2019年6月29日土曜日

HIRANO TSURIGU model 55


 My faverite rod再開2回目は、HIRANO TSURIGUさんのオリジナルグラスロッド、model 55、5フィート5インチ、4番です。

 HIRONO TSURIGUさんでは、オリジナルのグラスロッドを数種類ラインラップされていますが、この竿はその中でも最も短いものです。5フィート5インチというと、フライロッドとしては、かなり短い竿になります。
 私のホームリバーの多くは、川幅が狭く頭上に両岸から張り出した木が覆いかぶさり、7フィート以下の竿が使いやすい渓が多いのですが、その中でも特に短竿が要求される沢用にこの竿を購入しました。


 このように極端に短い竿は、竹竿やグラスロッドでも硬くて至近距離が投げにくくなりがちですが、この竿はバットから全体が曲がりやすいパラボリック・アクションにすることで、至近距離でも投げやすい竿になっています。また、短い竿ながら15mくらいまでは楽に投げることができます。
 このくらい竿が短いと、釣り場ではドラッグを回避するために少しテクニカルなキャスティングが要求されるのですが、それはそれで楽しいものです。開けた釣り場で、敢てこのような短竿を使って、キャスティングテクニックを駆使しながら釣りをするというのも、面白いと思います。


 竿の外観は、ヤングを始めとするビンテージ・ロッドに大変造詣の深い平野さんだけに、ヤング調の非常にシンプルなものになっています。アルミのリールシートもシンプルかつ軽くて機能的なものが使われています。

 HIRANO TSURIGUのオリジナル・グラスロッドは、どの竿も平野さんの好みを反映してバンブーロッドのアクションに近いセミパラボリック、もしくはパラボリック・アクションとなっており、バンブーロッド愛好者にも人気があります。
 カスタム・メイドなので、ブランクの色は3種類から選べますし、リールシート、グリップの形状、スレッドの色も指定できますので、好みの仕様で組んでもらうのも楽しいものです。ただし、あまり冒険しすぎると、出来上がったものを見て後悔することにもなりかねないので、平野さんと相談しながら仕様を決めるのが良いかと思います。


2019年6月22日土曜日

Orvis(その3) Yellowstone 7 1/2 #5


久しぶりにMy favorite rodsを再開したいと思います。再開第1回は、オービスのイエローストーン、7フィート6インチ、5番です。

 この竿は、数年前にオークションで入手したものです。未使用ということでグリップには収縮フィルムが着いたままだったのですが、製造が1982年の10月と流石に35年以上も経過しているので、コルクの油分が抜けてスカスカの状態になっていました。
 そこで、先日の岩手釣行に持参し、ノースカントリーアングラーの加藤さんにグリップの交換をお願いしました。上の写真が交換前のオリジナルで、下の写真が交換後になります。


 自分で交換してもよかったのですが、できる限りオリジナルに忠実にレストアしたかったので、それに関して卓越した技術と知識を持つ加藤さんにお願いしました。
 結果は予想通り、いや予想以上で、オリジナルを忠実に再現したうえでグリップのコルクだけが新品に生まれ変わりました。


 グリップを交換するには、バットセクションのガイドとフッキキーパーを取り外す必要があるのですが、付け直したガイドのスレッドの色、スレッドの巻幅はもちろんのこと、コーティングもオリジナルと同様の一液性のウレタンを使用し、オリジナルの糸目の出方と同じになるようにコーティングの厚みが調整されています。


 当時のオービスのグラファイトロッドは、グリップの上部の紙巻のロゴが特徴で、端が浮いていることが多いのですが、これも綺麗に補修されていました。
 この竿が販売されていた当時、私は高校生でしたが、月刊フィッシングにティムコが掲載しているオービスの広告を見ては、この紙巻のロゴに憧れたものです。私と同年代のフライフィッシャーマンは、この当時の紙巻ロゴと赤いラベルのアルミケースのオービスグラファイトに今でも特別な思いを抱いている方が多いのではないかと思います。

 オービスのイエローストーンシリーズは、オービスのグラファイトロッドの歴史の中でもちょっと珍しい竿です。1983年に発表されましたが、翌1984年には名前がウェスタンシリーズに変更になり、イエローストーンの名前を持つ竿は1年間しか作られませんでした。確かこの7フィート6インチ、5番の竿は、ウェスタンになった年にラインナップから外れたように記憶しています。

 イエローストーン(ウェスタン)シリーズは、それまでのオービスグラファイトがブラウンのスレッドでラッピングされていたのに対し、スカーレッドのスレッドでラッピングされています。イエローストーンの名前で発売されていた竿だけが、どういう訳かグリップ先端のスレッドの巻き上げの長さが長くなっています。

 イエローストーン発売前からあるオービスのグラファイトシリーズ(のちのスーパーファインシリーズ)は、ローモデュラスグラファイトを使用し、オービスがフルフレックスアクションと呼んでいた、ロッドが全体に弧を描くスローアクションが特徴ですが、このイエローストーン(ウェスタン)シリーズは、その名の通りアメリカ西部の川をターゲットにした、当時のオービスとしては初めてのティップアクションの竿です。
 ローモデュラスのグラファイト素材を使用している点は同じですが、ティップがやや細く、バットがやや太めのファストテーパー気味に設計されており、従来のオービスグラファイトよりも、やや強めでよりティップ側から曲がるようになっています。
 といっても、ローモデュラスグラファイトの肉厚のブランクなので、現在の超ハイモデュラスのグラファイトを使った竿や、当時のセージやフェンウィックの竿に比べると、スローでしなやかです。

 この竿は、アベレージサイズのヤマメやイワナを釣るには、やや強い竿ですが、北海道の中小規模の渓流でニジマスやブラウンを釣るのに非常に適していると思います。私の師匠の北海道の菊地さんも、この竿を所有しており、フリースの竿に出会うまでは、良く使用されていたようです。


2019年6月15日土曜日

Vermont Caddis


 今回は、カディス・パターンの中でも殆どの方がご存知ないと思われるバーモント・カディスを紹介します。

 このフライは、ご覧のとおりハーズ・イアーのボディにブラウンとグリズリーのハックルを巻いただけの、極めてシンプルなフライです。カディス・パターンはたいていの場合、トビケラの特徴であるテント状のウィングを模したダウン・ウィングが取り付けられていますが、このフライにはそれがありません。しかし、このフライは縦に長めに密にハックリングされたハックルと、ハーズ・イアーのシャギーなボディが、一目見た時にいかにもカディスらしい印象を与えています。
 私は、このフライをネット上でたまたま見つけたのですが、写真を見た瞬間に軽い衝撃を受けるとともに、このフライは釣れると確信しました。


 ダウン・ウィングが取り付けられたカディス・パターンは、我々が良く目にするトビケラが岩や木の葉にとまって羽を閉じた状態を表現していますが、このフライは飛行中や水面上でフラッタリングしている羽を広げた状態を表していると思います。実際に飛行中のトビケラは、このフライとそっくりなシルエットをしています。

 ネットで検索しても、このフライに関する情報は少ないのですが、フラッタリングさせて使う釣り方が紹介されていました。まだ試していませんが、下半分のハックルをカットして、スペント・パターンとして使用しても効果的ではないかと思います。

 タイイングのポイントは、ハックルを巻く範囲をシャンクの半分以上に長くとり、長めのファイバーを密にびっしり巻くことです。私はハックルを3枚巻いています。

 地味な色調ですが、水面に高く浮くのと、ブラウンとグリズリーのハックルの組み合わせは、意外と良く見えます。ハーズ・イアーのボディは、ドライフライ用のダビング材に比べて水を吸いやすいので、浮力の持続性は若干劣りますが、実際に使ってみるとそれほど気になりません。
 顆粒状のフロータントを使用し、しばらく使ってすこしフライがくたびれてきた方が、よりカディスっぽく見えます。

 カディスが沢山飛んでいる時はもちろんですが、耐久性のあるフライなので、鱒の活性が高く、良く釣れていてフライを交換するのが面倒な時に使用するのにも適しています。


2019年6月9日日曜日

Marshmallow Ant


 前回のパラシュート・アントに引き続き、アント・パターンの第2段として、島崎憲司郎さんのマシュマロ・アントを紹介します。

 パラシュート・アントは良く釣れる丈夫で使いやすいパターンですが、浮力が弱く、その持続性に欠けるのが弱点です。夏場の渇水した渓流では、さほど問題にはなりませんが、もう少し浮力が欲しい場合は、このパターンを使用することが多いです。

 シマザキ・フライは機能的かつ捕食対象である水生昆虫や陸生昆虫の特徴を上手くデフォルメした優れたデザインが特徴ですが、タイイングの容易さや量産性も考慮されています。このフライを始めとする一連のマシュマロ・パターンも、最初にフライのボディになるマシュマロ部分をまとめて作っておくと、フライを短時間で大量に巻くことができます。
 マシュマロ・アントのタイイングは、YouTubeのティムコのチャンネルで、実際にご本人がタイイングされているものが視聴可能です。

 マシュマロ・パターンは、大きなフライでも鱒に吸い込まれやすく、フッキングしやすいと言われていますが、アント・パターンのような小さいサイズでは、前回のパラシュート・アントと大差はないと思います。


2019年6月1日土曜日

Parachute Ant


 今回は、初夏以降に効果的なパラシュート・アントを紹介します。

 テレストリアル・フライとしてポピュラーなパターンなので、わざわざ紹介するまでもないのですが、カゲロウ、トビケラのハッチがひと段落した6月以降の夏場に非常に効果的なフライです。特に真夏に水温が高すぎてヤマメ、イワナの活性が落ちている時にこのフライを流すと、反応が明らかに違うように思います。

 ボディは重ねて巻いたスレッドをラッカー等でコーティングしたものや、ピーコックハールを巻いたもの、ビーズを使ったものなどありますが、私はタイイングの容易さと耐久性から、単純に黒のポリプロピレンのダビング材(フライライト)を使用しています。
 パラシュートポストは、オレンジやピンクを使った方が良く見えますが、あまり派手な色は使いたくないので、マシュマロファイバーのシナモンを使用しています。FLホワイトよりもシナモンの方が視認性は良いと思います。

 同じ時期の同じ渓流でも、その時の川の状態、鱒の活性によって、反応の良いフライは変化しますが、私の場合夏場ですと、未だ日が高いうちはアントパターン、日が沈んで光量が落ちてくると、エルクヘアカディスなどの高く浮いてより視認性の良いフライを使用することが多いです。

 蟻は栄養価が高いと聞いたことがありますが、ヤマメ、イワナが蟻を好んで捕食しているのか、夏場の明るいうちは水生昆虫の流下がないためか、夏場のアントパターンは、非常に効果的で、他のフライに神経質な出方をするヤマメ、イワナも、アントパターンにはゆっくりとした出方でガッツリフライを咥えていることが多いように感じます(実際は吸い込んでいるのですが・・・)。