今回は沢田賢一郎氏の「渓流のドライ・フライ・テクニック」を紹介します。
この本は1986年に山と渓谷社から発行されたものです。沢田氏というとウェット・フライのイメージが強く、その関連の書籍を数多く執筆されていますが、この本を読むと氏がドライ・フライの釣りにおいても卓越した技術と経験をお持ちであることが良く分かります。
本の内容は、タックルからキャスティング、季節や釣り場に応じた釣り方、釣行記と、渓流のドライ・フライの釣りに関し一通り網羅されたものになっています。この本の中で沢田氏はナチュラル・ドリフトとプレゼンテーションの重要性、それを実現するためのキャスティングの重要性を強調しています。
この本が発行された後、80年代の終わり頃から、ロングリーダー・ティペットの釣りが流行り始め、雑誌も書籍もビデオも渓流のドライ・フライの釣りというと、ライトラインのロングリーダー・ティペット一辺倒になってゆきました。しかし、この本ではナチュラル・ドリフトをロングリーダー・ティペットではなく、プレゼンテーション技術、キャスティング技術で実現することを説いています。
そのため、ティペットはフライのサイズに応じて十分コントロール可能な太さと長さのものを使用する必要があるとしています。また、フライロッドについても、日本の渓流のドライ・フライの釣りでは、7フィート6インチ、5番の竿が最も汎用的であり、5番、6番ラインでソフトなプレゼンテーションが出来ないという釣り人は、キャスティング自体に問題があると書いています。
それ以外にも、フライの選び方や1投目の重要性、合わせなど、あまり雑誌や他の書籍で書かれていない非常に基本的なことが沢田氏独特の語り口で書かれており、非常に参考になります。
紹介されているフライ・パターンに関しては、ほとんどがイギリスのものやそれを基にした沢田氏のオリジナルです。氏の巻くドライ・フライはウェット・フライやサーモン・フライ同様、大変美しいのですが、スペントウィングのものが多いのでフライ・パターンに関しては、私はあまり参考にしませんでした。
沢田氏はプロショップサワダのオーナーであり、自社ブランドのタックルを販売されていたので、この本で紹介されているタックルも自社ブランドやサワダが代理店を務めていたペゾン・エ・ミッシェルだったりします。そこがアンチ沢田派の方が沢田氏を嫌う理由の1つかもしれませんが、この本には、沢田氏が多くの経験を積み重ねて辿り着いたと推測される、目から鱗が落ちる内容が数多く散りばめられており、渓流のドライ・フィッシングの教科書として、極めて優れた本だと思います。
この本も残念ながら既に廃刊となっており、新品で入手することはできませんが、自分の渓流のドライ・フライの釣りを基本に戻って見直してみたいとお考えの方に是非お勧めしたい本です。














