2018年8月10日金曜日

SCOTT(その1)G905/4


 今回はスコットのグラファイト、G905/4、9フィート、5番、4ピースを紹介します。

 この竿は、1990年代の中頃、イナガキが代理店だった頃にイナガキから購入したもので、スコットの工場がコロラドに移転した頃の竿になります。

 アクションはプログレッシブなティップアクションで、スコットのGシリーズに共通する特徴として、ティップが他社のグラファイトロッドと比べてかなり柔らかく、バットは太くしっかりしています。そのため、素振りすると、ティップがひょこひょこと動きます。このようなロッドデザインですと、近距離以外はキャスティングが難しいように思いますが、柔らかいティップからミドル、バットにかけてのテーパーのバランスが良いためか、近距離から遠投まで違和感なくキャスティングが可能なようにデザインされています。
 バットは太く粘りがあり、50cmを超えるニジマスやブラウンを掛けても、余裕をもって対応できます。


 Gシリーズは、比較的ローモデュラスのグラファイト素材を用いているので、例えばセージなどのハイモデュラスのグラファイト素材を用いた竿と比べると、ロッドスピードは遅いのですが、キャスティングストロークのスピードからイメージするよりも、ラインスピードが速いという独特のキャスティング感覚があります。これはローモデュラスのグラファイトを用いながら、ファストテーパーのティップアクションにデザインされているからだと思います。

 確か1980年代後半の雑誌のインタビューで、当時のオービスの社長が、自社以外の竿で良いと思うメーカーはとの質問に対し、スコットと答えていたのを記憶していますが、オービスのウェスタンシリーズも、ローモデュラスのグラファイトを用いながら、ファーストテーパーにデザインされており、Gシリーズを意識して開発されたのではと推測しています。


 この頃までのスコットは、ガイドフットがダブルラップ(ガイドフットの根元にスレッドが二重にラッピングされている)になっており、手間をかけた凝った仕上げになっていました。
 また、スコットの特徴であるインターナルフェルールのラッピングも、メス側のフェルール部にガイドを乗せて、補強巻の上にガイドが巻きとめられており、オス側の補強巻も含め、頑丈に仕上げられています。


 Gシリーズというと、グリップとリールシートがコルク一体型のブラックのアルミのキャップ・アンド・リングのリールシートのイメージが強く、私もその仕様の竿が欲しかったのですが、残念ながら当時はそのような仕様はありませんでした。その後、代理店がマーヴェリックに代わってから、ブラックのキャップ・アンド・リングが復活します。

 コルクグリップも日本人の手には長すぎるのですが、竿が9フィートと長く、グラファイト素材も現代のものと比べると重いため、使ってみると見た目はともかく、バランスが取れているので、面白いものです。

 当時、日本のフライフィッシャーマンの間では海外釣行がブームで、私もこの竿を携えて、アイルランド、アメリカのビックホーンリバー、サンワンリバーと海外釣行を重ねました。
 9フィート、5番というスペックは、海外の大きな川でニジマス、ブラウンを相手にするには非常に便利で、特にこの竿は、ドライフライから大きなヤーンマーカーを付けたニンフまで1本でこなすことが可能です。ティップが繊細なので、7Xのティペットに#24のミッジフライの釣りも可能でした。


 海外釣行だけでなく、止水の管理釣り場や、ほとんどやらないのですが、フローティングラインにウェイテッドのウーリーバガーでブルーギルやブラックバスを釣ったりもしました。

 今では竿袋はところどころ穴が開き、メイプルのリールシートウッドはクリアの塗装が8月のビックホーンの暑さに耐えきれず溶けてしまい、見た目が相当にくたびれてしまいましたが、竿自体はまだまだ十分に使用可能で、私の宝物のうちの1本になっています。

2018年8月4日土曜日

Archistrial MM822-4


 今回は、アーキストリアルのグラファイトロッド、MM822-4、8フィート2インチ、2番、4ピースを紹介します。

 1980年代に月刊フィッシングやアングリングを読んでフライフィッシングに憧れていた私にとって、アーキストリアルはオービスと並んで憧れの存在でした。中でもフィッシング誌に掲載された、アーキストリアルの代表でありロッドデザイナーの羽田氏のラス・ピークの工房訪問記は、当時中学生だった私に強烈な印象を残し、何度も何度も読み返したものです。

 この竿は最近になってインターネットでアーキストリアルのウェブサイトを見つけ、今でも羽田氏がフライロッドを作製されているのを知り、2013年に注文したものです。ネット上では羽田氏に関し、様々な噂が囁かれていましたので、本当に竿を作ってもらえるのか一抹の不安がありましたが、その心配には及ばず、2カ月ほどでシアトルから送られてきたのがこの竿です。


 この竿は、マルチモデュラスモデルと呼ばれており、4ピースの各セクション毎に異なるモデュラスのグラファイト素材が使用されています。具体的には、ティップセクションにはローモデュラス、バットに向かうほどハイモデュラスの素材が使用されています。
 羽田氏は、1980年にアーキストリアルの最初のモデルの発売時から、このコンセプトをロッドデザインに取り入れており、当時のモデルはグラファイトとグラスのコンポジット素材を使用したものでした。

 以前紹介したラス・ピークのZenith PGGは、この竿とは正反対にティップセクションにハイモデュラスのグラファイト、バットセクションにローモデュラスのグラス素材が使用されています。これは、ラス・ピークのロッドデザインがプログレッシブなパラボリックアクションであるのに対し、アーキストリアルではプログレッシブなティップアクションであるためです。

 ティップ側ほどローモデュラスの素材を使用しているこの竿では、キャスティング時にティップが曲がる速度、復元する速度が遅いため、ロッドを止めた際にティップが振動しにくく、スラックが入りにくいという利点を感じます。また、不思議なことにグラファイトロッドなのに、バンブーロッドに近いロッドスピードを持ち、良く出来たバンブーロッドを振っているような心地よい感覚があります。
 2番という低ライン番手の竿ですが、短いストロークで力を入れずに軽く竿を振ってやると、ラインの軽さを感じさせない力強いラインがタイトループで真っすぐ、グングンと伸びていきます。


 4つのセクションのジョイントは、ティップと2番目間がオーバーフェルール、それ以外にはスピゴッドフェルールが用いられています。各フェルールは、他のグラファイト、グラスロッドではありえない精度ですり合わせがされており、バンブーロッドの良く出来たメタルフェルールのように、フェルールを抜いた際に「ピコッ」という小気味良い音がします。

 羽田氏は、このMM822-4が最もお気に入りのモデルで、この竿一本あれば、日本の渓流からアメリカのスプリングクリークの釣りまでカバーできるとメールに書いておられましたが、私は渓流では7フィート前後のバンブーロッドで釣りをするのが好きなので、残念ながらこの竿は未だ湯原温泉の虹鱒釣り場でのミッジの釣りにしか使用していません。


 この竿は、ラス・ピークの竿と同様に、化学素材を使った竿でもバンブーロッドのような素晴らしい竿が作れることを証明していると思います。価格はバンブーロッドなみに高価なのですが、その価格に十分値する性能と、キャスティング、釣りの楽しさ、所有する喜びを備えていると思います。

2018年7月28日土曜日

CF Burkheimer 7'5" #3-4-5


 今回はケリー・バークハイマーのグラファイトロッド、7フィート5インチ、#3-4-5を紹介します。

 ケリー・バークハイマーが日本で知られるようになったのは、おそらくフライフィッシャーの1996年8月号に掲載された東知憲の紹介記事がきっかけだと思います。この記事でバークハイマーは、ラス・ピークの弟子として紹介されていました。
 この竿は、この記事の後、群馬のフライショップで販売されていたものを購入したものです。


 アクションは、師匠であるラス・ピークのZenithによく似たプログレッシブパラボリックアクションで、全体的に強めの竿です。流石にラス・ピークの竿とは時代が違うので、ブランクの素材には、よりハイモデュラスなグラファイトが使用されており、ラス・ピークの竿に比べると細く、軽量になっています。

 Zenith graphiteと同様に、3番手のライン指定が特徴です。私はWFの5番で使用していますが、WF-5を乗せると強めの竿にラインの負荷がバットまでしっかり乗り、楽に遠投が可能です。ラス・ピークの竿と同様にキャスティングして非常に気持ちの良い竿です。
 良くデザインされたアクションなので、強めのパラボリックアクションにも関わらず、至近距離でも充分使いやすく出来ています。

 ヤマメやイワナを釣る竿としては、やや強すぎる感がありますので、私は北海道でニジマスを釣る際に主に使用していました。


 この竿を入手後ずいぶん経ってから、レネ・ハロップが使用しているという8フィート9インチの3-4-5番、4ピースモデルをアメリカのフライショップから購入したのですが、この竿とは異なり、プログレッシブなティップアクションの竿になっていました。現在のバークハイマーロッドのラインナップには、Deep Action Load(DAL)というシリーズがあり、おそらくこのシリーズが、私が所有している昔の2ピースモデルに近いアクションなのではと思います。

 ラス・ピークの竿のコルクグリップは、日本人の手にはちょっとごつ過ぎるのですが、この竿には小ぶりのグリップが装着されています。外観のデザインはラス・ピークを意識したものとなっています。


 この竿が素晴らしかったので、この竿を入手後、バークハイマーに、8フィート3インチ、3-4-5番、4ピースの当時ラインナップにあったZenithモデルを直接注文し、デポジットを支払ったのですが、その後連絡がつかなくなり、ようやく何年後かに連絡がとれたと思ったら、オーダーが見つからないとのことで、そのままになってしまっています。
 インターネットで調べてみると、私の他にも日本の方で同じように同じような状況の方が何人かいらっしゃるようで、竿が素晴らしいだけに誠に残念です。

2018年7月21日土曜日

Steffen Brothers(その1)7'3" #3/4



今回は、ステファン・ブラザーズのグラスロッド、7フィート3インチ、#3、4番を紹介します。

 ステファン・ブラザーズはアメリカのアリゾナにある小さなロッドメーカーで、メーカー名の通り、マーク・ステファンとティム・ステファンの兄弟が経営しています。ブランクの製造から自社で行っており、以前はグラファイトロッドも製造していましたが、現在のラインナップはグラスロッドのみとなっています。グラファイトはレネ・ハロップが愛用していたことでも知られており、グラスロッドでは、あのデニス・フランキのグラステックのブランクを製造していたことは、グラスロッドマニアの間では有名です。

 この竿は、メーカーのプロダクションモデルではなく、ブランクを輸入して自分で組み立てたものです。外観上のデザインはラス・ピースのグラスロッドを参考にしています。


 ステファン・ブラザーズのグラスロッドは、グラスロッドマニアの間で大変人気なのですが、この竿も完成度の高いテーパーデザインで、誰でも振りやすい非常に素直なアクションです。
 前回紹介したウジニッキのグラスロッドと同様に、グラスロッド特有のベタベタ、ボテボテ間はなく、非常にシャープなアクションです。ウジニッキの217P4は典型的なパラボリックアクションですが、この竿はそれとは対極的なプログレッシブアクションです。ティップセクションが繊細なので、素振りやキャスティングでは217P4に比べ、しなやかに感じます。しかし、バットセクションがしっかりしているので、ロッドスピード、ラインスピードは、217P4よりも速いです。217P4がバンブーロッドに慣れた人に違和感のない竿であるのに対し、この竿はグラファイトロッドに慣れた人に違和感のない竿と言えます。


 ステファン・ブラザーズのグラスロッドは、アメリカの竿の中でもしなやかな竿と言われていますが、このモデルも日本の渓流でヤマメやイワナを釣るのに最適なしなやかさと繊細さを持っています。
 実際の釣りで多用される15mくらいまでのキャスティングレンジに焦点を合わせて設計されていますが、至近距離をチョコチョコ釣るよりも、ある程度ラインを出して釣るのに適しており、5mから15mくらいまでのラインコントロール、アキュラシーは非常に優れていると思います。
 バットがしっかりしているのと、グラス素材特有の粘りがあるので、大型のニジマスやブラウンにも対応できると思います。


 ブランクは真っすぐで、フェルールの精度も高く、昔のスコットのブラウングラスを彷彿させるアンサンドフィニッシュの透けないブラウンカラーのブランクも私の好みで気に入っています。


<お知らせ>
 ステファン・ブラザーズのグラス・ロッドをカスタム・メイドご希望の方は、yoshiharu.rod@gmail.comまで電子メールでお問い合わせください。

2018年7月14日土曜日

Mario Wojnicki(その2)217P4


 前回の255F4はバンブーロッドでしたが、マリオ・ウジニッキの2回目はグラスロッド、217P4です。この竿はいろんな方がいろんなメディアで紹介されているとおり、ウジニッキのグラスロッドの中でも特に有名で、私も確かに名竿だと思います。

 マリオの竿のモデル名はcm表記なので、この竿の長さは217cm(換算すると7フィート3インチに少し足りない)です。ラインは4番です。217P4のPはパラボリックで、ウジニッキ氏によると、この竿は「true parabolic action」となっています。
 テーパーデザインとしては、太目のティップに強いミドル、そしてこの竿の最大の特徴ですが、3ピースのバットセクションがグリップに向けて細くなっており、全体としては所謂コンベックステーパー(凸型テーパー)という特殊なテーパーになっています。
 そのため、ライン負荷の軽い状態からバットが曲がりやすくなっており、キャスティングするとショートキャストでもバットの曲がりを感じ取ることができます。


 このようなテーパーデザインにより、素振りすると全体に張りがあり、硬く感じるので、至近距離はキャストしにくいのではないかと思いますが、これが不思議なことに、意外と至近距離でもラインの乗りがよく、タイトループで正確なキャスティングが可能です。また、バットが曲がりやすいので、向かい風の時などバットを曲げこんでパワフルなラインを投げることも可能です。
 グラスロッドというと、ベネベナ、ボテボテした竿をイメージされる方も多いと思いますが、この竿はそのようなことは全くありません。ロッドスピードがバンブーロッドに近いため、キャスティングするとバンブーロッドを振っているかのように感じます。


 この竿は、前回の225F4とは違い、一時期非常に良く使っていました。7フィート3インチ弱で4番というスペックも、日本の渓流では使いやすく、ヤマメやイワナを釣っても楽しい竿です。
 この竿は、225F4を待っている間に注文したのですが、当時注文してから2か月もかからないうちに手元に届きました。ウジニッキのバンブーは、確かに素晴らしいのですが、グラスロッドの出来が素晴らしいので、価格や納期を考えると、ウジニッキ氏には申し訳ないですが、個人的にはグラスでも十分ではないかと思ってしまいます。

2018年7月7日土曜日

Mario Wojnicki(その1)225F4


 今回はマリオ・ウジニッキのバンブーロッド、225F4、7フィート5インチ、4番を紹介します。

 ウジニッキは5角のバンブーロッドで有名ですが、この竿は6角竿です。ウジニッキ曰く、氏の竿の中でもし古典的なバンブーロッドを1本選ぶとすれば、この竿とのことで、おそらくどんな人にも扱いやすい、繊細なドライフライアクションの竿です。
 テーパーを計測したわけではありませんが、キャスティングした感覚やベンディングカーブは、以前紹介した朝間ロッドのパーペキショニストに似ており、おそらくヤングのPerfectionistが元になっているのではないかと推測します。フリースのKatana704ほどではありませんが、4番ロッドとしてはティップは非常に繊細です。


 ウジニッキのバンブーロッドは、日本でも非常に人気が高いですが、実際に手にするとその理由が良く理解できます。アメリカのビルダー(実際はポーランド出身ですが・・・)としては、日本人のビルダーに匹敵するほど、作りが繊細かつ丁寧で、非常に美しい竿です。私はウジニッキのバンブーはこの竿しか知らないのですが、この竿は日本のヤマメやイワナを釣っても十分楽しい繊細さを持っています。


 ウジニッキの竿は、竿袋も非常によく考えられた使い勝手の良い独自の構造になっており、丁寧に作られています。私は自分で作った竿の竿袋を作るために、手元にある様々なビルダーやメーカーの竿の竿袋を片っ端から調べて、竿袋にも丁寧に作られたものから、そうでないものまで、いろいろあるのに初めて気が付きました。おそらくウジニッキ氏は自分で竿袋を縫っているのではないかと推察しているのですが、こんなところにも氏の人柄が表れているように思います。

 ウジニッキのバンブーロッドは中空構造なのですが、この竿は重量に関してはソリッドに比べ劇的に軽いとは言えないと思います。それよりも中空の効果は、反発力を上げることに効いていると思います。この長さのバンブーロッドとしては、比較的速いストロークにも竿が追従しますので、バンブーロッドに慣れていない人や、バンブーロッドでも速いロッドアクションを好む人にとっても、キャスティングしやすい竿だと思います。

 ウジニッキ氏は大変人気があるビルダーなので、この竿もオーダーしてから竿が届くまでに約5年かかりました。非常に使いやすい竿なので、もっと頻繁に活躍してくれるはずだったのですが、実は一度ブランクの接着が一部剥離するというトラブルを起こし、修理に出しているため、それ以来なんとなく怖くてほとんど渓流に持ち出していないのがなんとも残念です。


2018年6月30日土曜日

高太郎ロッド(その2)6'8" #4


 高太郎ロッドの2回目は、6フィート8インチ、4番、トンキンソリッドの竿をご紹介します。

 私は竹竿に関しては、ビルダーから直接購入することを基本としていますが、この竿は某フライショップから中古で入手したものです。
 しばらくオリジナルの状態で使用していましたが、釣りを終えてフェルールを抜く際に、誤ってフェルールの下のスネークガイドを曲げてしまい、またグリップのコルクがどういう訳か質の良くないものが使用されており、ラッピングのフィニッシュも薄すぎたので、つい先日ノースカントリーアングラーの加藤さんにリビルトしていたただきました。このブログの一番最後の写真以外は、すべてリビルト後の写真になります。
 加藤さんは、オリジナルを出来るだけ忠実に再現することを得意とされていますが、この竿は敢て、ラッピングの色をゴールド(黄土色?)からオリーブに、グリップの形も少し変えていただきました。
 グリップの形はほんの少し変更しただけなのですが、それだけで随分印象が変わって見えるので、面白いものです。


 この竿は6フィート8インチと短めの竿ですが、決して藪沢で近距離を釣るためだけの竿ではなく、高太郎さんの竿らしく、開けた渓である程度ラインを出して釣ることも想定された竿になっています。
 前回ご紹介した7フィート、4番ほど力強いラインは投げられませんが、近距離から遠距離まで、少ない力できれいなループの力強いラインを投げることができます。


 高太郎さんは、テーパー設計にギャリソンのストレス計算を使用されていなかったのですが、一緒に釣りをした際、私がストレス計算の話をしたところ興味を持たれ、当時新作であったこの竿のテーパーを教えてもらい、ストレスカーブを逆算させていただいたことがあります。
 高太郎さんは、とにかく投げて削ってを繰り返して、ロッドテーパーを煮詰めていく方でしたので、他のビルダーの竿のテーパーを参考にしたりすることはなかったのですが、計算の結果、この竿が局所的に強い箇所や弱い箇所のない、非常にきれいなペインによく似たストレスカーブを持っていることが分かりました。
 ストレス計算を使用しなくても、良くデザインされた優れた竿は、きれいなストレスカーブを描くのだと実感しました。

 私は、前回ご紹介した7フィートの竿の方がより私好みのアクションであり、また優れた竿だと思いますが、6フィート8インチ、4番というスペックは、私が良く行く渓流で非常に使い勝手の良いスペックなので、これからも朝間ロッドの6フィート9インチ同様に、愛用すると思います。


2018年6月24日日曜日

高太郎ロッド(その1)7'0" #4H


 今回は、九州久留米のビルダー井手高太郎さんの7フィート、4番、ホロービルドの竿をご紹介します。

 井手さんには、この竿をオーダーする前にもイベントでお会いする機会が2回ほどあり、また当時毎日のように更新されていたブログを読んで、竿作りの姿勢に共感するものがありましたので、いつかは竿を作って欲しいと思っていました。
 この竿を作ってもらうにあたっては、大雪の湯原温泉虹鱒釣り場で私のキャスティングを見ていただき、私が好きなサマーズの735を振っていただいたり、どんな釣りをするかを説明しました。そのため、この竿は、短いリーダーで抵抗の大きいドライフライを多用する私の釣りに合わせて、標準のテーパーよりもティップがわずかに太い特別仕様になっています。


 高太郎さんは、とにかくキャスティング性能(単に遠投という意味ではありません)に拘って竿をデザインしておられたので、この竿も極めて優れたキャスタビリティを有しています。
 この竿はトンキンのホロービルドなのですが、一般にホロービルドの竿の弱点として、反発力が上がってラインスピードは上がりますが、ラインのトルクが落ちる、大きな魚を掛けた時に粘りがないということが良く言われます。この竿では、この弱点を克服するために、ブランクの断面において、くり抜いた分の面積を外側にプラスする方法でテーパーがデザインされています。そのため、この竿を振ってもあまりホローの竿という感覚がなく、スローラインでもトルクのあるラインが出ます。

 話は少し脱線しますが、フライロッドやキャストされたラインに対し、トルクという表現がしばしば使われます。ソリッドのバンブーロッドはトルクがある、トルクのあるラインが飛ばせるが、ハイモデュラスのグラファイトロッドはトルクがない、トルクのあるラインが飛ばせないといった表現が用いられます。
 自動車のエンジンに例えると、バンブーロッドは低速トルクの太い大排気量の低回転型のエンジン、ハイモデュラスのグラファイトロッドは回転数でパワーを稼ぐ高回転型のマルチシリンダーエンジンと考えるとイメージしやすいと思います。
 私は工学系の技術者の端くれとして、フライロッド、フライキャスティングにおけるトルクという表現を、物理学の原理原則に基づいて、物理定数を用いて説明したいといつも思うのですが、いまだ上手く説明できずにいます。


 話を高太郎ロッドに戻します。この竿はホロー構造の独自の工夫とテーパーデザインにより、本当に力強いラインをキャスティングすることができ、リーダー、ティペットの先のフライまで完全に力を伝えることが可能です。そのためサマーズの735と同様に、キャスティングしていて、本当に気持ちの良い竿です。
 高太郎さんは、バットを上手く使えるように竿をデザインしているので、このことも少ない力で力強いラインが投げられる要因の1つになっていると思います。この竿を振っていると、竿全体がうまく仕事をしているのを感じます。


 バットがしっかりした竿が好きな人には、不向きな竿と思いますが、私のキャスティングスタイルに合っていることもあり、近くの川から北海道まで、一時期はこの竿ばかり使って釣りをしていました。今でも、私のお気に入りの竿の中でも特に好きな竿のうちの1本です。


2018年6月17日日曜日

朝間ロッド(その3)7'3" #3/4


 今回は、朝間ロッド7フィート3インチ、3、4番をご紹介します。
 この竿は、これまでご紹介した2本の竿とは異なり、オーダーメイドではありません。朝間さんは、オーダーメイドで作製するものとは別に、プロトタイプの竿などを年に数回、自身のウェブサイトで販売されているのですが、この竿はスペック、コスメが私の理想とするものにドンピシャだったので、おもわずライズしてしまったものです。


 この竿はトンキンソリッドですが、当時朝間さんが新たにテストされていたカーボンフェルールが使用されており、2.5ozと非常に軽量です。また、朝間さんの説明では、パラボリックアクションとなっています。


 さて、カーボンフェルールの効果ですが、実際に使用するとメタルフェルールやバンブーフェルールと比べて、これでないといけないと言えるほど明確な差があるわけではありません。しかし、軽量であることフェルール自身に柔軟性があることについては、確かにメリットがあり、キャスティングしてみるとワンピースの竿のような独特のフィーリングがあります。
 前回ご紹介したパーペキショニストも、十分軽量な竿なのですが、パーペキショニストから持ち替えると、この竿の軽さを明確に感じとることができ、とにかく1日中釣りを続けても本当に楽ちんです。


 この竿はパラボリックアクションとなっていますが、いきなりバットから深く曲がるわけではなく、ティップは繊細でラインの負荷に応じて曲がりの起点が変化するプログレッシブアクションですので、近距離から遠距離まで少ない力できれいなループを作ることができます。
 私は、近距離でも少ない力で竿が曲がってくれた方が良いので、この竿をWFの4番で使用していますが、おそらくDT3番でも全く問題なく使用できると思います。
 この竿の唯一不満な点としては、グリップが細すぎることくらいでしょうか。


 7フィート3インチという長さは、以前フリースのKatana 735のところでも書きましたが、バンブーロッドでは非常に使いやすい絶妙な長さで、しかも私が最も多用する4番ラインですので、どんな渓でも1本の竿で通そうと思うと、この竿は今の私にとっては、極めて理想に近い竿と言えます。

2018年6月10日日曜日

朝間ロッド(その2)7 1/2' #4


 前回ご紹介したT694には、同時期に作製された兄弟竿とも言える竿があり、それはAlckemy Tackleの川嵜さんがオーダーしたものでした。その竿はポール・ヤングの名竿、パーフェクショニスト、7フィート6インチ、5番を、日本の渓流に合わせて4番ライン用にパワーダウンしたもので、あまりの出来の良さにオリジナルの名前をもじって、「パーペキショニスト」と名付けられていました。
 ある日、川嵜さんと一緒に釣りをした際、パーペキショニストを短時間使わせていただき、すっかり気に入って同じものをオーダーして出来上がったのが、今回ご紹介する竿です。

 オリジナルのパーペキショニストには、何年間も寝かせた良質なトンキンケーンが使用されていましたが、この竿をオーダーした時、朝間さんは良質なトンキンの入手に苦労されており、同じテーパーでは同じアクションが再現できず、かなり試行錯誤されたようです。


 私はヤングのパーフェクショニストを振ったことがないのですが、この竿を使ってみると、パーフェクショニストが名竿と呼ばれる理由が理解できます。
 極限まで贅肉がそぎ落とされたテーパーにより、7フィート6インチという長さにも関わらず、持ち重りはなく非常に軽量で、シャープなアクションです。繊細なティップと太目のミドルは、近距離でティップだけを使った正確なキャストを可能にしており、細身のバットは見た目からは想像できないパワーを持ち、楽々と遠投が可能です。

 私が良く通う中国山地の渓流は、両岸から張り出した木々が上空を覆っている小規模な川が多く、7フィート以下の竿が使いやすいのですが、開けた渓流で釣りをするのであれば、この竿は正にパーフェクトで、至近距離から遠距離まで自由にラインをコントロールすることが可能です。


 朝間さんは様々なタイプの竹フェルールを作製されていますが、この竿にはフリースのFIBHと同じ構造のフェルールが用いられています。朝間さんのFIBHタイプのフェルールは、フリースのものと比べ雌フェルールが肉薄ですっきりとした仕上がりになっています。


 7フィート6インチ、4番のこの竿と、前回ご紹介した6フィート9インチ、4番の2本あれば、私が釣りに行く渓流のほとんどがカバーできてしまうのですが、この竿を入手後も、理想の竿を追い求める果てしなき旅は、まだ続くことになります。



2018年6月2日土曜日

朝間ロッド(その1)T694


 ボブ・サマーズからの流れで、北海道のビルダー朝間さんの竿を今回から数回に渡り紹介したいと思います。

 朝間ロッドの存在を知ったのは、2007年に渡渉舎から出版された「バンブーロッドのいま」でした。ヤングの竿に影響を受けたとの記述を読んで興味を持ち、朝間さんのブログを探し当て、すべての投稿を遡って読んだ結果、朝間さんが私が釣りに行くのと同じような渓で同じような釣り方をされていること、理想とする竿が私の好みに近いことを知りました。
 そして、私がどんな釣り場でどんな釣りをするのか、竿に求める性能、好みのアクション、作ってほしい竿のスペックを詳細に記述したメールを送り、完成したのが6フィート9インチ、4番のこの竿です。


 朝間さんは、トンキン以外にも真竹の竿も作られており、中空ロッドや、竹フェルールを始めとするさまざまなフェルールも作製されていますが、この竿は一番オーソドックスな、トンキン素材、メタルフェルールのソリッドロッドです。
 朝間さんはこの竿を「イワナ用のセミ・パラボリックアクション」と称されていましたが、サマーズ、ヤング同様の「Modified parabolic action」と呼んで差し支えないと思います。この竿は、朝間さんが函館近郊の渓流でイワナを釣るために設計された竿なので、サマーズのミッジ以上に日本の渓流で日本の鱒を釣るのに最適な竿になっています。
 ティップはサマーズのミッジよりも繊細で、至近距離で正確なキャスティングが可能です。6フィート9インチという長さは、頭上が開けていない狭い渓流で扱いやすく、かつ短すぎない絶妙な長さだと思います。


 朝間さんは、いろいろなコスメの竿を作っていますが、この竿は朝間さん自身が一番好きな、ヤングを意識したシンプルなタイプのもので、私の好みのコスメでもあります。ブランクは拭き塗りで、ガイドラッピングは初代ヤングの竿のように非常に狭い幅で巻かれています。サマーズの竿と違って、ブランクは真っすぐで、削りの精度も高いと思います。

 日本のビルダーの竿の中には、火入れが弱く曲がりが出やすいものがしばしば見られますが、私が所有している朝間さんの竿は、どの竿も適切に火入れされており、長く使っても全く曲がりが出ていません。ちなみに、フレームフィニッシュの竿は曲がりが出にくいように思われますが、どうもそうではないようで、火入れの温度や時間も影響しているようです。

 朝間さんの竿は大きく分けると、トンキンを使ったヤングの影響を強く受けたオーソドックスな竿と、真竹を使った中空ロッドに代表される斬新なアクションの竿の2つに分類されると思います。真竹の中空ロッドは、非常に軽くて、真竹のしなやかさはそのままに、まるでグラファイトのようなロッドスピードの速い竿です。

 朝間ロッドの最大の特徴は、朝間さんの長年の釣りの経験に基づいた優れた実用性だと思います。また、朝間さん自身、非常に研究熱心であるとともに、自分が納得のいかない竿は決して販売しない方なので、非常に良心的で信頼できるビルダーだと思います。