2019年4月27日土曜日

Red Fox


 ライト・ケイヒル、グレイ・フォックス、マーチブラウンといったキャッツキル・スタイル・ドライ・フライのボディには、もともとはレッド・フォックスのファーが使用されていました。先日、このレッド・フォックスのスキンを入手しました。

 購入先は、皆さんご存知、フライ・タイヤ―備前貢さんのB's Fly Worksです。
 備前さんがブログに書かれているように、オリジナルのキャッツキル・ドライ・フライには、レッド・フォックスのお腹のファーをボディ・マテリアルとして使用するのですが、今回購入した顔と足のスキンにも、ぴったりな色調のファーが生えています。


 このあたりは、備前さんのブログに作例つきで詳しく書かれていますが、ライト・ケイヒルにぴったりなクリーム色から、グレイ・フォックスのややグレーがかったクリーム色、マーチ・ブラウンの小麦色まで、フライに応じて選択することができます。
 ファーの根元のグレイも、グレイ・ウルフやアダムスなどに使えそうです。


 私はフライを巻く際に、必ずしもオリジナルのフライに使用されていたマテリアルを使用しないといけないということはないと思いますし、そういうこだわりもありません。ウェットフライやサーモンフライなど、今ではオリジナルのマテリアルが入手困難な場合もあります。
 ドライ・フライのボディなどは、動物のファーを用いるよりも、ポリプロピレン等の化学繊維のダビング材を用いた方が、吸水性がなくて、比重も軽く、機能的に優れていると思います。しかし、化学繊維のダビング材を用いるよりも、ナチュラルのファーを用いた方が、より生命感が出るように感じます。

 話は少しそれますが、ハーズ・イヤーや、オポッサム、ラビットなど、ナチュラルのファーをスキンから切り取って袋詰めにしたダビング材が市販されています。レッド・フォックスのダビング材というのは、見たことがありませんが、これらのファーについては、ダビング材として市販されているものよりも、スキンで購入した方が、手間はかかりますが、品質も優れており、フライの仕上がりも良くなります。ハーズ・イヤーなどはその典型です。


 野生動物の毛皮を所詮は趣味でしかない毛ばりの材料として使用していると、動物愛護団体の方から睨まれそうですが、フライを巻くのに使用する毛皮の量など、マフラーやコートに使用される量に比べれば、たかが知れているでしょうし、今回購入した1枚と2足分あれば、私がこれから使う一生分のフライを巻けると思います。

2019年4月20日土曜日

Elk Hair Caddis


 今回は日本のフライフィッシングにおいて定番中の定番であるエルク・ヘア・カディスを紹介します。
 このフライは皆さん良くご存じですので、今更紹介するまでもないのですが、私がフライを巻くときに注意していることや、使い方について述べたいと思います。

 まずタイイングについてですが、このフライは単純な形状であるが故に、エルクヘアの種類や量、ハックルの長さなど、巻く人の個性が出るフライだと思います。
 私の場合、フライがなるべく高く浮くように、また浮力が持続するように、エルクヘアの量は少なめに、ハックルはやや密に巻いています。
 エルクヘアについては、最初はブリーチした太目のカウエルクを極々少ない本数取り付けていました。しかし、千切れやすく、数匹釣るとスカスカになってしまうため、いろいろ試した結果、今はカウエルクよりも細く、ナチュラルでも色が白に近いブルエルクを多めに取り付けています。ナチュラルのブルエルクはブリーチしたものに比べるとかなり強く、使っていて少々千切れたとしても本数が多いのでボリュームを保ってくれます。特に私は顆粒状のフロータントでフライをゴシゴシと揉みますので、エルクヘアの耐久性は重要なポイントです。

 ボディ・ハックルは短すぎても長すぎてもフライの浮き方や浮力の持続性に影響しますが、キャッツキル・パターンに比べると許容範囲は広いです。


 エルクヘア・カディスはダウン・ウィングに取り付けたエルクヘアがキャスティング時に空気を整流する効果があるので、ロング・リーダー・ティペットでもキャスティングしやすいフライですが、ショート・リーダーで使用する際は逆に注意する必要があります。向かい風以外の時は、投射性が良すぎてリーダー、ティペットが伸びきった状態で着水し、フライが着水したとたんにドラッグがかかりやすくなります。そのため、以前のブログで書いた空中でフライを完全にターンオーバーさせ、ティペットにスラックを入れてフライを着水させるプレゼンテーションを、より意識して行う必要があります。

 エルクヘア・カディスは、カディス・アダルトの優れたイミテーションフライですが、ボディをピーコックハールで巻けば、テレストリアル・フライになりますし、ボディ、ハックルの色とフックサイズを変えれば、ミドリカワゲラやオナシカワゲラなどのストーンフライのイミテーションとしても使用できます。まだ20番以下のフックサイズに巻けば、ユスリカのイミテーションにもなります。
 この汎用性は、裏を返せば鱒にとって「水面を流れる何某かの捕食できるもの」全般をイミテーションしていると言えますし、実際に釣り上がりのサーチング・パターンとして、季節や釣り場を問わず、良く釣れるフライです。極端な話ですが、エルクヘア・カディスを色違いで10番から20番までフライボックスに揃えておけば、日本の釣り場ですとシーズンを通じてたいていの場合は、困ることはないと思います。

 キャッツキル・パターンは沈んでしまうと、鱒がフライを咥えることはまずありませんが、エルクヘア・カディスは、どういう訳かフライを沈めても釣れます。私はめったに行いませんが、例えば雨の日でドライフライがすぐに沈んでしまうような時に、エルクヘアカディスをウェットフライとして使うという裏技もあります。


2019年4月13日土曜日

Humpy


今回はウェスタン・フライの中からハンピーを紹介します。

 ハンピーは、テール、ウィング、ボディのシェル・バックに獣毛を用いたフライですので、他のウェスタン・フライ同様に浮力に優れるという特徴があります。

 ハックルを縦に巻いたパターンの中でも、コロッとしたバルキーなシルエットを持つので、私はテレストリアルを意識したフライとして使用しています。写真のフライは、ボディにピーコック・ハール、ハックルにブラウンというコーチマンと同じマテリアルの組み合わせですが、よりテレストリアルっぽさが表現できていると思います。
 小さなサイズにバランス良く巻くのが難しいこともありますが、私は#12のフックに、良く浮かせるためにハックルを3枚巻いたものを使用しています。

 ハンピーはボディマテリアルやカラーの違いで、様々なパターンがありますが、私は写真のもの以外では、ボディをイエローのフロス、テール、ウィング、シェル・バックをナチュラルのディア・ヘア、ハックルを茶色に染めたグリズリーで巻いたイエロー・ハンピーや、ボディを赤のフロス、テールをムース・ボディ、ウィングをホワイト・カーフ・テール、ハックルをコーチマン・ブラウンで巻いたロイヤル・ハンピーを良く使用します。

 写真のフライやロイヤルハンピーのように、テール、シェル・バック、ウィングを異なるマテリアルで巻いたパターンもありますが、イエロー・ハンピーのように、これらの部位を全てディア・ヘアもしくはエルク・ヘアで巻くのが基本で、折り返して巻きとめたシェル・バックをたすき掛けで2つに分けて、そのままウィングにします。
 ウィングを適切な長さに仕上げるには、最初にヘアを適切な長さで巻き留めることが重要になりますが、タイイングが楽しいフライでもあります。

 ハンピーは、時には1匹鱒を釣っただけで、シェル・バックが千切れてバラバラになってしまいますが、そうなってもフライへの鱒の反応は変わらないようです。





2019年4月6日土曜日

Adams


 前回デラウェア・アダムスを紹介しましたが、今回は本家のアダムスを紹介します。

 アダムスは、ミシガンのレナード・ハラデイ(Leonard Halladay)によって考案されたフライですが、その後多くのキャッツキル・タイヤ―によって巻かれたため、キャッツキル・スタイル・フライの1つとなっています。アダムスという名前が、このフライを使って爆釣したハラデイの友人の名前に由来するというのも有名な話です。
 ドライ・フライと言えば、ロイヤル・コーチマンと並んでアダムスを真っ先に思い浮かべる人も多いくらい、世界的にポピュラーなフライです。

 アダムスは、マーチ・ブラウンやライト・ケイヒルとは違い、カゲロウのイミテーションではないようです。カディスのイミテーションと書いてあるものもありますし、羽蟻を模したものと聞いたこともあります。
 陸生昆虫も含めて、鱒の餌となる不特定多数の昆虫を模したフライとして、非常に優れたフライだと思いますが、ハッチ・マッチャー的に使用するのであれば、カディスはもちろん、ナミヒラタカゲロウ、マエグロヒメフタオカゲロウなどのイミテーションとして用いても面白いと思います。

 私はフライを始めた頃は、アダムス・パラシュートを釣り上がりのサーチング・パターンとして良く使用していましたが、オリジナルのアダムスは、他のキャッツキル・パターンに比べると使用頻度は高くありません。

 キャッツキル・フライのアダムスから話はそれますが、昔5月初旬の大山周辺の渓でライズに遭遇し、マーチ・ブラウンでは全く反応がなく、フライボックスに残っていたアダムス・パラシュートを投げたところ、ライズしていたヤマメが立て続けにヒットしたことがあります。その時はおそらく、アダムス・パラシュートがフローティング・ニンフとしてライズにマッチしたのだと思います。

 アダムスはミッジ・サイズも、ミッジのイミテーションとして有効なので、ミッジから10番くらいの大型フライまで、幅広いサイズで汎用的に使用できるフライだと思います。

 アダムスにはグリズリーのヘン・ハックル・ティップをウィングに使用しますが、最近のホワイティング等のジェネティックハックルでは、ウィングに使用するのに適した先端の丸いものが、入手困難になっているのが残念です。