2020年3月21日土曜日

SMITH Marryat MR(その2)


 マリエットMRの2回目は、ドラグ機構について書きたいと思います。出来るだけ分かりやすく書きたいと思いますが、機械的なことに興味のない方は、流して読んでいただければと思います。

 マリエットMRの優れた点として、美しいデザイン、ディスクドラグ装備なのに非常に軽量であること、高い加工精度などが挙げられますが、私はその独自のディスクドラグ機構に魅力を感じます。

 フライリールのディスクドラグは、コルクやカーボン、樹脂などの平板ディスク(プレート)を押し付けるタイプのものと、金属のブレーキドラムをシューで挟み込むタイプの2種類が主に使われています。マリエットMRは、ボグダンのサーモン、スチールヘッドリールと同じく後者のタイプを使用しています。スミスはディスク・ブレーキと呼んでいますが、ドラム・ブレーキと言った方が正解かもしれません。


 上の写真は、マリエットMRのスプールを外すと見ることができるドラグ機構です。中央の円い部品がブレーキドラムで、その左右を挟み込んでいる白い樹脂のパーツがブレーキシューです。シューを支えているアームは、リール裏面のノブを回すとカムにより写真の上下方向に動くようになっており、ブレーキドラムへの押し付け力が変わるようになっています。このあたりのメカニズムは、ボグダンと基本的に同じです。

 ディスクドラグには、正転(巻き取り)時はスプールがドラグ機構から切り離されて自由に回転し、逆転時はスプールがドラグ機構に繋がるようにするクラッチ機構が必要です。


 マリエットMRは、ブレーキドラムの内側にクラッチ機構が内蔵されており、ブレーキドラムのカバーを外すと上の写真のクラッチ機構が現れます。ローラーと板バネを使った所謂ワン・ウェイ・クラッチになっています。

 3個のローラーが接している穴の開いた部品が、クラッチホイールという部品で、スプールに取り付けられたピンがこの穴に入ることによって、スプールがクラッチホイールに固定されます。正転時は3個のローラーが回転できるようになっており、クラッチホイールに固定されたスプールはブレーキドラムの中でローラーを介して回転しますが、逆転時はローラーが回転できないようになっており、ローラーとクラッチホイールとの間の摩擦力でクラッチホイール/スプールとブレーキドラムとが固定され、ブレーキシューとの摩擦でスプールの回転にブレーキがかかるようになっています。
 巻き手方向は、板バネとローラーの位置を左右反対にすることによって変更することができます。

 発売当時のマリエットMRは、クラッチにボグダンと同じく歯車と爪を使ったラチェットが使われていました。


 クラッチホイールの下には、クリック音を発生させるためのギアがあり、出荷時は巻き取り時は無音、逆転時にクリック音が出るようにセッティングされてますが、変更することが可能です。
 上の写真で見えているギアはクラッチプレートに固定されるようになっているギアで、このギアの下にブレーキドラムに固定されたギアが隠れています。ギアの左側に小さな爪が見えていますが、爪は段付きになっています。上の写真では爪がブレーキドラムに固定されたギアと接触するようになっているため、逆転時にクリック音が出るセッティングになっています。爪の上下をひっくり返すと、爪がクラッチプレートに固定されたギアと噛み合うので、正転時にクリック音が出ます。爪を取り外してしまえば、正転、逆転どちらも無音になります。

 私も一度正転時にクリック音が出るように変更しようとしたことがありますが、ギアの噛み合いが微妙で音が出たり出なかったりするので、出荷時の逆転時クリック音のセッティングで使っています。

 ブレーキドラムには、カバーがついていますが、完全に密閉されている訳ではないので、砂などの異物が入り込んでしまうと、トラブルの原因になります。また、ブレーキドラムはアルミ合金製なので、メンテナンス時などに傷をつけてしまうと、正常に動作しなくなる可能性があります。左右の巻き手方向を変更するには、分解する必要があるので、少し面倒です。
 後になって発売されたマリエットCMRというリールでは、これらの問題を解決するために、ローラークラッチが内蔵されたブレーキドラムが密閉式になっており、ブレーキドラムをひっくり返すだけで、巻き手方向を変更できるように改良されていました。

 マリエットMRのドラグは、リール本体裏面のノブを回すことにより、最小から最大まで半回転(180度)で無段階に調整することができます。最小はミッジフライを細いティペットで使用する際に十分使える弱さですし、最大は淡水魚を相手にするのであれば十分な強さだと思います。


2 件のコメント:

うろうろ さんのコメント...

こんにちは、突然申し訳ありません。
巻き取り方向を右から左に変えたいのですが、2枚目の写真のディスクのカバー(?)はどのように外したらよいのでしょうか。
CMRと仕組みが違っているようで、解説いただけると幸甚です。

武蔵村山市 浅沼 達也

Yoshiharu Utsumi さんのコメント...

うろうろさん
ディスクカバーは3か所、爪で固定されていますので(2枚目の写真参照)、1箇所ずつ先の細いマイナスドライバーを溝に入れて内側に押すようにして外していけば、外れますよ。