2018年6月2日土曜日

朝間ロッド(その1)T694


 ボブ・サマーズからの流れで、北海道のビルダー朝間さんの竿を今回から数回に渡り紹介したいと思います。

 朝間ロッドの存在を知ったのは、2007年に渡渉舎から出版された「バンブーロッドのいま」でした。ヤングの竿に影響を受けたとの記述を読んで興味を持ち、朝間さんのブログを探し当て、すべての投稿を遡って読んだ結果、朝間さんが私が釣りに行くのと同じような渓で同じような釣り方をされていること、理想とする竿が私の好みに近いことを知りました。
 そして、私がどんな釣り場でどんな釣りをするのか、竿に求める性能、好みのアクション、作ってほしい竿のスペックを詳細に記述したメールを送り、完成したのが6フィート9インチ、4番のこの竿です。


 朝間さんは、トンキン以外にも真竹の竿も作られており、中空ロッドや、竹フェルールを始めとするさまざまなフェルールも作製されていますが、この竿は一番オーソドックスな、トンキン素材、メタルフェルールのソリッドロッドです。
 朝間さんはこの竿を「イワナ用のセミ・パラボリックアクション」と称されていましたが、サマーズ、ヤング同様の「Modified parabolic action」と呼んで差し支えないと思います。この竿は、朝間さんが函館近郊の渓流でイワナを釣るために設計された竿なので、サマーズのミッジ以上に日本の渓流で日本の鱒を釣るのに最適な竿になっています。
 ティップはサマーズのミッジよりも繊細で、至近距離で正確なキャスティングが可能です。6フィート9インチという長さは、頭上が開けていない狭い渓流で扱いやすく、かつ短すぎない絶妙な長さだと思います。


 朝間さんは、いろいろなコスメの竿を作っていますが、この竿は朝間さん自身が一番好きな、ヤングを意識したシンプルなタイプのもので、私の好みのコスメでもあります。ブランクは拭き塗りで、ガイドラッピングは初代ヤングの竿のように非常に狭い幅で巻かれています。サマーズの竿と違って、ブランクは真っすぐで、削りの精度も高いと思います。

 日本のビルダーの竿の中には、火入れが弱く曲がりが出やすいものがしばしば見られますが、私が所有している朝間さんの竿は、どの竿も適切に火入れされており、長く使っても全く曲がりが出ていません。ちなみに、フレームフィニッシュの竿は曲がりが出にくいように思われますが、どうもそうではないようで、火入れの温度や時間も影響しているようです。

 朝間さんの竿は大きく分けると、トンキンを使ったヤングの影響を強く受けたオーソドックスな竿と、真竹を使った中空ロッドに代表される斬新なアクションの竿の2つに分類されると思います。真竹の中空ロッドは、非常に軽くて、真竹のしなやかさはそのままに、まるでグラファイトのようなロッドスピードの速い竿です。

 朝間ロッドの最大の特徴は、朝間さんの長年の釣りの経験に基づいた優れた実用性だと思います。また、朝間さん自身、非常に研究熱心であるとともに、自分が納得のいかない竿は決して販売しない方なので、非常に良心的で信頼できるビルダーだと思います。

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