2021年1月16日土曜日

沢田賢一郎「フライキャスティングテクニック」

 


 今回もフライキャスティングの本の紹介です。沢田賢一郎氏の「フライキャスティングテクニック」です。

 古くからこの釣りをされている方には言うまでもありませんが、沢田賢一郎氏は日本のフライフィッシング界を聡明期から開拓、牽引されてきた大御所で、フライキャスティングの指導者としてだけでなく、フライタイヤ―としても世界的に著名な方です。
 2000年代くらいまでは、氏の指導を受けたフライキャスターの方(その多くはフライショップの店主)が数多く活躍されており、これらの方の指導を受けた方も多くおられると思います。

 沢田氏や氏のお弟子さんのキャスティングスタイルは、前回までに紹介したサンフランシスコ派を始めとする多くのフライフィッシャーが行っているスリークウォーター気味のそれとは異なり、ロッドを地面に対し垂直に立て、脇を閉めて振るもので、その画一的なスタイルを嫌うアンチの方もおられるようですが、オリジナルの沢田氏のそれは、お弟子さんのそれに比べ、意外にもリラックスした自然体のものです。

 この本は第1部基礎編と第2部応用編の2部構成となっており、第1部はフライキャスティングのメカニズムと本質を分かりやすく解説した第1章「フライキャスティングとは何か」に始まり、ウェットフライ・キャスティング(ピックアップ・アンド・レイダウンキャスト)、フォルスキャスト、プレゼンテーション、シングルホール、ダブルホールと順を追って、豊富なカラー写真とともに理論的な解説が非常に理解しやすい表現でなされています。
 第2部の応用編では、ロングキャストやロッドのアクションに応じたリストワーク、ループの形のコントロール、シューティングヘッドの投げ方、キャスティングのバリエーション、バンブーロッドのキャスティングまで、フライキャスティングに関する一通りの解説がなされており、初心者から上級者まで満足できる内容になっています。

 この本には同じタイトルのビデオ版もあり、内容はほぼこの本に沿ったものとなっていました。私はこの本と同じく、ビデオも何度も繰り返し視聴しました。これらは沢田氏が代表を務める株式会社サワダから発売されたものであり、残念ながら今はもうその会社自身が無くなってしまいましたので、これらを新品で入手することはできません。

 私は所謂沢田派ではないのですが、氏のキャスティングとキャスティングから生まれるループは大変美しく、この本の中には他のフライキャスティングの本には書かれていない目から鱗の内容やヒントが数多く含まれていますので、日本人が書いたキャスティングの教書としては、やはり大変優れた本だと思います。

2 件のコメント:

hide さんのコメント...

沢田さんが習ったのハーディーとリッツ。と言う事はアンドリュー・マレーの師匠トミーエドワード流とサンフランシスコ・ゴールデンゲートキャスティング派のいいとこどりだと思います。
沢田さん自体、過去にレイジェフのキャスティングを高く評価していますがレイジェフはJETの薫陶を受けてますしね。そのJETのキャスティングを見たリッツが理論建てし体系化したのがHS/HLだからある意味はサンフランシスコ派とは繋がっていると思います(沢田さん自体HS/HLはトーナメントキャスト理論だと断言してます)
ゴールデンゲートでもトーナメンターのジョン・ナポリみたいにスリークオーターではなくバーチカルに振るキャスターはいます。
ところでいまだ見られていないのですがリッツのキャスティング動画が存在します。
日本人、それも沢田派がいう所謂独り歩きしたHS/HLの其れとはまるっきり違うらしいですね。
いつか是非見てみたいと切望しています。

Yoshiharu Utsumi さんのコメント...

hideさん。コメントありがとうございます。 実は次回のブログでリッツの「A Flyfisher's Life」を紹介予定で既に書き終えているのですが、次回言いたかったことの1つについてコメントに書いていただいたので、驚いています。 リッツのキャスティングの動画が存在するとは知りませんでした。私も是非見てみたいです。