2019年5月11日土曜日

Pheasant tail nymph


 今回はニンフ・フライの中から、ハーズ・イアー・ニンフと並んで世界で最も有名なフライである、フェザント・テール・ニンフ(以下略してPTN)を紹介します。

 PTNはフランク・ソーヤー(Frank Sawyer)が発明した所謂ソーヤー・ニンフの中でも最も有名なフライです。ソーヤー・ニンフの特徴は、使用するマテリアルが少なく簡単に巻けること、シンプルですが水生昆虫の特徴を良くとらえたシルエット、そして優れた機能性の3つだと思います。

 フランク・ソーヤーのオリジナルのPTNでは、フライの名前の由来になっているフェザント・テール(雉の尾羽)とスレッドの代わりを兼ねたコパ―ワイヤの2つのマテリアルしか使用しません。フェザント・テールはサイズの問題から、大きなサイズは巻けませんが、そのファジーな色調に加えて、フライを巻いた時にフリューが立ち上がって水生昆虫の何ともリアルな質感を表現してくれます。またソラックスにぐるぐる巻きにされたコパ―ワイヤ―は、ウェイトの代わりになるとともに、フライにきらめきを与えるアクセントにもなっています。

 PTNがフェザント・テールとコパーワイヤーを使ってスリムに作られているのは、水生昆虫の形状を模擬するためだけでなく、機能的な理由があります。
 オリジナルのPTNはウェイトを巻き込まないので、フライの質量は小さいのですが、比重(体積当たりの重量)の大きなフライです。併せてスリムなシルエットなので、水の抵抗が小さく、着水後スムーズに沈下してくれます。そのため、見えている鱒を狙う時に、鱒の目の前にフライを上流から流し込みやすいという利点があります。

 私は渓流でヤマメ、アマゴ、イワナを釣る時は、ドライフライしか使わないので、ニンフは管理釣り場でしか使用しないのですが、PTNはニジマスが自然繁殖していることで有名な湯原温泉のニジマス釣り場で、見えている鱒をサイト・ニンフ・フィッシングで狙うのに良く使っていました。
 オリジナルのPTNのタイイングや、ソーヤ―・ニンフの使った釣りについては、平河出版社から出版されている「フランク・ソーヤーの生涯」という単行本に詳しく載っています。フランク・ソーヤ―関連の本は何冊か読みましたが、釣り人目線では、私が読んだ本の中では、この本が一番役に立つと思います。シャルル・リッツがソーヤーの釣りについて書いた文章も掲載されており、非常に参考になります。

 PTNはコカゲロウなどのスリムなカゲロウのニンフのイミテーションとして効果的ですが、アカマダラカゲロウやオナシカワゲラのニンフとしても使用できます。また、#20以下サイズは、ミッジピューパやラーバのイミテーションにもなると思います。
 私が良く使用するのは、#18と#20です。


 PTNには、フランク・ソーヤ―のオリジナル・パターン以外に、ソラックスにピーコック・ハールを用いたアル・トロースのパターンや、ウィング・ケースに使用したフェザント・テールを折り返してレッグにしたもの、ウィング・ケースにフラッシャブーを用いたものなど、様々なバリエーションがあり、どれも効果的なフライです。

 私も以前はオリジナルのフランク・ソーヤーのパターンに加え、これらのバリエーションも使用していましたが、雑誌で備前貢さんのPTNパターンを見て以来、もっぱら備前さんのパターンを使用しています。
 備前さんのPTNは、ソーヤーのオリジナルに近いのですが、アブドメンはフェザント・テールを巻き付けるのではなく、フックシャンクの背中にフェザント・テールを折り返して、コパ―ワイヤ―でリビングして巻き留めています。この方法だと、ボディーを細く仕上げることができますので、アブドメンは細く、ソラックスはポッコリという、メリハリの利いたシルエットが作れます。



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