2018年7月14日土曜日
Mario Wojnicki(その2)217P4
前回の255F4はバンブーロッドでしたが、マリオ・ウジニッキの2回目はグラスロッド、217P4です。この竿はいろんな方がいろんなメディアで紹介されているとおり、ウジニッキのグラスロッドの中でも特に有名で、私も確かに名竿だと思います。
マリオの竿のモデル名はcm表記なので、この竿の長さは217cm(換算すると7フィート3インチに少し足りない)です。ラインは4番です。217P4のPはパラボリックで、ウジニッキ氏によると、この竿は「true parabolic action」となっています。
テーパーデザインとしては、太目のティップに強いミドル、そしてこの竿の最大の特徴ですが、3ピースのバットセクションがグリップに向けて細くなっており、全体としては所謂コンベックステーパー(凸型テーパー)という特殊なテーパーになっています。
そのため、ライン負荷の軽い状態からバットが曲がりやすくなっており、キャスティングするとショートキャストでもバットの曲がりを感じ取ることができます。
このようなテーパーデザインにより、素振りすると全体に張りがあり、硬く感じるので、至近距離はキャストしにくいのではないかと思いますが、これが不思議なことに、意外と至近距離でもラインの乗りがよく、タイトループで正確なキャスティングが可能です。また、バットが曲がりやすいので、向かい風の時などバットを曲げこんでパワフルなラインを投げることも可能です。
グラスロッドというと、ベネベナ、ボテボテした竿をイメージされる方も多いと思いますが、この竿はそのようなことは全くありません。ロッドスピードがバンブーロッドに近いため、キャスティングするとバンブーロッドを振っているかのように感じます。
この竿は、前回の225F4とは違い、一時期非常に良く使っていました。7フィート3インチ弱で4番というスペックも、日本の渓流では使いやすく、ヤマメやイワナを釣っても楽しい竿です。
この竿は、225F4を待っている間に注文したのですが、当時注文してから2か月もかからないうちに手元に届きました。ウジニッキのバンブーは、確かに素晴らしいのですが、グラスロッドの出来が素晴らしいので、価格や納期を考えると、ウジニッキ氏には申し訳ないですが、個人的にはグラスでも十分ではないかと思ってしまいます。
2018年7月7日土曜日
Mario Wojnicki(その1)225F4
今回はマリオ・ウジニッキのバンブーロッド、225F4、7フィート5インチ、4番を紹介します。
ウジニッキは5角のバンブーロッドで有名ですが、この竿は6角竿です。ウジニッキ曰く、氏の竿の中でもし古典的なバンブーロッドを1本選ぶとすれば、この竿とのことで、おそらくどんな人にも扱いやすい、繊細なドライフライアクションの竿です。
テーパーを計測したわけではありませんが、キャスティングした感覚やベンディングカーブは、以前紹介した朝間ロッドのパーペキショニストに似ており、おそらくヤングのPerfectionistが元になっているのではないかと推測します。フリースのKatana704ほどではありませんが、4番ロッドとしてはティップは非常に繊細です。
ウジニッキのバンブーロッドは、日本でも非常に人気が高いですが、実際に手にするとその理由が良く理解できます。アメリカのビルダー(実際はポーランド出身ですが・・・)としては、日本人のビルダーに匹敵するほど、作りが繊細かつ丁寧で、非常に美しい竿です。私はウジニッキのバンブーはこの竿しか知らないのですが、この竿は日本のヤマメやイワナを釣っても十分楽しい繊細さを持っています。
ウジニッキの竿は、竿袋も非常によく考えられた使い勝手の良い独自の構造になっており、丁寧に作られています。私は自分で作った竿の竿袋を作るために、手元にある様々なビルダーやメーカーの竿の竿袋を片っ端から調べて、竿袋にも丁寧に作られたものから、そうでないものまで、いろいろあるのに初めて気が付きました。おそらくウジニッキ氏は自分で竿袋を縫っているのではないかと推察しているのですが、こんなところにも氏の人柄が表れているように思います。
ウジニッキのバンブーロッドは中空構造なのですが、この竿は重量に関してはソリッドに比べ劇的に軽いとは言えないと思います。それよりも中空の効果は、反発力を上げることに効いていると思います。この長さのバンブーロッドとしては、比較的速いストロークにも竿が追従しますので、バンブーロッドに慣れていない人や、バンブーロッドでも速いロッドアクションを好む人にとっても、キャスティングしやすい竿だと思います。
ウジニッキ氏は大変人気があるビルダーなので、この竿もオーダーしてから竿が届くまでに約5年かかりました。非常に使いやすい竿なので、もっと頻繁に活躍してくれるはずだったのですが、実は一度ブランクの接着が一部剥離するというトラブルを起こし、修理に出しているため、それ以来なんとなく怖くてほとんど渓流に持ち出していないのがなんとも残念です。
2018年6月30日土曜日
高太郎ロッド(その2)6'8" #4
高太郎ロッドの2回目は、6フィート8インチ、4番、トンキンソリッドの竿をご紹介します。
私は竹竿に関しては、ビルダーから直接購入することを基本としていますが、この竿は某フライショップから中古で入手したものです。
しばらくオリジナルの状態で使用していましたが、釣りを終えてフェルールを抜く際に、誤ってフェルールの下のスネークガイドを曲げてしまい、またグリップのコルクがどういう訳か質の良くないものが使用されており、ラッピングのフィニッシュも薄すぎたので、つい先日ノースカントリーアングラーの加藤さんにリビルトしていたただきました。このブログの一番最後の写真以外は、すべてリビルト後の写真になります。
加藤さんは、オリジナルを出来るだけ忠実に再現することを得意とされていますが、この竿は敢て、ラッピングの色をゴールド(黄土色?)からオリーブに、グリップの形も少し変えていただきました。
グリップの形はほんの少し変更しただけなのですが、それだけで随分印象が変わって見えるので、面白いものです。
この竿は6フィート8インチと短めの竿ですが、決して藪沢で近距離を釣るためだけの竿ではなく、高太郎さんの竿らしく、開けた渓である程度ラインを出して釣ることも想定された竿になっています。
前回ご紹介した7フィート、4番ほど力強いラインは投げられませんが、近距離から遠距離まで、少ない力できれいなループの力強いラインを投げることができます。
高太郎さんは、テーパー設計にギャリソンのストレス計算を使用されていなかったのですが、一緒に釣りをした際、私がストレス計算の話をしたところ興味を持たれ、当時新作であったこの竿のテーパーを教えてもらい、ストレスカーブを逆算させていただいたことがあります。
高太郎さんは、とにかく投げて削ってを繰り返して、ロッドテーパーを煮詰めていく方でしたので、他のビルダーの竿のテーパーを参考にしたりすることはなかったのですが、計算の結果、この竿が局所的に強い箇所や弱い箇所のない、非常にきれいなペインによく似たストレスカーブを持っていることが分かりました。
ストレス計算を使用しなくても、良くデザインされた優れた竿は、きれいなストレスカーブを描くのだと実感しました。
私は、前回ご紹介した7フィートの竿の方がより私好みのアクションであり、また優れた竿だと思いますが、6フィート8インチ、4番というスペックは、私が良く行く渓流で非常に使い勝手の良いスペックなので、これからも朝間ロッドの6フィート9インチ同様に、愛用すると思います。
2018年6月24日日曜日
高太郎ロッド(その1)7'0" #4H
今回は、九州久留米のビルダー井手高太郎さんの7フィート、4番、ホロービルドの竿をご紹介します。
井手さんには、この竿をオーダーする前にもイベントでお会いする機会が2回ほどあり、また当時毎日のように更新されていたブログを読んで、竿作りの姿勢に共感するものがありましたので、いつかは竿を作って欲しいと思っていました。
この竿を作ってもらうにあたっては、大雪の湯原温泉虹鱒釣り場で私のキャスティングを見ていただき、私が好きなサマーズの735を振っていただいたり、どんな釣りをするかを説明しました。そのため、この竿は、短いリーダーで抵抗の大きいドライフライを多用する私の釣りに合わせて、標準のテーパーよりもティップがわずかに太い特別仕様になっています。
高太郎さんは、とにかくキャスティング性能(単に遠投という意味ではありません)に拘って竿をデザインしておられたので、この竿も極めて優れたキャスタビリティを有しています。
この竿はトンキンのホロービルドなのですが、一般にホロービルドの竿の弱点として、反発力が上がってラインスピードは上がりますが、ラインのトルクが落ちる、大きな魚を掛けた時に粘りがないということが良く言われます。この竿では、この弱点を克服するために、ブランクの断面において、くり抜いた分の面積を外側にプラスする方法でテーパーがデザインされています。そのため、この竿を振ってもあまりホローの竿という感覚がなく、スローラインでもトルクのあるラインが出ます。
話は少し脱線しますが、フライロッドやキャストされたラインに対し、トルクという表現がしばしば使われます。ソリッドのバンブーロッドはトルクがある、トルクのあるラインが飛ばせるが、ハイモデュラスのグラファイトロッドはトルクがない、トルクのあるラインが飛ばせないといった表現が用いられます。
自動車のエンジンに例えると、バンブーロッドは低速トルクの太い大排気量の低回転型のエンジン、ハイモデュラスのグラファイトロッドは回転数でパワーを稼ぐ高回転型のマルチシリンダーエンジンと考えるとイメージしやすいと思います。
私は工学系の技術者の端くれとして、フライロッド、フライキャスティングにおけるトルクという表現を、物理学の原理原則に基づいて、物理定数を用いて説明したいといつも思うのですが、いまだ上手く説明できずにいます。
話を高太郎ロッドに戻します。この竿はホロー構造の独自の工夫とテーパーデザインにより、本当に力強いラインをキャスティングすることができ、リーダー、ティペットの先のフライまで完全に力を伝えることが可能です。そのためサマーズの735と同様に、キャスティングしていて、本当に気持ちの良い竿です。
高太郎さんは、バットを上手く使えるように竿をデザインしているので、このことも少ない力で力強いラインが投げられる要因の1つになっていると思います。この竿を振っていると、竿全体がうまく仕事をしているのを感じます。
バットがしっかりした竿が好きな人には、不向きな竿と思いますが、私のキャスティングスタイルに合っていることもあり、近くの川から北海道まで、一時期はこの竿ばかり使って釣りをしていました。今でも、私のお気に入りの竿の中でも特に好きな竿のうちの1本です。
2018年6月17日日曜日
朝間ロッド(その3)7'3" #3/4
今回は、朝間ロッド7フィート3インチ、3、4番をご紹介します。
この竿は、これまでご紹介した2本の竿とは異なり、オーダーメイドではありません。朝間さんは、オーダーメイドで作製するものとは別に、プロトタイプの竿などを年に数回、自身のウェブサイトで販売されているのですが、この竿はスペック、コスメが私の理想とするものにドンピシャだったので、おもわずライズしてしまったものです。
この竿はトンキンソリッドですが、当時朝間さんが新たにテストされていたカーボンフェルールが使用されており、2.5ozと非常に軽量です。また、朝間さんの説明では、パラボリックアクションとなっています。
さて、カーボンフェルールの効果ですが、実際に使用するとメタルフェルールやバンブーフェルールと比べて、これでないといけないと言えるほど明確な差があるわけではありません。しかし、軽量であることフェルール自身に柔軟性があることについては、確かにメリットがあり、キャスティングしてみるとワンピースの竿のような独特のフィーリングがあります。
前回ご紹介したパーペキショニストも、十分軽量な竿なのですが、パーペキショニストから持ち替えると、この竿の軽さを明確に感じとることができ、とにかく1日中釣りを続けても本当に楽ちんです。
この竿はパラボリックアクションとなっていますが、いきなりバットから深く曲がるわけではなく、ティップは繊細でラインの負荷に応じて曲がりの起点が変化するプログレッシブアクションですので、近距離から遠距離まで少ない力できれいなループを作ることができます。
私は、近距離でも少ない力で竿が曲がってくれた方が良いので、この竿をWFの4番で使用していますが、おそらくDT3番でも全く問題なく使用できると思います。
この竿の唯一不満な点としては、グリップが細すぎることくらいでしょうか。
7フィート3インチという長さは、以前フリースのKatana 735のところでも書きましたが、バンブーロッドでは非常に使いやすい絶妙な長さで、しかも私が最も多用する4番ラインですので、どんな渓でも1本の竿で通そうと思うと、この竿は今の私にとっては、極めて理想に近い竿と言えます。
2018年6月10日日曜日
朝間ロッド(その2)7 1/2' #4
前回ご紹介したT694には、同時期に作製された兄弟竿とも言える竿があり、それはAlckemy Tackleの川嵜さんがオーダーしたものでした。その竿はポール・ヤングの名竿、パーフェクショニスト、7フィート6インチ、5番を、日本の渓流に合わせて4番ライン用にパワーダウンしたもので、あまりの出来の良さにオリジナルの名前をもじって、「パーペキショニスト」と名付けられていました。
ある日、川嵜さんと一緒に釣りをした際、パーペキショニストを短時間使わせていただき、すっかり気に入って同じものをオーダーして出来上がったのが、今回ご紹介する竿です。
オリジナルのパーペキショニストには、何年間も寝かせた良質なトンキンケーンが使用されていましたが、この竿をオーダーした時、朝間さんは良質なトンキンの入手に苦労されており、同じテーパーでは同じアクションが再現できず、かなり試行錯誤されたようです。
私はヤングのパーフェクショニストを振ったことがないのですが、この竿を使ってみると、パーフェクショニストが名竿と呼ばれる理由が理解できます。
極限まで贅肉がそぎ落とされたテーパーにより、7フィート6インチという長さにも関わらず、持ち重りはなく非常に軽量で、シャープなアクションです。繊細なティップと太目のミドルは、近距離でティップだけを使った正確なキャストを可能にしており、細身のバットは見た目からは想像できないパワーを持ち、楽々と遠投が可能です。
私が良く通う中国山地の渓流は、両岸から張り出した木々が上空を覆っている小規模な川が多く、7フィート以下の竿が使いやすいのですが、開けた渓流で釣りをするのであれば、この竿は正にパーフェクトで、至近距離から遠距離まで自由にラインをコントロールすることが可能です。
朝間さんは様々なタイプの竹フェルールを作製されていますが、この竿にはフリースのFIBHと同じ構造のフェルールが用いられています。朝間さんのFIBHタイプのフェルールは、フリースのものと比べ雌フェルールが肉薄ですっきりとした仕上がりになっています。
7フィート6インチ、4番のこの竿と、前回ご紹介した6フィート9インチ、4番の2本あれば、私が釣りに行く渓流のほとんどがカバーできてしまうのですが、この竿を入手後も、理想の竿を追い求める果てしなき旅は、まだ続くことになります。
2018年6月2日土曜日
朝間ロッド(その1)T694
ボブ・サマーズからの流れで、北海道のビルダー朝間さんの竿を今回から数回に渡り紹介したいと思います。
朝間ロッドの存在を知ったのは、2007年に渡渉舎から出版された「バンブーロッドのいま」でした。ヤングの竿に影響を受けたとの記述を読んで興味を持ち、朝間さんのブログを探し当て、すべての投稿を遡って読んだ結果、朝間さんが私が釣りに行くのと同じような渓で同じような釣り方をされていること、理想とする竿が私の好みに近いことを知りました。
そして、私がどんな釣り場でどんな釣りをするのか、竿に求める性能、好みのアクション、作ってほしい竿のスペックを詳細に記述したメールを送り、完成したのが6フィート9インチ、4番のこの竿です。
朝間さんは、トンキン以外にも真竹の竿も作られており、中空ロッドや、竹フェルールを始めとするさまざまなフェルールも作製されていますが、この竿は一番オーソドックスな、トンキン素材、メタルフェルールのソリッドロッドです。
朝間さんはこの竿を「イワナ用のセミ・パラボリックアクション」と称されていましたが、サマーズ、ヤング同様の「Modified parabolic action」と呼んで差し支えないと思います。この竿は、朝間さんが函館近郊の渓流でイワナを釣るために設計された竿なので、サマーズのミッジ以上に日本の渓流で日本の鱒を釣るのに最適な竿になっています。
ティップはサマーズのミッジよりも繊細で、至近距離で正確なキャスティングが可能です。6フィート9インチという長さは、頭上が開けていない狭い渓流で扱いやすく、かつ短すぎない絶妙な長さだと思います。
朝間さんは、いろいろなコスメの竿を作っていますが、この竿は朝間さん自身が一番好きな、ヤングを意識したシンプルなタイプのもので、私の好みのコスメでもあります。ブランクは拭き塗りで、ガイドラッピングは初代ヤングの竿のように非常に狭い幅で巻かれています。サマーズの竿と違って、ブランクは真っすぐで、削りの精度も高いと思います。
日本のビルダーの竿の中には、火入れが弱く曲がりが出やすいものがしばしば見られますが、私が所有している朝間さんの竿は、どの竿も適切に火入れされており、長く使っても全く曲がりが出ていません。ちなみに、フレームフィニッシュの竿は曲がりが出にくいように思われますが、どうもそうではないようで、火入れの温度や時間も影響しているようです。
朝間さんの竿は大きく分けると、トンキンを使ったヤングの影響を強く受けたオーソドックスな竿と、真竹を使った中空ロッドに代表される斬新なアクションの竿の2つに分類されると思います。真竹の中空ロッドは、非常に軽くて、真竹のしなやかさはそのままに、まるでグラファイトのようなロッドスピードの速い竿です。
朝間ロッドの最大の特徴は、朝間さんの長年の釣りの経験に基づいた優れた実用性だと思います。また、朝間さん自身、非常に研究熱心であるとともに、自分が納得のいかない竿は決して販売しない方なので、非常に良心的で信頼できるビルダーだと思います。
2018年5月26日土曜日
R.W.Summers(その2)Midge 6'4" #4
ボブ・サマーズの2回目は、Midge 6'4" #4を紹介します。
この竿は、前回Model 735で書いたように、私の質問に対するサマーズの第二推奨のモデルで、Model 735が届いた後に注文しました。Model 735は最初3年待ちと言われて6年弱待ちましたが、この竿も4年待ちと言われてやはり6年ちょっと待ちました。サマーズもかなりのご高齢でしたので、正直今回のオーダーは無理かなとも思っていたのですが、届いた竿は全く衰えを感じさせないものでした。
この竿もヤングが言うところの「Modified parabolic action」で、細めのティップと強めのミドル、スローテーパーで比較的曲がりやすいバットを持っています。Model 735は、平均サイズのヤマメ(アマゴ)、イワナには、ややオーバースペックですが、この竿はヤマメやイワナを釣るのに正にぴったりな竿です。
テーパーデザインとしては、Model 735と同じModified parabolic actionですが、竿が短く強い焼き入れにより相当な張りがあるので、Model 735に比べるとキャスティング時にバットが曲がる感覚はあまり伝わってきません。ロッドスピードもかなり速いので、グラファイトロッドのように短いストロークでスパスパっとキャスティングするイメージです。バンブーロッドに慣れていない人でも、違和感なく振れる竿だと思います。
ほぼ同じスペックのフリースのKatana 633(私の竿は、3番、4番ライン指定の初期のテーパーです)は、よく似たテーパーデザインですが、もっとしなやかで、ロッドスピードもこの竿に比べるとスローです。
この竿も、やはりブランクは真っすぐではなく、良く見ると右に左にウネウネと曲がっているのですが、そんなことはお構いなしに、力強い真っすぐなラインが伸びていきます。
極端なロングリーダー・ティペットの使用には向いていないのかもしれませんが、私は太くて短いリーダー、ティペットに、#14をメインに時には#12といったハックルを縦に巻いたキャッツキルスタイルのフライや、ハックルを3枚びっしり巻いた空気抵抗の大きなウルフパターンを多用しますので、そのような釣りをするには、非常に適した竿です。
竿の長さとしては、もう少し長い方が使いやすく、魚を釣るという点では有利なので、いざ釣り場に持ち出すとなると、6フィート9インチ以上の竿に手が伸びてしまうのですが、敢てこの竿でどんな釣り場でも1シーズン通して使ってみようかと、そんな風に思わせてくれるほど魅力的な竿です。
2018年5月19日土曜日
R.W.Summers(その1)model 735
フリースからの流れで、羽舟竿、北岡ロッドを紹介してきましたが、ここで雰囲気を変えてアメリカのビルダー、ボブ・サマーズを紹介します。初回はmodel 735、7フィート3インチ、4、5番です。
サマーズに竿を注文するにあたって、私がどのような川で、どのような魚を、どのようなフライ、リーダー、ティペットで、どのくらいの距離をキャスティングして釣るのか、竿に求めている性能はどのようなものかをメールし、お勧めのモデルを質問しました。サマーズの竿を私が使うなら、735か6'4"ミッジだろうなと考えていましたが、やはりサマーズからの回答も、第一推奨が735、第二推奨が6'4"ミッジでした。
第一推奨の735を注文して、最初3年待ちだと伝えられていたのですが、待てど暮らせど音沙汰がなく、5年後に痺れを切らしてそれとなく催促のメールをし、それから更に9か月ほど待ってようやく竿が届きました。
さて、ラインを通してキャスティングしてみると、これがまた凄く、力強いループがぐグングンと真っすぐに伸びてゆき、竿が真っすぐでないことなど、全く影響ありません。
以前のブログで、ラスピークの竿を私が持っているグラファイト、グラスロッドの中で、キャスティングが最も気持ちの良い竿と書きましたが、バンブーロッドの中では、この735が最もキャスティングして気持ちの良い竿です。私は、この735を好きなアクションの基準にしており、日本のビルダーに注文する際には、実際に振ってもらったり、説明したりしてきました。
ただ、同じ735でも、やはり多少のばらつきはあるようで、同じモデルを持っている方にも振ってもらいましたが、その方の竿は私のものほどは良くないとのことでした。
サマーズは初代ポール・ヤングの時代からヤングの店で修業していたので、独立して自身の名前で竿を作るようになっても、基本的にはヤングのパラボリックアクションを踏襲した竿を作っています。
相対的にミドルが強くて、バットが曲がりやすいというのは共通ですが、リッツのパラボリックアクションは、コロラドなどが典型ですが、ティップが太くて曲がりにくいので、低負荷でもバットから曲がり始めます。リッツは自分の著書「A Fly Fishers Life」に、ファリオ・クラブの曲線図を掲載し、パラボリックアクションついて説明していますが、負荷に応じて曲がりの起点が移動するプログレッシブアクションよりも、曲がりの起点は一定のまま、負荷に応じて曲がりが大きくなるアクションを理想としたようです(私の感覚では、実際のファリオ・クラブは、ペゾンの中では比較的プログレッシブアクションだと思いますが・・・)。
一方、ヤング系のパラボリックアクションは、小さい負荷でもバットが曲がりやすいのは共通ですが、ペゾンほど極端ではなく(これもモデルによるようですが・・・)、ティップは意外と繊細で、曲がりの起点は負荷に応じて移動します。ヤングは1956年のカタログ「More Fishing Less Fussing」で、負荷の小さいときはティップが曲がるようにデザインされており、自らのパラボリックアクションは、本来のパラボリックアクション(ヤングは「full parabolic action」、「wet fly action」という表現を使っています)ではなく、「modified parabolic action」と述べています。
ちなみに、ご紹介したリッツの著書とヤングのカタログは、現代の釣り人が読んでも非常にためになる名著だと思います。ヤングのカタログは入手困難で中古市場でかなり高値で取引されているようですが、リッツの本は確か昨年、日本語の復刻版も出版されたようですので、是非ご一読されることをお勧めします。
サマーズの735は、4、5番指定で、私はWF5で使用していますが、DT4でも良いと思います。もちろんヤマメ(アマゴ)やイワナを釣るのに使っても、全く問題ないのですが、やはりオーバースペックなので、私はもっぱらニジマスやブラウンを釣ることを想定して、北海道釣行に使っていました。
フリースのKatanaシリーズは、ヤング、サマーズのパラボリックアクションのコンセプトに近いと私は考えています。Katana 735は、サマーズの735と同じスペックですが、Katana 735の方がティップが繊細で、軽量かつシャープなアクションです。バットパワーもKatana 735の方が上です。
サマーズ735は、ヤング系のパラボリックアクションが、私の好みであることを教えてくれた貴重な竿です。
2018年5月12日土曜日
北岡ロッド 7'3"、4番
今回は、中村羽舟さんつながりということで、羽舟さんのお弟子さんでもある、京都在住の北岡勝博さんの竿をご紹介します。
北岡さんとの出会いは、私がフリースの工房訪問記を投稿したフライの雑誌98号(2012年季刊冬号)に、島崎憲司郎さんが北岡さんの竿を紹介されていたのがきっかけでした。羽舟さんのお弟子さんということで興味を持ち、羽舟さんに電話して北岡さんの連絡先を教えていただき、コンタクトさせていただきました。
そして、すぐに北岡さんの工房を訪問し、工房にある様々な竿を振らせていただき、長さとライン番手を指定して注文したのが、この真竹、7フィート3インチ、4番の竿です。
北岡さんは基本的に真竹を使って竿を作られており、羽舟さんの真竹の竿と同様に、非常に軽量であるのが特徴の一つです。
アクションは、相対的に強めのミドルと低負荷から曲がりやすいバットを持つパラボリックアクションで、近距離から遠距離までテーリングが発生しにくく、きれいなループが形成できるのも北岡ロッドに共通した特徴です。
おそらく多くの方は、素振りした感覚では、指定番手が一般的な竹竿に比べて1、2番手重い(指定番手に対し、竿が柔らかい)と感じると思いますが、ラインを通してキャストしてみると、不思議と
指定番手ぴったりです。これは羽舟さんの竿にも共通の特徴ですが、北岡さんの竿はパラボリックアクションなので、特にその傾向を強く感じます。
トンキンでこのような竿を作製すると、素材の重さからボテボテの持ち重りのする竿になりがちですが、真竹はその素材の軽さから、柳のようにしなやかなのに、張りのある軽量な竿になります。北岡さんは、このような真竹の特性を活かして、トンキンでは難しい5フィート代の超ショートロッドから、8フィート以上の低番手ロッド、バス用の高番手ロッドなど、さまざまな竿を作製しています。
北岡ロッドは、羽舟竿よりも更に極細のティップを持つ、一般的な釣り人には扱いきれないような超マニアックなアクションの竿が多いのですが、私の竿は、北岡さんに私の所有する竿を何本も振ってもらったり、一緒に釣りをしたりして、私がどのような竿が好みなのか、どのような釣りをするのか、理解した上で作製していただいたので、北岡ロッドのパラボリックアクションはそのままに、北岡ロッドの中でも比較的ティップが太めで、扱いやすい竿になっています。
北岡さんは羽舟さん同様、リールシート金具以外、ガイドも含めてすべてを手作りされており、その外観は、どこか羽舟竿やフリース竿を彷彿させる雰囲気ながら、非常に繊細さを感じるものになっています。
フェルールは、オス側が六角のブランクのそのまま使ったもの、メス側がブランクと同じ真竹で作った別パーツを組付けたものとなっており、フリースのFIBHと羽舟さんの竹フェルールの両者の利点を組み合わせてものになっています。
北岡さんは、芸大出身で、文化財の修復をされていたという異色のバックグランドをお持ちのため、伝統や継承を重んじる保守的なバンブーロッドの世界にあって、既成概念に囚われない竿作りをされており、島崎憲司郎さんとタッグを組んで、フラットグリップ(フライの雑誌100号参照)、Pバラスト(フライの雑誌99号参照)、逆ワン・アンド・ハーフ等の新しい試みを次々と試されています。
先日キャスティングさせてもらった、未だ北岡さん以外誰もキャスティングしていないという7フィート9インチ、5番の最新作は、ティップ対面幅1mm未満、3番ライン相当のテーパーデザインにも関わらず、異形断面形状(詳細は秘密とさせてください)を始めとする、独自の斬新なアイデアにより、真竹とは思えないパワフルなぶっ飛び竿に仕上がっており、そのアクションは、これまでの北岡ロッドと異なるだけでなく、古今東西のどのバンブーロッドとも異なると思われる新しいものに進化を遂げていました。
北岡ロッドは、あまりにも斬新過ぎて、今のところ超マニアの方からのみ注目を浴びているようですが、今後、常識を覆すどんなとんでもない竿を生み出すのか、本当に楽しみです。
2018年5月4日金曜日
中村羽舟(その2)女竹、8尺3寸、3番、4番
羽舟竿の2回目は、女竹、8尺3寸(約8フィート3インチ)、3番、4番をご紹介します。
この竿は前回ご紹介した真竹、7尺7寸が届いてすぐに注文したものです。
羽舟さんの工房を訪問して、いろいろな竿を振らせていただいた中に、特に印象に残る竿がありました。それは、8フィート3インチ、3番、4番、2ピースの女竹の竿で、当時止水の管理釣り場で良く釣りをされていた、元フライの雑誌社の倉茂さん用に羽舟さんが作製した竿でした。
竿は3番、4番指定になっていましたが、5番ラインがぴったりとのことで、ラインを通してキャスティングすると、その長さにも関わらず非常に軽く、ゆっくりとしたストロークから、まるでロケットを発射するがごとく、勢いのあるループが遥か彼方に飛んでいく、遠投が得意な竿でした。
この竿は、倉茂さん用の竿を3ピースで作製してもらったもので、羽舟さんは2ピースを3ピースにすると、同じアクションにはならないよとおっしゃっていましたが、オリジナルの2ピースモデルとほぼ同様のアクションに仕上がっています。
女竹のパワーファイバーは、トンキンと同じくらいの太さなのですが、トンキンと違い極く表面に密集しているので、6角形のブランクに仕上げると、真竹よりもパワフルで、トンキンよりも軽量なブランクになります。繊細な真竹の竿は、ヤマメやアマゴ用の竿に向いていますが、女竹の竿は、長めのトラウトロッドに向いていると思います。
この竿は、指定番手の3番、4番ラインでも充分使用可能ですが、真価を発揮するのはWFの5番ラインを使用した場合で、竿のリズムに合わせてゆっくりと竿を振ってやると、力を加えなくても、楽々ロングキャストが可能です。
テーパーデザインは、フリースのAntigravityに似ているように思いますが、素材の違いもあり、こちらの竿の方が圧倒的に軽く仕上がっています。
3ピースで作製してもらったのは、海外での釣りを想定したものでしたが、残念ながら私はこの竿を止水の管理釣り場でしか使用したことがありません。機会があれば、いつの日か、アメリカのヘンリーズ・フォークかシルバークリークあたりで、この竿を使って釣りができれば良いなと考えています。
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