2021年5月29日土曜日

Paul H. Young co. 1956 reproduction catalog 'More Fishing Less Fussing '


 今回はポール・ヤングの1956年カタログの復刻版を紹介します。

  1956年というと、ヤングの黄金期で、パラボリック15、ミッジ、パーフェクショニストといった名竿のラインナップが既に完成しており、このカタログにもそれらのモデルが掲載されています。
 このカタログのユニークなところは、単にこれらのモデルのスペック、価格が掲載されているだけでなく、それぞれのモデルについてヤング自身による詳細な解説とユーザーの声が掲載されている点で、それぞれのモデルがどのような釣り場でどのような釣りをするために作られた竿なのか良く分かるようになっています。カタログの最初の方でヤング自身も述べていますが、それぞれのモデルが特定の用途のために作られており、そこがヤングの竿の最大の特徴の1つであり、ユニークな点だと思います。

 その他に、どのようにして優れたバンブーロッドが作られるのか製造工程の説明や、ヤング自身によるロールキャストのデモンストレーション、パラボリック・アクションの解説等も掲載されており、カタログの枠を超えた非常に読み応えのある内容になっています。

 パラボリック・アクションの解説の部分は、以前このブログで紹介した錦織則政氏の著作「ザ・ヒストリー・オブ・バンブーフライロッド」に、日本語訳が掲載されています。
 パラボリック・アクションは、現在においても人によって定義、解釈がばらばらで、多くの釣り人が混乱する状況が続いていますが、このカタログが発行された当時も似たような状況であったようで、当時は昔からあるウェット・フライ・ロッドとどう違うのかが混乱の原因となっていたようです。
 また、ヤングのパラボリック・アクションは、イギリスのウェット・フライ・アクションのようなフル・パラボリック・アクションではなく、真のパラボリック・アクション(true parabolic action)の利点はそのままに、よりパワフルで汎用的な「改良パラボリック・アクション(modified parabolic action)であると述べています。

 ヤングの会社は釣具店でもあったため(もともと釣具店)、カタログにはハーディやフルーガーのリール、フライ、リーダーなどの小物類も掲載されており、フライ・ロッド以外の当時のタックルがどのようなものであったのかも知ることができます。

 この本も絶版のため、今入手しようと思うと大変高額になっていますが、ヤングの竿やパラボリック・アクションのバンブーロッドが好きなマニアにとっては、非常に面白い貴重な資料だと思います。

2021年5月22日土曜日

Steffen Brothers(その11)

 

 非常に残念なのですが、ステファン・ブラザーズが41年の歴史に幕を下ろすことになりました。

 マーク・ステファンからは、かれこれ1年ほど前からそろそろ引退を考えていると聞いており、この半年は沢山のバックオーダーのため予約を受け付けてもらえない状況でした。そして、5月上旬に届いたメールで遂に引退する旨の連絡がありました。
 近い将来、その日が来るだろうとは覚悟はしていましたが、本当に残念です。


 ステファン・ブラザーズは、大変高品質で優れたアクションのブランクを良心的な価格で提供していました。私が最初にブランクをオーダーしたのは、2017年の10月ですので、マーク・ステファンとの付き合いはそんなに長くはないのですが、納期がかかることはあっても、いつも誠実に対応してくれました。


 ステファン・ブラザーズのグラスロッドは、これまでに何度かこのブログで紹介したように、大変素直なプログレッシブ・アクションで、非常に軽く、しなやかさとシャープさを兼ね備えており、多くの人が抱いているグラスロッドのイメージを覆すものでした。また、アメリカの竿ですが、特に2ー3番、3-4番のモデルは大変しなやかで、日本の渓流で20cm前後のヤマメやイワナでも十分楽しめる竿でした。


 ステファン・ブラザーズの竿は、今後、マーク自身の手によるプロダクション・モデルも新品で入手することはできませんし、私もブランクからカスタム・オーダーで製作することもできませんが、竿を所有されている方、また中古でこれから入手される方は、大切にしていただければと思います。
 私も、自分用に作った7'3"の3-4番モデルは一生の宝物として大切にしたいと思います。

追記:ノースカントリーアングラーの加藤さんから情報をいただきました。Graywolf Rodsがステファン・ブラザーズの事業を引き継ぐそうです。Graywolf Rodsからステファン・ブラザーズのブランクを入手できるようになれば、ブログでお知らせします。


2021年5月15日土曜日

マエカワクラフト(その2)

 

 前回のブログに引き続きマエカワクラフトのランディングネットを紹介します。今回紹介するネットは、グリップ材がカリンの内径35cmのLLサイズです。
 

 前回紹介したトチトラも綺麗な杢目ですが、カリンも負けず劣らず綺麗です。


 上の写真は前回紹介したLサイズとの比較です。一回り大きくなっています。

 このネットはサツキマス用に前川さんに直接オーダーしたもので、サツキマスを釣りあげたら写真をお送りする約束になっているのですが、残念ながらその約束は未だ果たせていません。

2021年5月8日土曜日

マエカワクラフト(その1)

 


 今回はマエカワクラフトのランディング・ネットを紹介します。グリップの材質は現在廃番になっているトチトラ、サイズは内寸30cmのLサイズです。

 このネットは2005年か2006年に購入したもので、以前紹介したシマネッツの煤竹ネットを入手するまでは、ずっとこのネットを使っていましたし、その後も北海道や本流の釣りなど、大型の鱒が釣れる可能性がある釣り場にはこのネットを必ず持参していましたので、随分沢山の鱒を掬いました。


 マエカワクラフトのネットは、フレームが薄く見た目も華奢なのですが、トンキンをフレームに使用しているためか非常に丈夫です。このネットで50cmを超えるような鱒も掬っていますが全く問題なく、余程のことがない限り通常の使い方でトラブルを起こすようなことはないと思います。
 かれこれ30年くらい前から同じデザインですが、非常に洗練された如何にも日本人らしい繊細で美しいネットだと思います。


 マエカワクラフトのランディングネットというと、竹の断面が見えるように積層したグリップが有名で、この構造をネットやリールシートに使用したのは前川さんが最初だと思いますが、私のネットはトチのトラ杢です。
 塗装も丈夫で、15年くらい酷使してきたので至るところ細かい傷だらけですが、大きなダメージはありません。

 このネットは広島の老舗のフライショップ、ささきつりぐ経由で前川さんにオーダーしたもので、無理を言って名前を入れてもらっています。ネットは藪漕ぎで引っ掛けて穴が開いたので、一度修理してもらっています。購入時鮮やかな緑色だったネットもすっかり色あせてしまっていますが、本当に沢山の思い出の詰まったネットです。




2021年5月1日土曜日

Shima Nets(その3)

 

 修理に出していたシマ・ネッツの煤竹+黒柿のネットがお化粧直しされて帰ってきました。


 再塗装くらいかなと想像していたのですが、グリップにあった素材が凹むくらいの大きな打痕も消えて、まるで新品のようになりました。


 それだけではなく、フレームに籐の飾り巻きが施され、全面光沢塗装だったものがフレームの内側がつや消し塗装と、新たな意匠まで加わり、バージョンアップされていました。
 嶌さんからは「新たな出会いに期待してください」とうかがっていたのですが、予想以上の新たな出会いが待っていました。うれしい驚きです。

 このネットは以前のブログで書いたとおり、長年使ってきて沢山の思い出が詰まっているのですが、今回の新たな出会いによって、より一層愛着が増しました。
 これまで以上に大切にしたいと思います。