2018年12月15日土曜日

Catskill Style Dry Flies(その2)


 今回はキャッツキル・スタイル・ドライ・フライの特徴と利点について書きたいと思います。

 キャッツキル・スタイル・フライの特徴と利点をまとめると以下のようになります。

(1)水面に高く浮く
 正しいプロポーションで巻かれたキャッツキル・スタイル・フライは、ハックルの先端とフックベンド、テールの先端の3点で水面と接するので、水面上に高く浮きます。これは、このフライの最大の特徴の一つで、以下の利点を生み出します。

(2)視認性が良い
 キャッツキル・スタイル・フライは、水生昆虫に似せた地味な色ですし、パラシュートパターンのようなインジケーターとなる派手な色のポストも持たないので、視認性が悪いと思われる方が多いと思います。ところが、フライの色にもよりますが、高く浮いたキャッツキル・スタイル・フライは、実は非常に良く見えます。

(3)沈みにくく、浮力が持続する
 水面に高く浮くということは、水と接触している面積が少ないので、フライが水流に巻き込まれにくく、沈みにくいことを意味します。また、フライが水を吸収しにくいため、浮力が持続します。

(4)鱒の目をごまかしやすい
 水面に高く浮いたフライは、フライがトラウトウィンドウの外側にあっても内側にあっても、鱒の目がら見てシルエット、色、大きさが曖昧なので、鱒をだましやすいという利点があります。

(5)優れたハッチ・マッチャーになりうる
 私は、キャッツキル・ドライ・フライを(2)、(3)の利点を活かして、瀬の釣り上がりに使用することが多いのですが、これらのフライは状況によっては、(4)と合わせて、優れたハッチ・マッチャーにもなります。
 もともとキャッツキル・スタイル・フライのそれぞれのパターンは、オーサブル川などキャッツキル地方でハッチする水生昆虫も模したものがほとんどで、日本の渓流にも同じような外観の水生昆虫が生息しています。具体的な例は、個別のフライの紹介の際に、示したいと思います。

(6)狙った場所に正確に、自然にプレゼンテーションしやすい
 これはデメリットからくるメリットといいますか、逆説的な理由になりますが、キャッツキル・スタイルフライは空気抵抗が大きいので、現在日本で主流となっている細くて長いリーダー・ティペットが使えません。そこで、短くて太いリーダーティペットを使い、スローラインでキャスティングすることになるので、必然的にアキュラシーが上がります。スローラインでプレゼンテーションされた空気抵抗の大きなフライは、ターンオーバー後、まるで本物の水生昆虫のように、ふわりと水面に落下します。

(7)耐久性に優れる
 キャッツキル・スタイル・フライは、エルク・ヘア・カディスやCDCダンなどに比べ、タイイングに時間がかかるというデメリットがありますが、これらのフライはその繊細な見た目とは異なり、非常に丈夫で、鱒を何匹釣っても壊れることがありません。私は顆粒状のフロータントでゴシゴシフライを揉みますが、そのような使い方をしても、フライは壊れることはありません。フライを木に引っ掛けたり、合わせ切れをしたりして無くさない限りは、1本のフライをいつまでも使い続けることができます。
 また、1日使ってくたくたになったフライも、家に帰ってヤカンの蒸気に充ててやれば、ほぼ元の状態に復活します。

(8)ドライフライらしい繊細さと上品さを持つ
 これまで述べてきた実用的な理由以外に、私がこれらのフライを多用する理由の一つに、これらのフライが、大変美しく、伝統的でいかにもドライフライらしい繊細さと上品さを有することが挙げられます。キャッツキル・スタイル・フライが生まれて以降、世界中で沢山の優れたハッチマッチャーや機能的に優れたフライパターンが生み出されましたが、伝統的なキャッツキル・スタイルのフライは、機能一辺倒でないエレガンスを有していると思います。
 これは、私がフライロッドの中でも特にバンブーロッドを好むのと共通するところがあると思います。優れたバンブーロッドは、決して過去の遺物やノスタルジーではなく、機能的に優れるとともに、釣りをより充実したものにしてくれる存在です。

 上記したような利点を生み出すためには、バランスのとれたプロポーションにタイイングする必要があります。次回は、キャッツキル・スタイル・ドライ・フライのタイイングコツについて書きたいと思います。

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