2021年3月13日土曜日

阪東幸成「MOSTLY BAMBOO」

 


 今回は前々回紹介した「アメリカの竹竿職人たち」の著者である阪東幸成さんの最新作、昨年12月に発売されたばかりの「MOSTLY BAMBOO」を紹介します。

 この本は「アメリカの竹竿職人たち」の続編といっても良い内容で、「アメリカの竹竿職人たち」がタイトルの通りアメリカの竹竿職人の工房訪問記であるのに対し、日本のフライロッド・メーカーの工房訪問記となっています。あとがきにも書かれているように、この本の目的は、海外のフライ・フィッシャーマンに日本のロッド・メーカーを紹介することであり、そのため全編英語で書かれていますが、日本の読者のために、日本語訳版もしっかり付録としてついています。

 タイトルの「MOSTLY BAMBOO」が示すように、紹介しているロッド・メーカーのほとんどは、個人のバンブーロッド・ビルダーですが、ファーガス、カムパネラ、ソリッド・オクタゴンといったグラファイト、グラスロッドメーカーも含まれています。

 章毎にテーマを決めてメーカーを紹介していく構成や、巻末にメーカーの作例がカラー写真で紹介されているところ、実際にメーカーの工房を訪問し取材した情報を元にまとめているところなど、「アメリカの竹竿職人たち」と同じ手法がとられています。
 阪東さん自身が撮影した本編中のモノクロ写真は、相変わらず素晴らしいです。巻末の
作例の構図は「アメリカの竹竿職人たち」とほぼ同じで、その竿の外観上の魅力が良く伝わってきます。

 他の阪東さんの著作と同様に、その文章は大変面白く、この本もあっという間に読み終えてしまいます。ただ、1つのメーカーあたりのページ数が「アメリカの竹竿職人たち」に比べると少なく、メーカーごとにテーマを絞って書かれているので、そのビルダーや竿の特徴が分かりにくくなっているように思います。
 また「アメリカの竹竿職人たち」では、各ビルダーの個性、人となりが、多少の脚色も含めてあからさまに描かれており、そこが一番の醍醐味となっていましたが、この本では同じ日本人という遠慮もあってか、そのあたりが少しあっさりしているように感じます。

 「アメリカの竹竿職人たち」と同じく、この本でも阪東さん自身がそのメーカーの竿を振ったり使ったりしたインプレッションがほとんど書かれていないので、その竿のアクションや性能的な特徴は、あまりよく分かりません。もっともこれは阪東さんが意識的にそうしているのかもしれません。

 前回紹介した「バンブーロッドのいま」では、ビルダー自身が何を意識して竿を作っているのか、どんな竿を目指しているのか、といったことをかなりの長文で語っていますので、そのビルダーの竿がどんな竿なのかは、そちらの本の方が良く理解できると思います。

 とは言え、この本がフライロッド関連の本として世界的にみても極めて面白い本であることは間違いなく、村田ロッド、角宏ロッド、前川ロッドといった歴史のあるビルダーから、バムロッド、竹本ロッド、ソリッド・オクタゴンといった革新的な新進気鋭のビルダーまでを紹介している点で、日本のフライロッドの現在を知ることのできる、非常に価値のある本だと思います。

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