2018年9月29日土曜日

North Country Angler Paragraph 4 7034


 今回は、日本のカスタムロッドメーカー繋がりで、ノースカントリーアングラーのグラファイトロッド、パラグラフ4、7フィート、3、4番を紹介します。

 ノースカントリーアングラーは、岩手に工房を構えるカスタムロッドメーカーで、オリジナルのグラファイト、グラス、バンブーのフライロッド、スピニングロッドを作製されています。オーナー兼ビルダーの加藤さんは、昔アーティストの宮坂さんの工房におられたようです。


 このパラグラフシリーズには、2ピースのパラグラフと4ピースのパラグラフ4の2種類があり、それぞれに長さ、番手の異なる複数のモデルがあります。
 この竿は岩手に釣行の際に、加藤さんの工房を訪問し、7フィート、3、4番の2ピースと4ピースのモデルの両方を試しぶりさせていただき、作製してもらったものです。
 2ピースのモデルが、短いストロークに向いたティップアクションの軽快なアクションであるのに対し、4ピースのモデルは、パラボリックよりのアクションで低負荷から比較的バットが曲がりやすい竿になっています。

 私は4番の竿を求めており、この竿も4番の方が好みでしたので、私のロッドのインスクリプションは7フィート、4番となっていますが、3、4番が正式なようです。より速いテンポのキャスティングを好まれる方には、3番の方が向いていると思います。

 アーティストのロングリフターに比べると、よりハイモデュラスの素材が使われているようで、ロッドの設計も、やや強めとなっていますが、日本の渓流でヤマメ(アマゴ)やイワナを釣るのにぴったりな竿です。


 この竿の外観は、私の好みでレナードデュラケーン風のパンプキングリップに、加藤さんがベリンジャーに特注したニッケルシルバーのキャップアンドリング金具、レナードゴールデンシャドーと同じ配色のカラープリザーバー処理のラッピングとなっています。
 リールシートは、私が使用するリールにピッタリ合うように太さを調整してもらっており、このあたりがカスタムメイドの利点の一つでもあります。


 加藤さんは、オリジナルの外観デザインの竿も作製されていますが、往年の欧米のフライロッドに関する豊富な知識と資料、および卓越した技術により、オリジナルに忠実に竿を修理したり、往年の名竿風の外観にカスタムメイドで竿を作製することを得意とされています。
 このパラグラフシリーズは、レナード風のグリップ、リールシートに、ペイン風のラッピングが標準仕様です。

 加藤さんの仕上げも、本当にほれぼれするほど美しく丁寧なのですが、工房での作業を拝見すると、その作業のスピードに驚かされます。ブランクの在庫があれば、注文してあっという間に竿が届きます。
 グラファイトからグラス、バンブーまで、ラインナップも豊富なので、自分になったモデルを選んで、好みの仕上げで自分だけの1本を作製してもらうのも、楽しいと思います。




2018年9月22日土曜日

Artist(その2)Long Lifter LGF7634


 アーティストの2回目は、ロングリフター、7フィート6インチ、3、4番を紹介します。

 ロングリフターシリーズは、現在のアーティストのラインナップの中で最も古くからあるモデルで、発売されたのが80年代の中頃でしたから、その歴史はかれこれ30年以上にもなります。長くフライフィッシングをされている方の中には、ロングリフターシリーズを所有されている方、以前所有されていた方も多いかと思います。
 ロングリフターシリーズの中でも、この7フィート6インチの3、4番や8フィートの3番、4番は定番中の定番かと思います。


 ロングリフターは、発売された当時はロングキャストが得意な竿との宣伝がされていましたが、当時の国産フライロッドのほとんどは、ベナベナなものか、ビンビンのもののどちらかしかなく、この竿は、現代の基準から見ると非常にしなやかで、正に日本の渓流でヤマメ(アマゴ)、イワナを釣るための竿です。

 全体に非常に細身の竿で、比較的ローモデュラスのグラファイト素材を使ったブランクは、粘りがあります。ティップは極めて柔らかく、至近距離の正確なキャストを容易にしています。早過ぎず、遅すぎない適度なロッドスピードですので、至近距離から20ヤードくらいまで、少ない力で楽にキャストでき、ロッド全体がバランスよく仕事をしてくれるため、気持ちよくラインが伸び、キャスティングしていて心地の良い竿です。
 私はウェイトフォワードの4番の方が好みですが、速いテンポのキャスティングを好まれる方には、ダブルテーパーの3番でも良いと思います。


 外観は、先端巻き上げのシガータイプのグリップに、ブラックのラッピング、ホワイトのノンカラープリザーバースレッドのティッピングと、ロングリフターの定番の仕上げになっています。ブラックアルミのキャップ&リングのリールシート金具はトーマス&トーマスのものを見本に国内で作製されたものだそうです。

 この竿は中古で入手したものですが、90年代に作製されたものと思われ、この頃の宮坂さんの竿は、ラッピングコートが非常に薄く均一に塗られており、隙間なく均一に巻かれたガイドラッピングと併せて、極めて美しく素晴らしい仕上がりです。
 私は自分でロッドビルディングを行う際は、この竿の仕上げを目標にしています。


 この竿をかつて使用されていた方の中には、今更ロングリフターと思われる方も多いと思いますが、もし今でも所有されていれば、久しぶりに釣り場に持ち出して使ってみることをお勧めします。

 この竿は、適度なしなやかさを持った、極めて癖のないバランスの良い竿なので、日本の渓流用のスタンダードロッドといっても過言ではないと思います。これからフライフィッシングを始めてみたいと思われる方や、日本の渓流用にグラファイトで適度な価格の良い竿はないかと探しておられる方に、自信をもってお勧めできる竿です。もう少し短い竿が欲しいという方には、7フィートの3、4番、もう少し長い竿が欲しいという方には8フィートの3、4番があります。

2018年9月15日土曜日

Artist(その1)NANAHAN


 今回はアーティストのグラファイトロッド、NANAHAN、7フィート6インチ、5番、3ピースを紹介します。

 アーティストは、東京のカスタムフライロッドメーカー、マッキーズクリークのオリジナルブランドです。マッキーズクリークのオーナー兼ビルダーである宮坂さんが、東京の新富町にお店をオープンしたのが1980年。お店は何度か移転しましたが、以来40年近くカスタムメイドのフライロッドを作り続けておられます。世界的にも最高齢のロッドビルダーに数えられるのではないかと思います。


 このNANAHANは、アーティストの竿の中では比較的最近のモデルで、宮坂さんによると、大川、湖、管理釣り場で短竿でロングキャストして釣るための竿です。私は北海道の渓流のオールマイティなドライフライロッドをイメージして購入しました。

 アクションは繊細なティップを持つプログレッシブアクションですが、アメリカのウィンストンやセージの竿に比べると、全体に細身でしなやかで、小さな負荷でも意外と深くまで曲がります。20cmくらいのヤマメ、イワナでも、それなりに楽しめる竿です。
 バットにラインの負荷が乗っているのを感じやすく、比較的少ない力でバットを曲げこむことが可能ですので、少ない力で遠投が可能ですが、ティップが繊細なので、至近距離でも正確なキャストが可能です。

 オービスのファー&ファインに近いアクションですが、ローモデュラス・グラファイトを使ったファー&ファインが粘りのあるアクションに対し、こちらはよりハイモデュラスの素材を使用しているため、パリッとした張りのあるアクションです。非常に軽量な竿でもあります。


 この竿は、宮坂さんのお店を訪問して、グリップの形状、リールシート、ラッピングの色などを指定して作製してもらいました。リールシートは、REC社のニッケルシルバー製ギャリソンタイプのポケット&リング、ラッピングは赤紫にゴールドのティッピングです。ティップ、グリップの前、フェルールのラッピングにのみカラープリザーバーを使用し、スレッドの色がそのまま出るようにした仕上げは、もう10年以上前から宮坂さんの定番のデザインになっています。


 宮坂さんは、元デザイナーだけあって、ラッピングの配色や全体の外観のセンスは流石に素晴らしいものがあります。私はアーティスト別の竿で、ラッピングの色をアーティストの定番色でないものを敢て指定して作ってもらい、少し残念な仕上がりになってしまった経験があります。宮坂さんにオーダーメイドで竿を作ってもらう際は、アーティストのウェブサイトやお店に置いてあるストックの中から、ラッピングの色を選ぶのが、やはり確実かと思います。

2018年9月8日土曜日

Capras ARTISTA Maxima


 前回に引き続き、キャスティング練習に使用してきた竿として、カプラスのマキシマ、9フィート8インチ、9、10番を紹介します。

 私は2000年頃から一時期、京都の老舗フライショップZeroが毎週日曜日の朝、賀茂川河川敷で開催していたキャスティング練習会に通っていた頃があり、最初は前回紹介したオービスのリバーマスターを持参していたのですが、練習会の講師が使用しており、練習用として薦められて購入したのが、この竿です。


 前回紹介したリバーマスターも、最初は硬くて重く感じていましたが、このマキシマはリバーマスターを遥かに凌ぐ剛竿です。パラボリックアクションの竿ですが、全体に強い張りがあり、10フィート近い長さと肉厚のブランクの重さが相まって、余程の筋力の持ち主でなければ、力任せに振り回すことは不可能です。力任せにキャスティングしようとすると、確実に手首を痛めます。
 この竿を上手く使うには、本当に基本に忠実に、ラインの負荷が竿に乗っているのを感じながら、ゆっくりと真っすぐ正確に竿を動かす必要があります。ゆっくりと竿を振ってやるだけで、10番のウェイトフォワードラインが軽々とフルライン、ロッドティップから出ます。
 この竿で練習した後では、リバーマスターが頼りないくらい軽くてしなやかな竿に感じますので、不思議なものです。


 このマキシマを始めとする、カプラス アルティスタシリーズは、国分寺のプロショップサワダのオリジナルモデルで、設計は日本のフライフィッシングを黎明期からけん引していた沢田賢一郎氏によるものです。その発売は1980年で、リッツタイプのコルクグリップ、総アルミのアップロックリールシート、耐摩耗性を考慮したSiCリングのトップガイドが、外観上の特徴です。
 グリップのコルクは、竿の値段の割にはあまり質の良くないものが使用されているので、良く使い込まれたカプラスロッドでは、コルクグリップが随分と傷んで欠けたり、凹んだりしたものを良く目にします。


 私は所謂沢田派ではないのですが、沢田さんのキャスティングの本やビデオはいくつか購入し、随分参考にさせてもらいました。
 沢田さんと言うと、ウェットフライや、サクラマス、ダブルハンドロッド、サーモンフライタイイングと、メディアや自身のお店を通じて日本のフライフィッシング界に数多くのブームを起こしてこられ、熱狂的なファンとともにアンチの方も多くおられたようですが、キャスティングのスタイルは、氏のお弟子さんの有名なフライキャスターの方々とは少し異なり、非常に基本に忠実なオーソドックスなものだと私は思います。

 沢田さんのプロショップサワダも、残念なことに今年の5月をもって閉店となってしまいました。フライフィッシング人口の減少とフライフィッシング業界の衰退が叫ばれて久しいですが、1980年代からフライフィッシングをやってきたものにとっては、最近になって老舗のフライショップが閉店したり、著名な釣り人の方の訃報や、ロッドビルダーの廃業、訃報を多く耳にするのは、寂しいものです。


2018年9月1日土曜日

Orvis(その2)River Master


 今回はオービスのリバーマスター、9フィート6インチ、8番を紹介します。

 この竿は、90年代中頃に名古屋のフライショップ、イナガキで購入したものです。 キャスティング練習用にダイヤモンドバックの8フィート6インチ、5,6番を購入するつもりでイナガキを訪れたところ、代表の川本さんから、そのような投げやすい竿では練習にならないですよとのことで、お勧めされたのがこのリバーマスターでした。
 川本さん曰く、9フィート6番くらいの軽い竿だと腕力で振り回すことができてしまうが、この竿は長くて重いので、腕力で振り回すことができず、また力任せに振り回そうとしても上手くラインが伸びないので、キャスティングの基礎を学ぶのに最適とのことでした。


 なるほど、実際にキャスティングしてみると、長いだけでなく、昔のオービス特有のローモデュラスグラファイトを用いたパラボリックアクションなので、力を抜いて竿を上手く曲げてやらないと、ラインがきれいに伸びません。また、竿が長ければ長いほど、ティップを真っすぐ直線的に動かすのが難しくなりますので、竿を正確に振る練習にもなります。
 川本さんは、この竿は練習すればフォルスキャストなしでフルラインをキャスト可能とおっしゃっていましたので、この竿ではフォルスキャストやフォルスキャストからのシューティングの練習に加えて、15ヤードほどのラインをフォールしながらピックアップ、バックキャストでラインを送り出し、シュートしてフルラインを投げる練習を随分行いました。


 リバーマスターは、昔のオービスグラファイトシリーズ、後のスーパーファインシリーズの中の1本ですが、この竿を購入した当時、スーパーファインシリーズは、オリジナルの仕上げのスーパーファインプレミアム、廉価版のロッキーマウンテン、初心者向けにリールとラインがセットになったグリーマウンテンの3種類があり、この竿はロッキーマウンテンシリーズになります。
 ロッキーマウンテンシリーズは、ブルーのラッピングスレッドが特徴ですが、廉価版とは言え、スーパーファインプレミアムシリーズ同様に非常に丁寧に仕上げられています。


 リバーマスターは、アトランティックサーモン用に設計されたシングルハンドロッドで、脱着可能なエクステンドバットが付属しています。8番ロッドですが、スローなパラボリックアクションの竿なので、シングルハンドスペイキャストにも向いていると思います。

 この竿は、釣りには使ったことがなく、キャスティング練習にのみ使ってきた竿ですが、フライキャスティングは決して腕力で行うものではないということを教えてくれた思い出深い竿です。