2018年7月28日土曜日

CF Burkheimer 7'5" #3-4-5


 今回はケリー・バークハイマーのグラファイトロッド、7フィート5インチ、#3-4-5を紹介します。

 ケリー・バークハイマーが日本で知られるようになったのは、おそらくフライフィッシャーの1996年8月号に掲載された東知憲の紹介記事がきっかけだと思います。この記事でバークハイマーは、ラス・ピークの弟子として紹介されていました。
 この竿は、この記事の後、群馬のフライショップで販売されていたものを購入したものです。


 アクションは、師匠であるラス・ピークのZenithによく似たプログレッシブパラボリックアクションで、全体的に強めの竿です。流石にラス・ピークの竿とは時代が違うので、ブランクの素材には、よりハイモデュラスなグラファイトが使用されており、ラス・ピークの竿に比べると細く、軽量になっています。

 Zenith graphiteと同様に、3番手のライン指定が特徴です。私はWFの5番で使用していますが、WF-5を乗せると強めの竿にラインの負荷がバットまでしっかり乗り、楽に遠投が可能です。ラス・ピークの竿と同様にキャスティングして非常に気持ちの良い竿です。
 良くデザインされたアクションなので、強めのパラボリックアクションにも関わらず、至近距離でも充分使いやすく出来ています。

 ヤマメやイワナを釣る竿としては、やや強すぎる感がありますので、私は北海道でニジマスを釣る際に主に使用していました。


 この竿を入手後ずいぶん経ってから、レネ・ハロップが使用しているという8フィート9インチの3-4-5番、4ピースモデルをアメリカのフライショップから購入したのですが、この竿とは異なり、プログレッシブなティップアクションの竿になっていました。現在のバークハイマーロッドのラインナップには、Deep Action Load(DAL)というシリーズがあり、おそらくこのシリーズが、私が所有している昔の2ピースモデルに近いアクションなのではと思います。

 ラス・ピークの竿のコルクグリップは、日本人の手にはちょっとごつ過ぎるのですが、この竿には小ぶりのグリップが装着されています。外観のデザインはラス・ピークを意識したものとなっています。


 この竿が素晴らしかったので、この竿を入手後、バークハイマーに、8フィート3インチ、3-4-5番、4ピースの当時ラインナップにあったZenithモデルを直接注文し、デポジットを支払ったのですが、その後連絡がつかなくなり、ようやく何年後かに連絡がとれたと思ったら、オーダーが見つからないとのことで、そのままになってしまっています。
 インターネットで調べてみると、私の他にも日本の方で同じように同じような状況の方が何人かいらっしゃるようで、竿が素晴らしいだけに誠に残念です。

2018年7月21日土曜日

Steffen Brothers(その1)7'3" #3/4



今回は、ステファン・ブラザーズのグラスロッド、7フィート3インチ、#3、4番を紹介します。

 ステファン・ブラザーズはアメリカのアリゾナにある小さなロッドメーカーで、メーカー名の通り、マーク・ステファンとティム・ステファンの兄弟が経営しています。ブランクの製造から自社で行っており、以前はグラファイトロッドも製造していましたが、現在のラインナップはグラスロッドのみとなっています。グラファイトはレネ・ハロップが愛用していたことでも知られており、グラスロッドでは、あのデニス・フランキのグラステックのブランクを製造していたことは、グラスロッドマニアの間では有名です。

 この竿は、メーカーのプロダクションモデルではなく、ブランクを輸入して自分で組み立てたものです。外観上のデザインはラス・ピースのグラスロッドを参考にしています。


 ステファン・ブラザーズのグラスロッドは、グラスロッドマニアの間で大変人気なのですが、この竿も完成度の高いテーパーデザインで、誰でも振りやすい非常に素直なアクションです。
 前回紹介したウジニッキのグラスロッドと同様に、グラスロッド特有のベタベタ、ボテボテ間はなく、非常にシャープなアクションです。ウジニッキの217P4は典型的なパラボリックアクションですが、この竿はそれとは対極的なプログレッシブアクションです。ティップセクションが繊細なので、素振りやキャスティングでは217P4に比べ、しなやかに感じます。しかし、バットセクションがしっかりしているので、ロッドスピード、ラインスピードは、217P4よりも速いです。217P4がバンブーロッドに慣れた人に違和感のない竿であるのに対し、この竿はグラファイトロッドに慣れた人に違和感のない竿と言えます。


 ステファン・ブラザーズのグラスロッドは、アメリカの竿の中でもしなやかな竿と言われていますが、このモデルも日本の渓流でヤマメやイワナを釣るのに最適なしなやかさと繊細さを持っています。
 実際の釣りで多用される15mくらいまでのキャスティングレンジに焦点を合わせて設計されていますが、至近距離をチョコチョコ釣るよりも、ある程度ラインを出して釣るのに適しており、5mから15mくらいまでのラインコントロール、アキュラシーは非常に優れていると思います。
 バットがしっかりしているのと、グラス素材特有の粘りがあるので、大型のニジマスやブラウンにも対応できると思います。


 ブランクは真っすぐで、フェルールの精度も高く、昔のスコットのブラウングラスを彷彿させるアンサンドフィニッシュの透けないブラウンカラーのブランクも私の好みで気に入っています。


<お知らせ>
 ステファン・ブラザーズのグラス・ロッドをカスタム・メイドご希望の方は、yoshiharu.rod@gmail.comまで電子メールでお問い合わせください。

2018年7月14日土曜日

Mario Wojnicki(その2)217P4


 前回の255F4はバンブーロッドでしたが、マリオ・ウジニッキの2回目はグラスロッド、217P4です。この竿はいろんな方がいろんなメディアで紹介されているとおり、ウジニッキのグラスロッドの中でも特に有名で、私も確かに名竿だと思います。

 マリオの竿のモデル名はcm表記なので、この竿の長さは217cm(換算すると7フィート3インチに少し足りない)です。ラインは4番です。217P4のPはパラボリックで、ウジニッキ氏によると、この竿は「true parabolic action」となっています。
 テーパーデザインとしては、太目のティップに強いミドル、そしてこの竿の最大の特徴ですが、3ピースのバットセクションがグリップに向けて細くなっており、全体としては所謂コンベックステーパー(凸型テーパー)という特殊なテーパーになっています。
 そのため、ライン負荷の軽い状態からバットが曲がりやすくなっており、キャスティングするとショートキャストでもバットの曲がりを感じ取ることができます。


 このようなテーパーデザインにより、素振りすると全体に張りがあり、硬く感じるので、至近距離はキャストしにくいのではないかと思いますが、これが不思議なことに、意外と至近距離でもラインの乗りがよく、タイトループで正確なキャスティングが可能です。また、バットが曲がりやすいので、向かい風の時などバットを曲げこんでパワフルなラインを投げることも可能です。
 グラスロッドというと、ベネベナ、ボテボテした竿をイメージされる方も多いと思いますが、この竿はそのようなことは全くありません。ロッドスピードがバンブーロッドに近いため、キャスティングするとバンブーロッドを振っているかのように感じます。


 この竿は、前回の225F4とは違い、一時期非常に良く使っていました。7フィート3インチ弱で4番というスペックも、日本の渓流では使いやすく、ヤマメやイワナを釣っても楽しい竿です。
 この竿は、225F4を待っている間に注文したのですが、当時注文してから2か月もかからないうちに手元に届きました。ウジニッキのバンブーは、確かに素晴らしいのですが、グラスロッドの出来が素晴らしいので、価格や納期を考えると、ウジニッキ氏には申し訳ないですが、個人的にはグラスでも十分ではないかと思ってしまいます。

2018年7月7日土曜日

Mario Wojnicki(その1)225F4


 今回はマリオ・ウジニッキのバンブーロッド、225F4、7フィート5インチ、4番を紹介します。

 ウジニッキは5角のバンブーロッドで有名ですが、この竿は6角竿です。ウジニッキ曰く、氏の竿の中でもし古典的なバンブーロッドを1本選ぶとすれば、この竿とのことで、おそらくどんな人にも扱いやすい、繊細なドライフライアクションの竿です。
 テーパーを計測したわけではありませんが、キャスティングした感覚やベンディングカーブは、以前紹介した朝間ロッドのパーペキショニストに似ており、おそらくヤングのPerfectionistが元になっているのではないかと推測します。フリースのKatana704ほどではありませんが、4番ロッドとしてはティップは非常に繊細です。


 ウジニッキのバンブーロッドは、日本でも非常に人気が高いですが、実際に手にするとその理由が良く理解できます。アメリカのビルダー(実際はポーランド出身ですが・・・)としては、日本人のビルダーに匹敵するほど、作りが繊細かつ丁寧で、非常に美しい竿です。私はウジニッキのバンブーはこの竿しか知らないのですが、この竿は日本のヤマメやイワナを釣っても十分楽しい繊細さを持っています。


 ウジニッキの竿は、竿袋も非常によく考えられた使い勝手の良い独自の構造になっており、丁寧に作られています。私は自分で作った竿の竿袋を作るために、手元にある様々なビルダーやメーカーの竿の竿袋を片っ端から調べて、竿袋にも丁寧に作られたものから、そうでないものまで、いろいろあるのに初めて気が付きました。おそらくウジニッキ氏は自分で竿袋を縫っているのではないかと推察しているのですが、こんなところにも氏の人柄が表れているように思います。

 ウジニッキのバンブーロッドは中空構造なのですが、この竿は重量に関してはソリッドに比べ劇的に軽いとは言えないと思います。それよりも中空の効果は、反発力を上げることに効いていると思います。この長さのバンブーロッドとしては、比較的速いストロークにも竿が追従しますので、バンブーロッドに慣れていない人や、バンブーロッドでも速いロッドアクションを好む人にとっても、キャスティングしやすい竿だと思います。

 ウジニッキ氏は大変人気があるビルダーなので、この竿もオーダーしてから竿が届くまでに約5年かかりました。非常に使いやすい竿なので、もっと頻繁に活躍してくれるはずだったのですが、実は一度ブランクの接着が一部剥離するというトラブルを起こし、修理に出しているため、それ以来なんとなく怖くてほとんど渓流に持ち出していないのがなんとも残念です。