2022年7月2日土曜日

谷田一三、野崎隆夫、田代忠之、田代法之「CADDIS トビケラとフライフィッシング」

 

 今回のお気に入りの本の紹介は、田代兄弟ら共著の「CADDIS トビケラとフライフィッシング」です。

 以前のブログでアメリカで出版されたカディス(トビケラ)の本として、ゲーリー・ラフォンテーンの「Caddisflies」、カール・リチャーズらの「CADDIS SUPER HATCHES」を紹介しましたが、日本で書かれたカディス専門のフライ・フィッシングの書籍としては、今回紹介する田代兄弟らの著作が私が知る限り唯一だと思います。
 共著者の谷田一三氏、野崎孝雄氏は、共に水生昆虫の研究者として著名な方で、水生昆虫好きのフライ・フィッシャーマンには「日本産水生昆虫検索図説」等の専門書の著者としてお馴染みの方も多いと思います。

 この本では釣り場でお馴染みのカディスから、そうでない珍しいものまで、実に50種類のカディスが1種類ずつそれぞれ見開きで紹介されており、左のページにアダルト(側面と腹面)、ピューパ、ラーバのカラー写真、それぞれの特徴、生態と生息場所、分類と分布が、右側のページにアダルト、ピューパ、ラーバそれぞれを模したフライの写真とマテリアルが掲載されています。
 おそらく日本の釣り場で見かけるカディスのほぼ全てが網羅されていると思いますので、この本が1冊あれば釣り場で見かけたカディスがどんな名前でどんな生態なのか調べることができると思います。

 田代兄弟の著作としては、最初に出版された「水生昆虫とフライフィッシング」、「タシロニンフの世界」に次いで3冊目のものになります。「水生昆虫とフライフィッシング」では、カゲロウを中心に水生昆虫のカラー写真(カゲロウではニンフ、ダン、スピナー)とそれを模したフライが掲載されていますが、こちらは残念なことに写真がイマイチで実際に釣り場で目にする水生昆虫の色やイメージと違って見えます。それに対し、この本のカディスの写真は屋内の撮影ですが、比較的色調などイメージに近いものになっています。
 フライの写真は、フライロッドやフライリール、草木、石などと一緒に撮影した凝ったものになっており、この写真を鑑賞するだけでも楽しめると思います。

 フライのマテリアルには、当時この本の発売に合わせてノリエから発売されていた「タシロカディスダブ」というダビング材が使われています。「タシロカディスダブ」はなぜかすぐに発売中止になり、代わりにティムコから「TASHIRO-R.S.C.DUB」というダビング材が発売されていましたが、こちらも随分前に廃番になっています。

 この本は平成3年(1991年)に発行されたのですが、私は当時大学生だったので大学生協で予約して購入したのを覚えています。当時13,000円もしたので学生の私には大変高価な書籍でしたが、ほぼオールカラーで内容的にも十分それだけの価値はあると思います。

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