2022年3月26日土曜日

Gary LaFontaine 'CADDISFLIES'

 

 今回はゲーリー・ラフォンテーンの名著、カディスフライズを紹介します。

 ゲーリー・ラフォンテーンと言えばスパークル・ピューパの考案者として有名ですが、私がゲーリー・ラフォンテーンの名前を初めて知ったのもやはりスパークル・ピューパで、佐藤成史さんが書かれた本でした。この本を購入した一番の目的も、ゲーリー・ラフォンテーンが巻いたオリジナルのスパークル・ピューパがどんなものか知りたかったためです。

 この本にはスパークル・ピューパ以外にもゲーリー・ラフォンテーンが巻いたカディス・パターンが数種類掲載されているのですが、どのフライも取り付けられているマテリアルの量が少なくなんとも貧相な見た目で、最初に見た時は少し驚いたのですが、このオーバードレッシングでないところが、ハッチ・マッチャーとして効果的なのだろうと思います。

 この本は、カディスのイミテーションフライのタイイングと釣り方について書かれた第一章と、カディスの生物学について書かれた第二章に分かれており、ページを捲り始めると直ぐにフライパターンとタイイングについて書かれたページが目に飛び込んで来ますので、釣り人目線の嬉しい構成になっています。フライタイイングだけでなく、ラーバ、ピューパ、アダルトそれぞれの釣り方についても、詳しく紹介されています。
 第二章はタイトルの通りかなり学術的な内容になっていますが、カディスの分類だけでなく、イエローストーン・リバーやヘンリーズフォークなど有名河川でどの種のカディスがいつハッチするかといったハッチ・チャートも掲載されています。

 カラー写真が少ないのが少し残念ですが、アメリカでカディスについて書かれた書籍としては、今でも最も詳しく優れた本だと思います。

 ゲーリー・ラフォンテーンの著書としては、この本とこの本の後に出版された「ザ・ドライフライ」が有名ですが、「ザ・ドライフライ」は東知憲さんの翻訳本の出版プロジェクトがクラウド・ファンディングで進んでいます。一口11,000円から支援可能で、プロジェクトが成功した場合は本書1部の郵送に加え本に支援者の名前が掲載されます。
 先日3月10日には支援を募るため、島崎憲司郎さん、黒石真宏さん、東知憲さんのトークライブがYouTubeで配信されました。録画したものはYouTubeで見ることができます。
 私もこのプロジェクトが成功し、「ザ・ドライフライ」を日本語で読める日が来るのを楽しみにしています。4月25日が支援の締切りですので、ご興味のある方は是非ご支援ください。

2022年3月19日土曜日

CF Burkheimer Zenith 8'3" #3-4-5(その2)

 

 CF バークハイマーZenithの2回目は、本家ラス・ピークZenithの同スペックモデルとの比較を書きたいと思います。

 この2本の竿は、長さが8フィート3インチ、ライン番手が#3-4-5番、継ぎ数が4ピース、素材がグラファイトと全く同じです。バークハイマーのZenithはラス・ピークのZenithを再現したものなので、外観はラス・ピークを模したものとなっていますが、ディテールは異なります。


 グリップはどちらもリール・シート一体型の先端巻き上げのシガーで、同じような形状ですが、ラス・ピークが全長250mmとかなり大ぶりであるのに対し、小振りの標準的なサイズになっています。リール・シートはどちらもポケット&リングですが、金具の素材がラス・ピークがアルミに対し、バークハイマーはニッケルシルバーです。
 フェルールはどちらも差込み長さが長めのスリーブ・オーバーですが、ラス・ピークの方がさらに長くなっています。


 バークハイマーのラッピングはラス・ピークを模したものになっていますが、飾り巻きのスレッドの色がラス・ピークがオレンジに対し、バークハイマーはゴールドです。ラッピングはラス・ピークの方が丁寧で綺麗な仕上がりです。


 バークハイマーZenithのアクションは、本家ラス・ピークのプログレッシブ・パラボリック・アクションを良く再現していると思いますが、やはりブランクのグラファイト素材が新しいため全体に細身で、ラス・ピークが2-3/8ozに対し1-5/8ozとかなり軽くなっています。

 実際にキャスティングしても、バークハイマーの方がロッド・スピードが速く、キャスティングのテンポは早くなります。どちらの竿も私は5番ラインが一番適していると思いますが、ラインの乗りはラス・ピークの方が良く、竿全体がラインを飛ばしてくれる感覚があります。バーク・ハイマーは、例えばサイエンティフィック・アングラーズのラインだとフリークエンシー・ブーストのような0.5番手重めのラインを乗せると良いかもしれません。
 どちらの竿も、至近距離から遠投までラインの長さによらずスムーズなキャスティングが出来ますが、キャスティングの気持ち良さ、容易さという点では、バークハイマーは本家ラス・ピークにやはり一歩及ばすという印象です。

 バークハイマーの昔の竿は、もう1本所有している7'5" 3-4-5 もそうですが、ラス・ピークのアクションをなかなか良く再現しており、また仕上げもラス・ピークには及ばないものの、いかにもカスタムロッド・メーカーらしい仕上がりで良かったのですが、現在のものは質の良いパーツを使って小綺麗ではあるものの、魅力を失ってしまったように感じます。
 同じことは、ウィンストンやスコット、オービス、トーマス&トーマスなど、どのメーカーにも当てはまることですので、仕方のないことなのかも知れません。

2022年3月12日土曜日

CF Burkheimer Zenith 8'3" #3-4-5(その1)

 


 新しい竿を入手しましたので、久しぶりに竿の紹介です。CFバークハイマーのグラファイト・ロッド、Zenith、8フィート3インチ、#3-4-5番、4ピースです。

 以前のブログでも書きましたが、このモデルは実は私にとっては曰く付きの竿です。彼此25年ほど前の話になりますが、当時私はこの竿と全く同じ仕様の竿を、ケーリー・バークハイマーに注文しデポジットを払ったのですが、その後連絡がつかなくなり、結局手に入れることができませんでした。そのため、いつか機会があればこの竿を入手したいと思っていましたので、今回その念願がようやく叶ったというわけです。

 ケリー・バークハイマーは、伝説のカスタムロッド・ビルダー、ラス・ピークの後継者ですが、この竿はラス・ピークのZenithを再現したモデルとなっており、グリップやリールシート、ラッピング、ラス・ピークのZenithの特徴であるラッピング後の全塗装と言った外観上の特徴だけでなく、アクションもラス・ピークを再現したものになっています。


 リールシートは、グリップ一体型のコルクのフィラーで、ニッケルシルバーのポケット&リングです。フェルールはスリーブ・オーバーです。


 グリップ先端はスレッドを巻き上げてあり、ピン・ラインが3本の飾り巻きもラス・ピークのZenithと同じパターンです。ガイド・ラッピングにピン・ラインが1本入るのも、ラス・ピークと同じです。ただし、ラス・ピークのZenithが、ブラックのスレッドにオレンジのピン・ラインであるのに対し、ゴールドのピン・ラインとなっています。ストリッピング・ガイドはゴールド・リングのおそらくサーメット、スネーク・ガイドとトップ・ガイドはゴールドで、ここはラス・ピークと異なります。


 実は私はこの竿と同じ長さ、同じ番手、継ぎ数も同じ4ピースのラス・ピークのZenithを所有していますので、次回は試し振りの結果も含めて、2本の比較について書きたいと思います。

2022年3月5日土曜日

Graywolf Trout Smiths 8' #4(その2)

 

 Graywolfのグラスロッド、Trout Smiths 8フィート、4番、4ピースが完成しました。


 グリップはいつものラス・ピークを小振りにしたタイプではなく、先端近くに膨らみを持たせた、トーマス&トーマスタイプのシガーにしています。グリップの長さは、竿が8フィートですので、少し長めのコルク11個分の142mmにしています。最大径は23.5mmです。


 リールシートはベリンジャーの旧タイプのニッケルシルバー、キャップ&リングです。


 グリップ先端はスレッドを巻き上げ、ダークブラウンのスレッドにゴールドのピン・ラインを3本入れています。ロッド・エンドから30cmの位置にメジャーリング・ラップ付きです。


 フェルールはスリップオーバー・タイプです。

 早速ラインを通して試し振りしてみました。この竿のブランクの素材はロー・モデュラスのEグラスですが、非常に肉薄になっているため、8フィートの長さを感じさせない軽くて軽快な竿です。極めて現代的なプログレッシブ・アクションで、癖のない素直なアクションなので、至近距離から遠投まで非常にスムーズなキャスティングが可能です。4ピースですが、マルチピースのネガは全く感じません。極めてスムーズなアクションです。最近のグラス・ロッド、グラファイト・ロッドのマルチピース・ロッドは本当によく出来ていると思います。
 テンポの速いキャスティングを好まれる方、キャスティング距離が10m以上の中距離以上をメインで釣りをされる場合は、標準的な4番ラインで良いと思いますが、私の印象ではサイエンティフィック・アングラーズのラインですと、フリークエンシー・ブーストのような0.5番手重めの4番ラインがマッチしていると感じました。
 
 ほぼ同じスペックのステファン・ブラザーズの8フィート#3、4番のグラス・ロッドとの比較を述べたいと思います。こちらはラインを通して振っていないのであくまでも素振りやベンディング・カーブの比較になりますが、ステファンに比べてTrout Smithsの方がやや硬めです。ステファンの方がファスト・テーパーでバットはかなり太いのですが、ステファンの方がティップは良く曲がります。ステファンはヤマメ、イワナを釣っても楽しめそうですが、Trout Smithsはどちらかというとニジマス向きのように感じました。
 ステファンはハイモデュラスのSグラス、Trout SmithsはローモデュラスのEグラスなので、Trout Smithsの方が重くてスローなブランクを想像していましたが、肉薄のブランクで非常にうまく設計されていますので、シャープで軽いブランクになっています。

 このTrout SmithsのブランクはGraywolfのオリジナルですが、Ben's of HollandのBenno Bronの製作になります。日本の渓流向けのモデルとしては、他に7フィート3番があります。
 また、GraywolfのShane Gray自身もブランクを製作できるようになりましたので、Shane製作による新しいモデルも開発中のようです。

 ステファンやマクファーランドのブランクに比べると値段も手頃なので、お求めやすい価格でカスタム・ロッドを製作可能です。
 Trout Smithsのブランクを使ったカスタム・ロッドにご興味のある方は、yoshiharu.rod@gmai.comまでお問い合わせください。お好みの仕様でカスタム・メイドいたします。