2021年1月3日日曜日

Mel Krieger ’The Essence of Flycasting’

 


 前回はジム・グリーンのキャスティング教書を紹介しましたので、今回はアメリカ西海岸繋がりということで、メル・クリーガーの「エッセンス オブ フライキャスティング」を紹介します。

 ジム・グリーン「フライ・キャスティング」が、初めてフライロッドを手にする全くの初心者を対象として書かれているのに対し、メル・クリーガーのこの本は初心者だけでなく、上級者が読んでも十分役に立つように意識して書かれています。
 それは、まず第1章が「The Mechanics of Flycasting(フライキャスティングの力学)」から始まっていることからも伺えます。また、第6章の「The Application of Power(力の入れ方)」ではテーリング・ループのできるメカニズムやロッドの曲げる位置を変えるにはどうすればよいのか、第7章の「The Fly Rod」ではロッドアクションの違いにより、キャスティングストロークをどのように変えれば良いのかといった、ある程度キャスティングができるようになった中級者が直面する課題、あるいは上級者であれば経験的に習得している技術を理論的に解説しています。

 フライキャスティングを文章と写真でレクチャーするのは非常に難しいので、メル・クリーガーはフライキャスティングの力学、メカニズムを最初に解説することにより、読者にフライキャスティングの原理原則を理解してもらおうとしたのではないかと推測します。

 それ以外の内容としては、グリップの握り方から始まり、ピックアップ・アンド・レイダウンキャスト、フォルスキャスト、シューティングという基本的なキャスティングから、ダブル・ホール、各種のトリックキャストまで網羅されているので、まさに本のタイトル通り、フライキャスティングのエッセンスが1冊に凝縮された本と言えます。

 この本の英語版のオリジナルは1987年に出版され、日本版は東知憲氏の翻訳で1995年につり人社から出版されています。

 実は日本ではこの本が出版される前に、この本のビデオ版が同じくつり人社から発売されていました。ビデオ版はⅠの基礎編とⅡの応用編の2本に分かれており、概ね本の内容に沿ったものでしたが、基礎編では得に初心者を飽きさせないように、実際の釣りの場面が挿入されていたり、応用編ではジム・グリーン、スティーブ・レイジェフといったゲストが登場していました。基礎編は特に秀逸で、美しい景色の中での釣りとキャスティングのシーンとBGMの調和が非常に印象的で、単なるキャスティングの教則ビデオを素晴らしい越えた作品でした。私も日本での発売順に、まずビデオを購入しましたが、このビデオは本当に何度も何度も繰り返し視聴しました。是非つり人社にはDVD版を再販して欲しいと思います。

 この本は残念ながら絶版となっているようですが、英語版の本とDVDはメル・クリーガーの奥さんのファニー・クリーガーが運営しているKriegerFlyFishing.comから購入できるようです。日本語版も同ウェブ・サイトによると、ファニー・クリーガーに問い合わせれば購入できるようです。

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