2018年6月24日日曜日

高太郎ロッド(その1)7'0" #4H


 今回は、九州久留米のビルダー井手高太郎さんの7フィート、4番、ホロービルドの竿をご紹介します。

 井手さんには、この竿をオーダーする前にもイベントでお会いする機会が2回ほどあり、また当時毎日のように更新されていたブログを読んで、竿作りの姿勢に共感するものがありましたので、いつかは竿を作って欲しいと思っていました。
 この竿を作ってもらうにあたっては、大雪の湯原温泉虹鱒釣り場で私のキャスティングを見ていただき、私が好きなサマーズの735を振っていただいたり、どんな釣りをするかを説明しました。そのため、この竿は、短いリーダーで抵抗の大きいドライフライを多用する私の釣りに合わせて、標準のテーパーよりもティップがわずかに太い特別仕様になっています。


 高太郎さんは、とにかくキャスティング性能(単に遠投という意味ではありません)に拘って竿をデザインしておられたので、この竿も極めて優れたキャスタビリティを有しています。
 この竿はトンキンのホロービルドなのですが、一般にホロービルドの竿の弱点として、反発力が上がってラインスピードは上がりますが、ラインのトルクが落ちる、大きな魚を掛けた時に粘りがないということが良く言われます。この竿では、この弱点を克服するために、ブランクの断面において、くり抜いた分の面積を外側にプラスする方法でテーパーがデザインされています。そのため、この竿を振ってもあまりホローの竿という感覚がなく、スローラインでもトルクのあるラインが出ます。

 話は少し脱線しますが、フライロッドやキャストされたラインに対し、トルクという表現がしばしば使われます。ソリッドのバンブーロッドはトルクがある、トルクのあるラインが飛ばせるが、ハイモデュラスのグラファイトロッドはトルクがない、トルクのあるラインが飛ばせないといった表現が用いられます。
 自動車のエンジンに例えると、バンブーロッドは低速トルクの太い大排気量の低回転型のエンジン、ハイモデュラスのグラファイトロッドは回転数でパワーを稼ぐ高回転型のマルチシリンダーエンジンと考えるとイメージしやすいと思います。
 私は工学系の技術者の端くれとして、フライロッド、フライキャスティングにおけるトルクという表現を、物理学の原理原則に基づいて、物理定数を用いて説明したいといつも思うのですが、いまだ上手く説明できずにいます。


 話を高太郎ロッドに戻します。この竿はホロー構造の独自の工夫とテーパーデザインにより、本当に力強いラインをキャスティングすることができ、リーダー、ティペットの先のフライまで完全に力を伝えることが可能です。そのためサマーズの735と同様に、キャスティングしていて、本当に気持ちの良い竿です。
 高太郎さんは、バットを上手く使えるように竿をデザインしているので、このことも少ない力で力強いラインが投げられる要因の1つになっていると思います。この竿を振っていると、竿全体がうまく仕事をしているのを感じます。


 バットがしっかりした竿が好きな人には、不向きな竿と思いますが、私のキャスティングスタイルに合っていることもあり、近くの川から北海道まで、一時期はこの竿ばかり使って釣りをしていました。今でも、私のお気に入りの竿の中でも特に好きな竿のうちの1本です。


2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

高太郎です 良い分析と評価をありがとうございます 近いうちに再稼働したいと思っております。

Yoshiharu Utsumi さんのコメント...

高太郎さん、お久しぶりです。近々再稼働とお聞きし、大変よろこんでおります。大いに期待しております。