2018年11月23日金曜日

CASKET Revolution RB48MLS


 今回は、ロッドビルディングについて投稿します。
 弟からの依頼でカスケットのグラファイト渓流スピニングロッド、レボリューションRB48MLS、4フィート8インチ、2ピースを組み立てました。

 さて、いつものようにスパインを出してグリップのコルクの接着から始めようとしたのですが、いきなり問題が発生。このカスケットのブランクは、どうも塗装にラッカーを使っているみたいで、アルコールやエポキシのうすめ液で塗装が溶けることが判明しました。私はブランクの汚れを拭き取ったり、組み立て中にブランクに付着した接着剤等を拭き取るのにアルコールを使いますし、ラッピングのエポキシコートは、特に1回目のコートはうすめ液でかなり薄めたものを塗りますので、このままでは組み立てられません。
 そこで、アルコールを使ってブランクの塗装をすべて落としてから、アルコールに溶けないウレタン塗料を使って、塗装をすることになりました。
 この塗装を落とすという作業は、綺麗に仕上がっているものを取り除くという、いわば後ろ向きな作業ですので、竿を組み立てるという前向きな作業とは異なり、なんとも精神的に疲れるものです。


 リールシートは、いつも使っているAndrew's Fishingのものです。私がお店で厳選した手元にある在庫の中から、弟に現物を見て選んでもらいました。金具もシルバー、ゴールド、ガンメタルの3色の中からガンメタルを選択してもらいました。



  レボリューションシリーズは、2ピースのバットセクションよりもティップセクションが長いワン&ハーフになっています。フェルールがバットにこれだけ近いと、アクションにほとんど影響を与えないと思いますので、ワンピースに近いキャスティングフィールが得られるのではないかと想像します。


 現在のカスケットの竿は、グリップが着脱式になっています(正しくは3ピースということになるのでしょうか・・・)。カスケットの完成品の竿は、グリップにレアウッドを使用した大変高価なものとなっており、希少なウッドを使ったグリップを複数の竿で使いまわせるように配慮したもののようです。
 グリップはボロンを使ったシャフトを購入して組み立てるようになっています。ボロンシャフトは、竿の長さ別に数種類発売されており、この竿に使用したシャフトは5フィート前後の数種類のブランクに適合するようになっています。従って、各ブランクのバット側のフェルールの外径は共通になっており、この竿ではフェルールの手前でブランクがかなり急激なスウェルバットになっています。

 ティップ径はかなり細く、バットまで全体的にかなり細身の竿ですが、かなり弾性率の高い素材を使用しており、ティップから曲がり始めるかなり固めのファストアクションになっています。3.5g以上のシンキングミノーに適しているように思います。
 これだけ細身でスローテーパーでも、パワフルなファストアクションの竿が作れるのは、正に高弾性のグラファイト素材のなせる業だと思います。


2018年11月17日土曜日

原田竹竿 5’2”


 お気に入りの竿の番外編第2弾は、原田竹竿のバンブースピニングロッド、5フィート2インチ、3ピースを紹介します。

 原田竹竿の原田克己さんは、大阪在住のロッドビルダーで、現在は真竹を使ったフライロッドを中心に製作されていますが、渓流ルアー用のスピニングロッドやベイトロッドも製作されています。前回紹介したレイチューンのターゲットも原田さんの手によるものです。

 この竿を作製してもらうにあたり、レイチューンの上原さんにターゲットシリーズの中で1.5gくらいのフローティングミノーから3gくらいまでのシンキングミノーまで使用するのに最適な竿を尋ねたところ、ターゲット503、5フィート、3ピースが最も適しているという回答をいただきました。ターゲット503はトンキンケーンを素材としたメタルフェルールの竿ですが、この竿はターゲット503のテーパーをベースに、素材はトンキンケーンのまま、長さを5フィート2インチに延長し、原田さんお得意のバンブーフェルールで作製してもらいました。


 ターゲット521がティップアクション気味のプログレッシブアクションであるのに対し、この竿はティップが太目のスローテーパーにデザインされており、よりバットに近い箇所から曲がり始めるパラボリック気味のプログレッシブアクションにデザインされています。全体に曲がるアクションにより、1.5gのフローティングミノーがキャスティングでき、バットで負荷を受けるので、3gくらいのシンキングミノーでもキャスティングできるようになっています。
 1.5gのフローティングミノーをキャストする際、ターゲット521はティップが仕事をしますが、この竿は竿全体が仕事をします。全体的にターゲット521よりもパワーがあるので、軽量フローティングミノーを投げる際は、ミノーの重量だけでは竿の曲がりが足りず、キャスターがストロークで竿を曲げてやる必要がありますので、軽量ミノーを投げるにはターゲット521の方が向いていると思います。


 軽量フローティングミノーからシンキングミノーまで使用可能なオールマイティーな竿であるのに加え、3ピースで携帯で便利なため、渓流の状況が分からないような場合や遠征時に便利です。

 私は軽量フローティングミノーが使いやすいターゲット521の方が好みですが、私の友人は、この竿の方がキャスティングしやすいと言っています。このあたりは、使用するルアーと好みの問題だと思います。


2018年11月10日土曜日

Ray Tune Target 521


 これまでお気に入りのフライロッドを紹介してきましたが、今回はその番外編ということで、ルアー用のバンブースピニングロッド、レイチューンのターゲット521、5フィート2インチを紹介します。

 私は本格的にフライフィッシングを始めて以降は、基本的にフライフィッシングオンリーで釣りをしてきましたが、7年ほど前から数年間、渓流のルアーフィッシングに熱くなっていた時期がありました。フライオンリーの人間がルアーをやってみると、新しい発見があったり、フライにはない楽しさがあったりして、ルアーにはルアーの面白さがあるのですが、それはまた別の機会に紹介したいと思います。

 渓流のルアーを始めて最初の頃は、現在主流となっているシンキングミノーの釣りに適したグラファイトロッドを使っていたのですが、渓流ルアーの中でも特にフローティングミノーを使った釣りが気に入ったこともあり、フローティングミノー用の竿ということで出会ったのが、このバンブーロッド、レイチューン ターゲット521です。


 レイチューンは香川在住のハンドメイドルアービルダー、上原徹也さんのブランドで、ハンドメイドバルサミノーや最近ではインジェクションのプラスチックミノーも販売されています。フローティングミノーの釣りが好きな上原さんが、軽量なバルサ製のフローティングミノーの釣りに適した竿を求めて完成したのが、このターゲット521です。竿の共同開発者であり作製は、原田竹竿の原田克己さんです。


 ターゲットには現在4種類のモデルがあり、この521は最初に開発されたモデルですが、ターゲットのラインナップの中で最もフローティングミノーに適した竿です。フローティングミノー専用といっても良いと思います。

 バンブーロッドは、素材の自重で竿が曲がるので、自重が軽く弾性率が高いグラファイトロッドに比べ軽量なフローティングミノーが投げやすいという特性を持ちます。
 ターゲット521は、ティップから順に曲がっていくプログレッシブ・ティップアクションにデザインされており、1.5g程度のバルサフローティングミノーでもキャスティングが容易になっています。シンキングミノーももちろん使用できますが、キャスティングやアクションを加えるのが快適に行えるのは、2.5gくらいまでだと思います。


 この竿の大きな特徴は、ワンピースであることです。ワンピースは持ち運びが不便というデメリットがありますが、フェルールがないため、非常にスムースなアクションで、キャスティングしてみると竿が曲がる際、復元する際にエネルギーの伝達に継ぎ目がなく、フェルールの着いた竿にはない独特のフィーリングがあります。

 軽量なフローティングミノーのキャスティングを最も重視したしなやかな竿のため、あまり大き鱒には向いていないように思いますが、尺ヤマメ、尺イワナには充分対応できるバットパワーは有しています。

 クラシックな雰囲気を持つバンブー素材の竿ですので、カーディナル3やミッチェル308などのクラシックリールにナイロンラインの組み合わせがマッチしているように思われるかもしれませんが、私はシマノの当時最新の超軽量リールにPEラインの組み合わせで使用しています。フェルールがないこと、リールシートに軽量なアルミを使用していることから、バンブーロッドとしては非常に軽量ですし、バンブーロッドはミノーにアクションをつけたり、フッキングややり取りの際に、ティップへの入力を竿自身が吸収しますので、伸びの少ないPEラインが向いているように思います。

 持ち運びは確かに不便ですが、私の好きなフローティングミノーの釣りで非常に軽快な釣りができますので、この竿は何本か所有している渓流スピニングロッドの中でも特に気に入っている竿です。

2018年11月3日土曜日

菊地悦夫 Infinite 7'6" #4


 今回は菊地悦夫さん作のバンブーロッド、Infinite 7フィート6インチ、4番を紹介します。今回は少し長文になります。

 菊地さんは、フリースロッドの日本での販売に初期の段階で協力されていた方で、昔からこの釣りをされている方の中には、古くはアングリングや初期のフライの雑誌で、その素晴らしい記事の数々を目にされた記憶をお持ちの方も多いと思います。札幌のフライショップ、テムズを開業された方でもあります。

 菊地さんとは1997年からフリース竿がきっかけでお付き合いさせていただくようになり、それ以降亡くなられた年まで、毎年夏には御自宅にお邪魔し、一緒に釣りをさせていただきました。菊地さんには、私が人生の岐路に立たされた時にも何度か助けていただき、フライフィッシングだけでなく、人生の師匠のような存在でもありました。
 菊地さんと私はちょうど20歳年が離れていましたが、菊地さんには最初の奥様の連れ子で生き別れになった私と同じ歳の息子さんがおられたので、心のどこかで私を息子のように感じていただいていたのかもしれません。


 菊地さんはフライフィッシングを初めてから、レナードを始めとする数々のバンブーロッドを使用してこられ、その後故川野信之先生の紹介でフリース竿に巡りあり、フリースも菊地さんとの出会いを通じて、Katanaシリーズを生み出します。菊地さんは、半分自身が開発したといっても過言でない、Katana 735を数本使いつぶすほど愛用されていましたが、それでも菊地さんの理想を100%満足するものではありませんでした。

 私が菊地さんと出会って何年か経ったころ、当時私はGarrisonのストレスカーブ計算を逆算してテーパー(六角の対面幅)からストレスカーブを計算するExcelシートを作成し、所有している竿やネット上で公開されている過去の名竿のテーパーからストレスカーブを計算することに凝っており、菊地さんにもよくその話をしていました。
 菊地さんは以前から竿の断面積からテーパーを設計する独自の方法を考え出しておられ、これは前回紹介したストロング・ガスティ―の開発にも生かされているのですが、Garrisonのストレスカーブの考え方には最初疑問を持たれていました。
 何通もの手紙でのやりとりや、菊地さん宅を訪問した際の議論で、フリース竿や過去の名竿のストレスカーブを示して説明するうちに、菊地さんもストレスカーブの有用性を認識され、オリジナルテーパーを私が作成したExcelシートを使って計算されるようになりました。
 そして自身でバンブーロッドを作製されるようになり、完成した竿が今回のInfiniteです。


 この竿は菊地さんが自身の釣りで竿に要求する要素を100%具現化したもので、道南の渓流でのドライフライの釣りにおいて、20cmほどのヤマメから50cmを超えるニジマス、ブラウン、アメマスまで対応できるように設計されています。

 テーパーデザインは、至近距離から20ヤードを超えるロングキャストまで全てのレンジにおいて少ない力でスムースなキャスティングができるように、ティップからバットにかけてストレスがなめらかに低下してゆく、ファストテーパーに設計されています。菊地さんは、レギュラーグラファイト時代のウィンストンに近いとおっしゃっていましたが、ストロング・ガスティをしなやかにしたような竿とも言えます。

 菊地さんは、ドライフライの釣りは、タイトループ、スローラインのキャスティングとおっしゃっていましたが、正にそのようなキャスティングを実現するためのテーパーデザインで、最小限かつゆっくりしたストロークでスロースピードのタイトループが作れる竿になっています。

 この竿は羽舟さんや北岡さんにも見ていただいたことがありますが、やはりお二人の好みからは、竿が強すぎたようです。


 フリースが使用していたトンキンケーンは、菊地さんが中国からコンテナで大量に輸入したものですが、この竿にもその時輸入した良質のトンキンケーンが使用されています。

 鮮やかな赤のラッピングは、一人で渓流で釣りをしている時にも陰鬱な気持ちにならないように選択されたものです。

 菊地さんは、Infiniteの完成後、本格的にロッドビルダーとしてデビューすることを考えておられましたが、10ミクロンの精度でテーパー設計通りに作製することに拘るなど、作製に時間がかかりすぎることもあり、残念ながらこのInfiniteは、最初にご自身用に作製した1本と菊地さんのごく親しい友人向けに数本が製作されただけに終わりました。

 この竿は、贅肉をそぎ落とした無駄のないテーパー設計ですが、遠投性、北海道で時に対峙することになる大物への対応を考慮した4番ロッドとしては強めの設計になっているため、若干重量があるのと、私の普段の釣りでは7フィートまでの竿を使用する釣り場がほとんどであること、バットの強い竿はあまり好みでないことから、本州での釣りにはあまり使用せず、もっぱら北海道での菊地さんとの釣りに使用していました。

 特に十数年前に私が働きすぎで心身に不調をきたし、数カ月仕事から離れた際、療養のため菊地さん宅に長期間滞在し、二人でそれぞれのInfiniteを携えて何日間も連続で道南の渓流を釣り歩いたのは、私の一生の思い出です。

 この竿は、菊地さんとの大切な思い出のつまった、前回のストロング・ガスティ以上に宝物です。



2018年10月27日土曜日

Bjarne Fries(その8)The Gusty (S type)


 ビヤーネ・フリースの最終回(?)は、ガスティ、7フィート6インチ、5番を紹介します。この竿は私にとって、特別な意味を持つ竿です。

 この竿は、私の釣りの師匠であり、かつてフリース竿を日本に紹介されていた、菊地悦夫さんから生前に譲り受けたもので、ガスティの中でも特殊なモデル、ストロングタイプ(ストロング・ガスティ)になります。ストロング・ガスティは、菊地さんのオーダーでフリースが開発したモデルですが、この竿は正にその最初の竿です。
 菊地さんによると、ストロング・ガスティを4番仕様でオーダーされた方がおられたそうですが、5番仕様のストロング・ガスティは、このモデルがリリースされてからも1本もオーダーがなく、おそらくこの竿が最初で最後の1本とのことでした。


 オリジナルのガスティ(突風、風が強いの意)は、その名前の通り強い風が吹く状況でも風に負けない力強いループが投げられる、強めのセミパラボリックアクションの竿ですが、ストロング・ガスティは、菊地さんが20ヤード先の鱒をドライフライで釣るためにオーダーしたガスティの強化版です。

 ガスティとストロング・ガスティを比較すると、ティップセクションはストロング・ガスティの方が細く、逆にミドルからバットにかけては、太くなっています。その差は数値にするとほんの僅かな差なのですが、この2本の竿は全く別のアクションです。
 ガスティは強めのセミパラボリックアクションですが、ストロングガスティはセージやウィンストンのグラファイトロッドのようなよりティップアクションよりのプログレッシブアクションです。
 バンブーロッドとしてはかなり強い(硬い)竿で、試したことはありませんが、一般的には6番でも良いと思えるほどです。


 ストロング・ガスティの開発過程において、ハーモニアス(The Harmonious)というガスティと同じ7フィート6インチ、5番の竿が生まれ、これは初めて日本にCDCを紹介したことで有名なスイスの宮崎泰二郎さんが気に入られ、Katana 765と名前を変え、フリース竿のラインナップに加わりました。フリース竿に、7フィート6インチ、5番の竿が3本もラインナップされていたのは、このような経緯によるものです。ちなみにハーモニアス(Katana 765)は、Katanaシリーズに共通した繊細なティップ、強めのミドル、スローテーパーのバットを持った、フリースの7フィート6インチ、5番の3本の竿の中で、最も繊細な竿です。


 この竿が製作されたのは、1990年頃だと思いますが、この頃のフリースは本当に細部まで神経の行き届いた丁寧な仕事をしており、このストロング・ガスティも研ぎ澄まされた日本刀のように張り詰めた緊張感を感じさせる、素晴らしく、美しい仕上がりです。

 この竿は、私には強すぎて使いこなせないので、実のところ菊地さんから譲っていただいてから一度も釣りに使っていません。私はヤング系のパラボリックアクションが好きなので、この竿は好みのアクションとは言えないのですが、菊地さんがお亡くなりになった今となっては、この竿は云わば私にとって菊地さんの形見のような竿なので、一生手放すことはないと思います。
 もし私が将来ニュージーランドに行って、60cmオーバーのニジマスやブラウンを釣る機会があれば、間違いなくこの竿を選ぶでしょう。


2018年10月20日土曜日

Bjarne Fries(その7)The Antigravity #5


 今回はビヤーネ・フリースのバンブーロッド、アンチグラビティ#5、8フィート6インチを紹介します。

 アンチグラビティは、8フィート6インチの長さは共通で、2、3番から6,7番までのライン番手の異なる複数のモデルがあり、今回紹介するアンチグラビティ#5だけが、短番手指定で、他のモデルは2番手指定となっていました。


 バンブーロッドは、その素材の特性上、長くてバランスの良い竿を作製するのが極めて難しいのですが、フリースはこのアンチグラビティシリーズにおいて、テーパーデザインを工夫することにより、この問題をかなり解決しています。
 今回紹介した竿は3ピースなので、その特徴が分かりやすいのですが、アンチグラビティは、スローテーパーのティップセクション、ファストテーパーのミドル、バットセクションからなり、ミドル、バットセクションはバットに近づくほどテーパーがきつくなっています。これにより、竿の持ち重りをかなり軽減することに成功してします。


 テーパーや竿を素振りした印象では、ロッドスピードが速いように感じるのですが、実際にキャスティングしてみると、イメージよりも竿をゆっくり振った方が良いループができ、楽に遠投ができます。

 この竿は、Katana 736と同様に、全体のテーパーバランスにやや難があるようで、竿に合わせて少しキャスティングを修正してやらないと、テーリングが発生しやすく感じます。アンチグラビティの#5、6の2ピースモデルでは、意識しないでキャスティングしてもテーリングが発生しませんので、これは#5、3ピースモデル特有の問題のようです。


 この竿は、最初メタルフェルール仕様で注文したのですが、フリースの強い勧めでフリースが発明した六角バンブーフェルール(FIBHフェルール)仕様となっています。フリースのバンブーフェルールは、メスフェルールがかなり肉厚になっていますので、朝間さんの同タイプのフェルールや、北岡さんの竹フェルールに比べると、軽量化、フェルールの柔軟性というメリットは、あまりないように思います。

 この竿は、シルバークリークかヘンリーズフォークでの釣りを夢見て、16年前にオーダーしたものですが、その夢は未だ果たせず、もっぱら止水の管理釣り場のみでの使用となっています。
 私も若い頃のような海外釣行の気力がすっかり衰えてしまったので、その夢は果たせぬままになってしまいそうです。

2018年10月13日土曜日

Bjarne Fries(その6)The Noodle


 今回は皆さんお待ちかね(?)のビヤーネ・フリースのヌードル、8フィート、2、3番を紹介します。

 このヌードルは、フリースのラインナップの中でも日本では大変人気のあるモデルで、私が2012年にフリースの工房を訪れた時は、フリースが作製していた竿のうち、日本からの注文のほとんどがヌードルでした。
 ただし、この竿は前回紹介したハマゴニーと比べても遥かにマニア向けの特殊な竿です。


 フリースもこの竿をマハゴニーの2、3番と呼んでいたことがあるように、マハゴニーを2、3番用に繊細にしたようなアクションですが、これはもう素振りをすると竿が鞭のようにぐにゃぐなにしなる、これでキャスティングできるのかと思うほど、恐ろしく柔らかい竿です。
 ところが、ラインを通すと不思議にしゃきっと張りが出て、3番ラインどころか4番ラインでも投げられる不思議な竿です。

 羽舟さんや北岡さんの竿の中には、ヌードルよりもさらに極細のティップを持った竿もありますが、そのティップは極めて細く、バットまでスローテーパーな全体に細身のテーパーデザインです。スローテーパーといっても、パラボリックアクションではなく、プログレッシブに曲がりの起点がバットに移動するセミパラボリックアクションです。


 この竿で上手くキャスティングするコツは、極端に言えば竿を振らないことです。竿を振らなくても竿が勝手に曲がってくれますので、竿に合わせて最小限のストロークで竿をゆっくりと動かすことです。

 フリースはヌードルを使ってフルラインをキャストしますが、この竿で遠投するにはかなり特殊なキャスティングが必要です。私がフリースから指導してもらったヌードルの遠投方法については、以前フライの雑誌98号で紹介しましたが、簡潔に述べると以下のような方法です。

 まずバックキャスト、フォワードキャストのストロークは極めて短く、バックキャストでは竿を12時の位置、フォワードキャストでは12時か11時の位置で止めます。そして竿を止めた後に、伸びてゆくラインに合わせてゆっくりと、腕全体を使って竿がほぼ水平になるまで、大きくドリフトします。ドリフトの際、体は捩じらず、グリップが直線移動するように移動させます。
 竿を止めてからワンテンポおいてドリフトを開始すること、竿は振るのではなく、ラインの負荷を感じながら竿でラインを引っ張ることが重要です。


 ヌードルを渓流での釣り上がりに使用される達人の方もおられますが、一般的には不向きかと思います。私はもっぱら湯原温泉でのミッジの釣りに使用していました。今しずかなブームのオイカワの釣りにも良いかもしれません。

 ヌードルで大きな鱒をかけると、竿が極めて柔らかいため、ときどき不思議なことが起こります。ニンフだとフッキングしても根がかりしたかのように、しばらく鱒が動きません。かなりプレッシャーをかけて、ようやくゆっくりと動き出します。ドライフライを使っていても、まるで鱒が釣られていることに気が付いてないかのように、あまり抵抗しません。竿が柔らかいので、そもそも強引なやり取りはできないのですが、騙しだましやりとりすれば、不思議とすんなりランディングすることができます。


 私には極めて使用用途の限られる竿ですが、ヌードルにはヌードルでしか味わえない特別な個性がありますので、これからも手放さずにたまに釣り場持ち出すことになると思います。

 

2018年10月6日土曜日

Bjarne Fries(その5)The Mahagonny


 久しぶりにビヤーネ・フリースのバンブーロッドを紹介します。今回は、マハゴニー、8フィート、4、5番です。

 このマハゴニーという竿は、フリースの竿の中でも日本で人気のあるモデルで、その独特のアクションに虜になっている方も多いようです。
 マハゴニーは、フリースのラインナップの中でも比較的古くからあるモデルですが、私が2012年にフリースの工房を訪問した際、直接本人から聞いた話によると、この竿の独特のアクションは偶然の産物だそうです。この竿ができるまでのフリースのラインナップは、5番以上で7フィート台の硬い短い竿ばかりだったため、ミッジの釣り用に繊細で長めの竿が欲しいと思いデザインしたそうですが、フリース自身も最初はこの竿を良く理解できなかったそうです。


 この竿は、それ以前のフリースのモデルと同様に、ギャリソンのセミパラボリックアクションをベースにティップを繊細にしたものですが、4、5番指定の竿としては全体にかなり細めのテーパーです。そのため、ロッドアクションはスローで、ティップからミドルにかけて、かなり深く曲がります。バットはギャリソンの竿のように緩くて長いスウェルバットになっており、これは古くからあるモデルに共通の特徴です。


 スローでかなり柔らかい竿なので、この手の竿に慣れていない人がキャスティングすると、竿を振りすぎてしまい、激しくテーリングを起こしたり、ひどい場合は、思うように伸びないラインを伸ばそうと竿にさらに大きく振って、しっちゃかめっちゃかになってしまいます。
 しかし、竿の特性を理解し、竿の持つリズムに合わせて力を入れずにゆっくりと必要最小限のストロークで竿を動かすことができれば、スローで力のあるループが魔法の様に伸びてゆきます。この竿のキャスティングのリズムには独特な心地よさがあり、これがこの竿が多くの人を魅了する理由の一つだと思います。
 また、8フィート、4、5番竿の指定のバンブーロッドとしては、非常に軽量なことも魅力の一つです。

 フリースは、この竿は最初は5番、この竿を理解してきたら好みによって4番を使っても良いと言っていましたが、私は5番の方が好みです。


 この竿はミッジ用の竿として紹介されていましたが、適切なリーダー、ティペットを用いれば、空気抵抗の大きな大きめのドライフライにも充分使えます。私は#10のホワイトウルフを使ったりしていました。また、ウェットフライにも向いていると思います。
 釣り上がりのドライフライの釣りには、あまり向いていません。私は日中はKatana 704で支流を釣って、イブニングではこの竿に持ち替えて本流でライズを狙いような使い方をよくしていました。

 マハゴニーはフリースを代表する名竿として、過去に多くの方が紹介されていましたが、決して誰にでもお勧めできる竿ではないと思います。かなりバンブーロッドに慣れた人でないとこの竿を使いこなすことはできないと思いますし、スローな竿が嫌いな人には不向きです。
 もっとも、この竿に興味を抱くような方は、相当なマニアの方でしょうし、散々いろんなバンブーロッドを使ってきて、これまでにない個性的な竿が欲しいという方には、上手く好みに合えば手放せなくなる魅力的な竿です。

2018年9月29日土曜日

North Country Angler Paragraph 4 7034


 今回は、日本のカスタムロッドメーカー繋がりで、ノースカントリーアングラーのグラファイトロッド、パラグラフ4、7フィート、3、4番を紹介します。

 ノースカントリーアングラーは、岩手に工房を構えるカスタムロッドメーカーで、オリジナルのグラファイト、グラス、バンブーのフライロッド、スピニングロッドを作製されています。オーナー兼ビルダーの加藤さんは、昔アーティストの宮坂さんの工房におられたようです。


 このパラグラフシリーズには、2ピースのパラグラフと4ピースのパラグラフ4の2種類があり、それぞれに長さ、番手の異なる複数のモデルがあります。
 この竿は岩手に釣行の際に、加藤さんの工房を訪問し、7フィート、3、4番の2ピースと4ピースのモデルの両方を試しぶりさせていただき、作製してもらったものです。
 2ピースのモデルが、短いストロークに向いたティップアクションの軽快なアクションであるのに対し、4ピースのモデルは、パラボリックよりのアクションで低負荷から比較的バットが曲がりやすい竿になっています。

 私は4番の竿を求めており、この竿も4番の方が好みでしたので、私のロッドのインスクリプションは7フィート、4番となっていますが、3、4番が正式なようです。より速いテンポのキャスティングを好まれる方には、3番の方が向いていると思います。

 アーティストのロングリフターに比べると、よりハイモデュラスの素材が使われているようで、ロッドの設計も、やや強めとなっていますが、日本の渓流でヤマメ(アマゴ)やイワナを釣るのにぴったりな竿です。


 この竿の外観は、私の好みでレナードデュラケーン風のパンプキングリップに、加藤さんがベリンジャーに特注したニッケルシルバーのキャップアンドリング金具、レナードゴールデンシャドーと同じ配色のカラープリザーバー処理のラッピングとなっています。
 リールシートは、私が使用するリールにピッタリ合うように太さを調整してもらっており、このあたりがカスタムメイドの利点の一つでもあります。


 加藤さんは、オリジナルの外観デザインの竿も作製されていますが、往年の欧米のフライロッドに関する豊富な知識と資料、および卓越した技術により、オリジナルに忠実に竿を修理したり、往年の名竿風の外観にカスタムメイドで竿を作製することを得意とされています。
 このパラグラフシリーズは、レナード風のグリップ、リールシートに、ペイン風のラッピングが標準仕様です。

 加藤さんの仕上げも、本当にほれぼれするほど美しく丁寧なのですが、工房での作業を拝見すると、その作業のスピードに驚かされます。ブランクの在庫があれば、注文してあっという間に竿が届きます。
 グラファイトからグラス、バンブーまで、ラインナップも豊富なので、自分になったモデルを選んで、好みの仕上げで自分だけの1本を作製してもらうのも、楽しいと思います。




2018年9月22日土曜日

Artist(その2)Long Lifter LGF7634


 アーティストの2回目は、ロングリフター、7フィート6インチ、3、4番を紹介します。

 ロングリフターシリーズは、現在のアーティストのラインナップの中で最も古くからあるモデルで、発売されたのが80年代の中頃でしたから、その歴史はかれこれ30年以上にもなります。長くフライフィッシングをされている方の中には、ロングリフターシリーズを所有されている方、以前所有されていた方も多いかと思います。
 ロングリフターシリーズの中でも、この7フィート6インチの3、4番や8フィートの3番、4番は定番中の定番かと思います。


 ロングリフターは、発売された当時はロングキャストが得意な竿との宣伝がされていましたが、当時の国産フライロッドのほとんどは、ベナベナなものか、ビンビンのもののどちらかしかなく、この竿は、現代の基準から見ると非常にしなやかで、正に日本の渓流でヤマメ(アマゴ)、イワナを釣るための竿です。

 全体に非常に細身の竿で、比較的ローモデュラスのグラファイト素材を使ったブランクは、粘りがあります。ティップは極めて柔らかく、至近距離の正確なキャストを容易にしています。早過ぎず、遅すぎない適度なロッドスピードですので、至近距離から20ヤードくらいまで、少ない力で楽にキャストでき、ロッド全体がバランスよく仕事をしてくれるため、気持ちよくラインが伸び、キャスティングしていて心地の良い竿です。
 私はウェイトフォワードの4番の方が好みですが、速いテンポのキャスティングを好まれる方には、ダブルテーパーの3番でも良いと思います。


 外観は、先端巻き上げのシガータイプのグリップに、ブラックのラッピング、ホワイトのノンカラープリザーバースレッドのティッピングと、ロングリフターの定番の仕上げになっています。ブラックアルミのキャップ&リングのリールシート金具はトーマス&トーマスのものを見本に国内で作製されたものだそうです。

 この竿は中古で入手したものですが、90年代に作製されたものと思われ、この頃の宮坂さんの竿は、ラッピングコートが非常に薄く均一に塗られており、隙間なく均一に巻かれたガイドラッピングと併せて、極めて美しく素晴らしい仕上がりです。
 私は自分でロッドビルディングを行う際は、この竿の仕上げを目標にしています。


 この竿をかつて使用されていた方の中には、今更ロングリフターと思われる方も多いと思いますが、もし今でも所有されていれば、久しぶりに釣り場に持ち出して使ってみることをお勧めします。

 この竿は、適度なしなやかさを持った、極めて癖のないバランスの良い竿なので、日本の渓流用のスタンダードロッドといっても過言ではないと思います。これからフライフィッシングを始めてみたいと思われる方や、日本の渓流用にグラファイトで適度な価格の良い竿はないかと探しておられる方に、自信をもってお勧めできる竿です。もう少し短い竿が欲しいという方には、7フィートの3、4番、もう少し長い竿が欲しいという方には8フィートの3、4番があります。

2018年9月15日土曜日

Artist(その1)NANAHAN


 今回はアーティストのグラファイトロッド、NANAHAN、7フィート6インチ、5番、3ピースを紹介します。

 アーティストは、東京のカスタムフライロッドメーカー、マッキーズクリークのオリジナルブランドです。マッキーズクリークのオーナー兼ビルダーである宮坂さんが、東京の新富町にお店をオープンしたのが1980年。お店は何度か移転しましたが、以来40年近くカスタムメイドのフライロッドを作り続けておられます。世界的にも最高齢のロッドビルダーに数えられるのではないかと思います。


 このNANAHANは、アーティストの竿の中では比較的最近のモデルで、宮坂さんによると、大川、湖、管理釣り場で短竿でロングキャストして釣るための竿です。私は北海道の渓流のオールマイティなドライフライロッドをイメージして購入しました。

 アクションは繊細なティップを持つプログレッシブアクションですが、アメリカのウィンストンやセージの竿に比べると、全体に細身でしなやかで、小さな負荷でも意外と深くまで曲がります。20cmくらいのヤマメ、イワナでも、それなりに楽しめる竿です。
 バットにラインの負荷が乗っているのを感じやすく、比較的少ない力でバットを曲げこむことが可能ですので、少ない力で遠投が可能ですが、ティップが繊細なので、至近距離でも正確なキャストが可能です。

 オービスのファー&ファインに近いアクションですが、ローモデュラス・グラファイトを使ったファー&ファインが粘りのあるアクションに対し、こちらはよりハイモデュラスの素材を使用しているため、パリッとした張りのあるアクションです。非常に軽量な竿でもあります。


 この竿は、宮坂さんのお店を訪問して、グリップの形状、リールシート、ラッピングの色などを指定して作製してもらいました。リールシートは、REC社のニッケルシルバー製ギャリソンタイプのポケット&リング、ラッピングは赤紫にゴールドのティッピングです。ティップ、グリップの前、フェルールのラッピングにのみカラープリザーバーを使用し、スレッドの色がそのまま出るようにした仕上げは、もう10年以上前から宮坂さんの定番のデザインになっています。


 宮坂さんは、元デザイナーだけあって、ラッピングの配色や全体の外観のセンスは流石に素晴らしいものがあります。私はアーティスト別の竿で、ラッピングの色をアーティストの定番色でないものを敢て指定して作ってもらい、少し残念な仕上がりになってしまった経験があります。宮坂さんにオーダーメイドで竿を作ってもらう際は、アーティストのウェブサイトやお店に置いてあるストックの中から、ラッピングの色を選ぶのが、やはり確実かと思います。