところ唯一の著書です。

 この本の初版が発行されたのは1997年ですが、フライの雑誌にこの本の出版が発表されてから実際に発行されるまで随分と時間がかかり、私も当時未だか未だかと心待ちにしていたのを覚えています。そして遂に発売されたこの本は、予想を大きく超えるボリュームといくつかの新たな概念を提示する画期的なものでした。

 この本はフライの雑誌に連載されていた「水星昆虫アルバム」をまとめたものですが、単行本としてまとめるのにあたり、第一部(Part 1)が新たに書き下ろされており、(1)イマージング・ガスに基づくイマージャーの分類、(2)羽化の形態によって分類したハッチ・コード、(3)水面と昆虫の絡み方によって分類したBFコード(Basic Floatation Code)という、フライ・フィッシャーマンの視点でフライをデザインする際に極めて重要な3つの分類が示されています。

 第二部(Part 2)は、フライの雑誌に連載されていた「水生昆虫アルバム」を加筆してまとめたもので、日本の渓流や湖でポピュラーな23の水生昆虫が、多くのカラー写真とともに紹介、解説されています。その写真は昆虫の単なる生体写真ではなく、一体どうやって撮影したのだと思うようなハッチの瞬間の写真であったり、ライブ感覚に溢れる釣り場での現場写真の数々です。水生昆虫の写真も、それまでの水生昆虫の本によくあったスタジオで撮影したようなものとは異なり、現場で撮影されたものが多く、屋内で撮影されたものでも自然光で見るのに近い色調が再現されているので、我々が実際の釣り場で目にするのに近いリアルな写真となっています。
 また、各水生昆虫の頁は、始めに見開きでハッチの形態をBFコードとともに示したイラスト、ハッチチャート、各ステージ(カゲロウであれば、ニンフ、ダン(雌雄)、スピナー(雌雄))の実物大のイラストと実物大のフックのイラストが掲載されており、この2ページだけでも大変な情報量です。

 日本の渓流で大変ポピュラーで重要な春の代表的な水生昆虫であるオオクママダラカゲロウが掲載されていないのが個人的には唯一残念ですが、世界的に見てもこれまでになかった画期的な内容の本であり、フライ・フィッシャーマンのための水生昆虫の書籍としては、今後これ以上の本は発売されないのではないかと思います。

 島崎さんの書籍としては、第二弾としてフライの雑誌社から「シマザキ・フライズ」が発行予定ですが、これも例によって発行が遅れています。近いうちに発行予定のようですが、間違いなく期待を裏切らない、いや想像を遥かに超えるびっくりするような内容の本になるのではないかと楽しみにしています。

2022年7月2日土曜日

谷田一三、野崎隆夫、田代忠之、田代法之「CADDIS トビケラとフライフィッシング」

 

 今回のお気に入りの本の紹介は、田代兄弟ら共著の「CADDIS トビケラとフライフィッシング」です。

 以前のブログでアメリカで出版されたカディス(トビケラ)の本として、ゲーリー・ラフォンテーンの「Caddisflies」、カール・リチャーズらの「CADDIS SUPER HATCHES」を紹介しましたが、日本で書かれたカディス専門のフライ・フィッシングの書籍としては、今回紹介する田代兄弟らの著作が私が知る限り唯一だと思います。
 共著者の谷田一三氏、野崎孝雄氏は、共に水生昆虫の研究者として著名な方で、水生昆虫好きのフライ・フィッシャーマンには「日本産水生昆虫検索図説」等の専門書の著者としてお馴染みの方も多いと思います。

 この本では釣り場でお馴染みのカディスから、そうでない珍しいものまで、実に50種類のカディスが1種類ずつそれぞれ見開きで紹介されており、左のページにアダルト(側面と腹面)、ピューパ、ラーバのカラー写真、それぞれの特徴、生態と生息場所、分類と分布が、右側のページにアダルト、ピューパ、ラーバそれぞれを模したフライの写真とマテリアルが掲載されています。
 おそらく日本の釣り場で見かけるカディスのほぼ全てが網羅されていると思いますので、この本が1冊あれば釣り場で見かけたカディスがどんな名前でどんな生態なのか調べることができると思います。

 田代兄弟の著作としては、最初に出版された「水生昆虫とフライフィッシング」、「タシロニンフの世界」に次いで3冊目のものになります。「水生昆虫とフライフィッシング」では、カゲロウを中心に水生昆虫のカラー写真(カゲロウではニンフ、ダン、スピナー)とそれを模したフライが掲載されていますが、こちらは残念なことに写真がイマイチで実際に釣り場で目にする水生昆虫の色やイメージと違って見えます。それに対し、この本のカディスの写真は屋内の撮影ですが、比較的色調などイメージに近いものになっています。
 フライの写真は、フライロッドやフライリール、草木、石などと一緒に撮影した凝ったものになっており、この写真を鑑賞するだけでも楽しめると思います。

 フライのマテリアルには、当時この本の発売に合わせてノリエから発売されていた「タシロカディスダブ」というダビング材が使われています。「タシロカディスダブ」はなぜかすぐに発売中止になり、代わりにティムコから「TASHIRO-R.S.C.DUB」というダビング材が発売されていましたが、こちらも随分前に廃番になっています。

 この本は平成3年(1991年)に発行されたのですが、私は当時大学生だったので大学生協で予約して購入したのを覚えています。当時13,000円もしたので学生の私には大変高価な書籍でしたが、ほぼオールカラーで内容的にも十分それだけの価値はあると思います。