2022年5月7日土曜日

DOUG SWISHER and CARL RICHARDS 'SELECTIVE TROUT'

 

 今回のお気に入りの本の紹介は、ダグ・スウィッシャーとカール・リチャーズの共著、「セレクティブ・トラウト」です。前回はジャック・デニスの「ウェスタン・トラウト・フライ・タイイング・マニュアル」を紹介しましたが、この本も1970年代、1980年代からフライ・フィッシングをされている方には懐かしい本だと思います。

 この本は1971年に発行された書籍ですが、アメリカのメイフライを中心とする水生昆虫とそれを模したフライについて書かれた本としては最も有名な本だと思います。私が所蔵しているものはペーパーバック版ですが、ハードカバー版は5万人のトラウトフィッシャーマンが購入したと裏表紙に記述があります。
 日本でもこの書籍が与えた影響は大きく、田代兄弟の一連の水生昆虫の書籍も島崎憲司郎の「水生昆虫アルバム」もこの書籍がなければひょっとしたら生まれて無かったのではないかと推測します。

 この本で有名になった、あるいはこの本を有名にしたのが、一連のノーハックル・ドライフライです。鱒が水中から水面のカゲロウを見た時、トラウト・ウィンドウの内側と外側でどのように見えるかに焦点を当てて考案されたのが、ノーハックルのダンとスピナーのパターンです。

 また、アメリカでポピュラーなカゲロウについて、学術的な分類、例えばブルーウィング・オリーブやクイル・ゴードンといったフライ・フィッシャーマンが呼んでいる俗称が学術的にどの分類に相当し、いつどのようにハッチするか、ニンフ、ダン、スピナーの各部位がどんな色をしているかといったことが細かく記述されています。
 付録にはダンやスピナーの特徴からカゲロウを同定するための表も掲載されています。

 一方、カゲロウ以外のトビケラ、カワゲラ、ミッジ、陸生昆虫については、少しのページしか割かれていません。
 カラー写真が8ページしかないのも、少し残念なところです。

 この書籍の発行以降、アメリカでは沢山の水生昆虫とフライ・パターンに関する本が発行され、中にはフルカラーの写真付きの非常に分かりやすいものもありますし、今ならインターネットでもっと簡単に情報が入手できますので、アメリカのフライ・フィッシャーマンにとっても、この本に書かれているような専門的な知識は全く必要ないと思いますが、日本のフライ・フィシャーマンの方でも水生昆虫、特にカゲロウ好きの方や、マッチ・ザ・ハッチの釣りがお好きな方は、マッチ・ザ・ハッチのフライの書籍の古典として、一読されることをお勧めします。

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