2018年9月8日土曜日

Capras ARTISTA Maxima


 前回に引き続き、キャスティング練習に使用してきた竿として、カプラスのマキシマ、9フィート8インチ、9、10番を紹介します。

 私は2000年頃から一時期、京都の老舗フライショップZeroが毎週日曜日の朝、賀茂川河川敷で開催していたキャスティング練習会に通っていた頃があり、最初は前回紹介したオービスのリバーマスターを持参していたのですが、練習会の講師が使用しており、練習用として薦められて購入したのが、この竿です。


 前回紹介したリバーマスターも、最初は硬くて重く感じていましたが、このマキシマはリバーマスターを遥かに凌ぐ剛竿です。パラボリックアクションの竿ですが、全体に強い張りがあり、10フィート近い長さと肉厚のブランクの重さが相まって、余程の筋力の持ち主でなければ、力任せに振り回すことは不可能です。力任せにキャスティングしようとすると、確実に手首を痛めます。
 この竿を上手く使うには、本当に基本に忠実に、ラインの負荷が竿に乗っているのを感じながら、ゆっくりと真っすぐ正確に竿を動かす必要があります。ゆっくりと竿を振ってやるだけで、10番のウェイトフォワードラインが軽々とフルライン、ロッドティップから出ます。
 この竿で練習した後では、リバーマスターが頼りないくらい軽くてしなやかな竿に感じますので、不思議なものです。


 このマキシマを始めとする、カプラス アルティスタシリーズは、国分寺のプロショップサワダのオリジナルモデルで、設計は日本のフライフィッシングを黎明期からけん引していた沢田賢一郎氏によるものです。その発売は1980年で、リッツタイプのコルクグリップ、総アルミのアップロックリールシート、耐摩耗性を考慮したSiCリングのトップガイドが、外観上の特徴です。
 グリップのコルクは、竿の値段の割にはあまり質の良くないものが使用されているので、良く使い込まれたカプラスロッドでは、コルクグリップが随分と傷んで欠けたり、凹んだりしたものを良く目にします。


 私は所謂沢田派ではないのですが、沢田さんのキャスティングの本やビデオはいくつか購入し、随分参考にさせてもらいました。
 沢田さんと言うと、ウェットフライや、サクラマス、ダブルハンドロッド、サーモンフライタイイングと、メディアや自身のお店を通じて日本のフライフィッシング界に数多くのブームを起こしてこられ、熱狂的なファンとともにアンチの方も多くおられたようですが、キャスティングのスタイルは、氏のお弟子さんの有名なフライキャスターの方々とは少し異なり、非常に基本に忠実なオーソドックスなものだと私は思います。

 沢田さんのプロショップサワダも、残念なことに今年の5月をもって閉店となってしまいました。フライフィッシング人口の減少とフライフィッシング業界の衰退が叫ばれて久しいですが、1980年代からフライフィッシングをやってきたものにとっては、最近になって老舗のフライショップが閉店したり、著名な釣り人の方の訃報や、ロッドビルダーの廃業、訃報を多く耳にするのは、寂しいものです。


2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

えっ国分寺卿、廃業されたのですか....知らなかった。竹ざおしか使わないと決めてから世間様に対しては完全に浦島太郎ですね。私も盲目的に卿に追従するものではありませんが年季を経てくると卿の仰っていた事はほぼ正しいと認識する。
特にキャスティングにおけるリストダウンが如何に大事かという事とか....。卿にしろ故芦沢先生にしろ黎明期のオピニオンリーダー達の釣りには「美学」があったが現在は....?としか言えません。卿が教条的と揶揄されたのはそれだけ当時のFFのレベルが如何に低く又情報も乏しかったか?と言う事ですね。
「エレガンス」....訳するのなら「優美」とでもなろうが釣りにも「矜持」みたいなものが無ければどこまでも「曲がって」しまうかな?と思っております。

Yoshiharu Utsumi さんのコメント...

コメントありがとうございます。
プロショップサワダは、まず数年前に国内のブランク製造メーカーが廃業でカプラスが生産中止、そして今年、残念なことにお店自体が廃業となりました。お店のウェブサイトは未だ閲覧できるようです。
沢田さんというとウェットフライのイメージが強いですが、山と渓谷社から出版されたドライフライフィッシングの本など、今読んでも非常に参考になります。